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第3話 話はちゃんと聞きましょう

挿絵(By みてみん)


 んあ、あ、今何時だ?

 あれから自宅に戻ってそのままバタンキューして、今起きたわ。

 あーーー、カーテンをズらして日の高さを確認。

 おそらくだが昼過ぎってとこかな。

 ふあああ、昨晩は疲れた。

 テーブルには自分の原稿、良し良し、昨晩のアレは夢じゃないな、しっかりと原稿は取り返している。

 あまりに現実離れした時間だったので、未だに夢なんじゃないかと思うわ。

 酒場は夕方からだから、今日は少し早めに出勤してまかないでも頂こうかな。

 寝ぼけ眼でキッチンに向かい、水の精霊を呼び、火の精霊とガッチャンこして白湯を作る。


 はあーーーー白湯うめーーーーーー


 このお湯を作るという作業も本来ならかなり面倒な作業なのだが、チート魔力のおかげで簡単に出来てしまう。

 ほんまありがたい。

 キッチンで馬毛歯ブラシを使い歯を磨き、私は職場へと向かう。


挿絵(By みてみん)


 店に入りカウンターの椅子に腰掛ける。

 カウンターには珍しく人が座っていた。

 深いフードを被っている、たまに仕入れ先の人が座っている場合があるのだが誰なんだろう?

 気にせず隣に腰掛ける。


『リィズちゃんお水貰うねーーー』


 カウンターに置いてあるポットから水をいただき、一口含んだときだった―――


『昨日はどうも』


 隣の客が話し掛けてきた。

 昨日はどうも???

 って、この声は、もしかして……

 フードの奥、鋭い眼光と整った顔はやはりカイルライン様だった。


挿絵(By みてみん)


 口に含んだ水を漏らさないようにゴッくんする。


『ど、どうもって……ええと、私、カイルライン様とは初めてお会いしますわ』

『あまり、私達を見くびらないでいただきたい』

『おほほほ、またまた、ご冗談を』

『私とサシでやり合って無事でいられる魔道士はこの国には片手で数える程しかいない、調べても背格好からして、最近噂になっているこの店の『小さな女魔道士』しか候補はいないのですよ』


 はあ、もうこれは隠しきれんかな?


『それに彼女からすでに色々お話は伺っているので、とぼけても無駄ですよ』


 店の奥からリィズちゃんが顔を出す。


『すみませんヒサメさん、指示に従わないと酒場の営業許可を取り消すぞと言われたので仕方なく』


 酒場の営業許可取消とは、やり方が公僕っぽいなあ、本当。


『昨日、私のエナジー吸いましたよね?』

『あ、はい吸いました』


 シンナー吸ったことを咎められる中学生か私は。


『あのう、やっぱり逮捕ですか?』


 恐る恐る伺う、いざとなればリィズちゃんを連れて逃げないかんなこれは。


『逮捕ですと言いたいところですが、昨日のあなたを知る身としてはあまりメリットがありませんね』

『メリット?』

『はい、貴方がその気になれば、ここら一帯を灰塵と化し他国に逃げることも可能でしょう?』


 私は黙って頷く。


『それを私が止めようとした場合、かなりの人員を動員し、さらにかなりの被害を出してなんとか貴方の身体を拘束出来るかどうか……』


 確かに、まあ、目一杯見境無く抵抗すればそうなるか。


『それで私達にもたらされるメリットは、あのあやしげな羊皮紙を数枚、世の中から消すことだけなんです、ほら割に合わないでしょ?』


 うん確かに。


『それに、そちらのリィズ殿から色々とお話を伺い、なんでもあの羊皮紙は邪教の教えなどではなく、単なるあなたの異常性癖の産物だということが分かりましたので』


 異常性癖……


『ならどうなるんでしょうか?』

『出来ればそれなりに身体で償って貰うほうが、こちらにもメリットになりますよね』


 か、身体で償う?


 キターーーーーー!!!


 あ、あ、あ、ついに来たのかこれ?

 エロゲ的なやつ。


『あ、あの、その、経験無いですが、それでもいいですか?』


挿絵(By みてみん)


『あ、勘違いしてますね? そう言うのいいんで、意味無いんで』


 意味無いってなんだよ!

 こちとらJKだぞ!

 今をトキメクJKやぞ!

 アジア太平洋地域のアダルト動画検索ワードNo.1のJK様やぞ! ごらあ!

 てか台湾とか中国でも検索ワードに入るって訳分からんよな……

 私はせっかく半分抜いだマントをいそいそとまた羽織る。


『わ、私の身体が目的じゃないならなんなんだよ! きいーーっ!』

『いや、一つ働いて欲しいなと』

『働く? Work?』

『はい、実は郊外の城を乗っ取り占拠している魔道士がいまして、それの退治をしていただきたいなと』

『そんなの、それこそ軍隊派遣すりゃいいじゃないですのん?』

『あははは、面目無い、実は既にかなりの人員を投入しているのですが、全て返り討ちにあっているのですよ』


 カイルライン様はなぜかカラカラ笑う。


『へっ? 如何程?』

『あははは、三個中隊程……』


 さ、三個中隊! 5、6百人ってとこか! すんごいなそれ、てかこの笑いは既に自棄になってるっぽいな……


『これ以上の動員はなんとしても避けたいのと、帰還者の話を聞くに、相手が魔道士なので兵力だけでは如何ともしがたい部分があるようで……』

『はあ……』

『今までの方針を転換し、少数精鋭で当たろうとの結論に至ったのです』

『ああ、それで、こんなフードを被ってここに来たんだ』

『その通りです、穏便に内々に、出来れば我が騎士団で”外れの城の魔導士”を処理したことに出来ればしたいのですよ、あははは』


 カイルライン様は溜息を吐く。


『正直、我が騎士団の腕の立つ者が何人も返り討ちに会っている状況で今更少数精鋭などと言っても、私も腕に覚えがありますが、勝てる見込みなどなく、ましてや名の通った魔道士などに騎士団の尻拭いなど頼もうものなら、噂はあっという間に他国まで広まりましょう』

『つまり、その、かなりカイルライン様』

『そう、今の私は切羽詰まりの状況なのです』


 ほ、ほほう、ん、まてよ。


『カイルライン様、そのお話なのですが、かなりの大事のような』

『あ、お気づきになられましたか』

『あの、そのう、私の罪状に対してなんと言いますか、割りが合わないような』

『もちろん、羊皮紙の件は不問にし報酬も出しますよ』

『図書館……』

『え? 図書館?』

『図書館に入りたい』


 この世界で図書館はかなり敷居が高い。

 街には何か所か図書館があるのだが、資格を持った魔導士しか入れない。

 本が貴重なので厳重に管理されマジで冗談では無く本に鎖が繋いである。


挿絵(By みてみん)


 一介の魔道士では図書館には入れないのだ。


『その図書館に入る権利をいただきたいです』


『図書館ですか、なるほど、正直あまり予算が無いので大金を要求されたらどうしようかと思っていましたが、図書館に入る資格ならば民生課に掛けあってなんとかしましょう』


 うし! やった! きっと古代の伝承なんかが色々あるので、漫画のネタをゲット出来るぞ!


『ところで、少数精鋭討伐隊メンバーはカイルライン様と私だけなんですか?』

『私とザクナール、そしてヒサメさんの三人です』

『ざ、ザクナール様も参加されるんですか?』

『はい、本来なら東と西の両騎士団長が参加などありえない話しですが、今回は私の不始末を片付けるため特別に参加を要請しました』


 むほほほ、これはイケメン騎士団長二人とラブラブ三人パーティーを組めそう。


『ヒサメさん、なんか口から洩れてますよ』

『オットいけねえ』


 リィズちゃんに注意されてもうたわ。


『な、なんというか流石余裕がありますね、頼もしいかぎりです』


 カイルライン様はちょっと引いていた。

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