魔法とスキル
地面が全部風船でできている楽しい世界に俺はいる。
トランポリンのように高く飛べて楽しい。
小さい子でも楽しめそうな空間だ。
あっ!
俺は足を滑らして風船と風船の間に頭から突っ込んでしまった。
苦しい……
うぅ……
目が覚める。
苦しい。
目が覚めたのにも関わらず、苦しい。
しかし、幸せな感触だ。
頬に当たる柔らかい感触、少し熱いが人のぬくもりを感じる。
人のぬくもり……?
俺はいまの状況を冷静に分析する。
あくまで「冷静に」だ。
確か昨日は――
やばい、この状況はやばすぎる。
昨日はアリスと同じベッドで寝ることになった。
そして今の頬に当たるこの感触。
間違いない。
そう、これはアリスの胸だ、おっぱいだ。
そう思った瞬間、俺が幽体離脱してしまったかと思うぐらい詳細な3人称から見たイメージが脳内に浮かび上がってくる。
少しぐらい、いいよね。
一緒のベッドで寝ようと言ったのはアリスだし。
いいや、だめだ。
アリスにはこの短い期間に何度助けられたと思っているんだ。
だが……
「おはよう、もう起きてたの?」
「おはよ、俺何もしてないよ!してないから」
俺は聞かれてもいないことを口にしてしまう。
これではやっていなくてもやろうとしたと言っているのと同じだ。
「分かってるよ、それよりごめんね、こんなに強く抱き着いちゃって」
逆にアリスに謝られてしまった。
俺からしたらこの体勢はご褒美と言っても過言じゃないのだが……
「ううん、妹によくされてたから大丈夫」
「妹さんがいるんだ、ヒカリンさんの妹さんか、見てみたいな」
妹に会ってみたいか……
俺はクズ神に言われたようにシスコンだったのかもしれない、だってアリスから会ってみたいと言われただけなのに、勝手に涙が出てくるのだから。
「ごめん、もしかして妹さん……、ごめん、辛いこと言っちゃったみたい……」
「いいんですよ、気にしないでください」
死んだのは俺だけど、それを指摘すると話がややこしくないなりそうなので指摘するのはやめておこう。
「それよりも、早く迷宮にいきましょう」
「そうですね」
アリスはそう言ってベッドから立ち上がって部屋の隅へと移動した。
俺はそれを目で追う。
「あの、今から着替えるのでなんというか……」
「ご、ごめん!」
俺は急いで窓のほうに視線を向ける。
◆
俺とアリスは迷宮に向かって歩いている。
迷宮は、俺が入ろうとした門が東門での反対側の西門を出てすぐのところにあるらしい。
西門付近に迷宮があるおかげか、東門側には魔物が少なく、安全な街道として使われているようだ。
「それはそうと、ほんとに鎧を着替えなくてもいいのですか?それよりも荷物を持ってなさそうだけど鎧はどこにやったのですか?」
アリスが不思議そうに俺に尋ねる。
さすがにストレージがこの世界でどんな立ち位置にあるのかがわからないので口外するのはやめておこう。
アリスには教えてもいい気がするが……
だが念には念をだ。
俺は笑顔で大丈夫ですとだけ伝えておいた。
それからもこの世界のことについてアリスから色々なことを聞いた。
例えば、この世界には人族以外にも魔族、妖精族、小人族、獣人族などの様々な種族が共存しているらしい。中でも獣人族は奴隷に落とされることも多く、人からの差別意識が高いらしい。
他には魔王についても聞いた、魔王は何種類かいるらしい。そして約10年に一回どこかの国にでるらしいのだが、どこに出るのかは直前の神様からの神託でしかわからないようだ。
そのため各国は魔王が自分の国に出てもいいように勇者を召喚するらしい。
今も、異世界から来た勇者が修行の旅を行っているらしい。
その時に、この世界には勇者召喚で来る勇者以外にも召喚されることは多いのかと聞いたのだが、そんな事なんてないだろ、とそっけなく返された。
なんでも、召喚の儀はたくさんの召喚魔法使いが何十人も集まってやるものらしく、それに専用の魔法陣は各国が信仰している宗教の中央神殿にしかないようで、野良で召喚されるなんて不可能と言い切られてしまった。
俺は特別か、他に神によって召喚された人も今の話を聞いて口外しないようにしているのかもしれない。
それに習って、誰かに口外するのはやめておこう。
「つきましたよ、これが迷宮です」
「これが……」
「それでは行きましょ」
迷宮は崖にあった。
崖に建物が隣接しており、なかで入退室のチェックや素材の買い取り、討伐数のチェックを行っているらしい。
「それでは中に入りましょ」
「はい」
アリスが前を歩き俺がアリスについていく。
中は広かった。
下には絨毯があって、歩くのが気持ちい。
「ヒカリンさん、そろそろ鎧を着てもいいんじゃないですか?」
「そ、そうですね」
すっかり忘れてしまっていた。
俺はAR表示させた装備アイコンをクリックして装備を選ぶ。
装備品を全部選択してからOKボタンを押すと装備が一瞬にして入れ替わった。
「すごいですね、早着替えスキルですか?」
「うん、そんなところです」
本当はここにAR表示があってそれで装備品を変えただけだけど。
俺は装備を変えるときに気が付いたびっくりマークがついたスキルアイコンを確かめる。
スキル欄には新しいスキルが追加されていた。
【精神耐性】
【土魔法】
【生活魔法】
レベルはすべて0だ。
レベル0とはどういう状態かわからいので精神耐性をクリックしてみる。
すると、新しいタブがでてきてメッセージが表示された。
>少しだけ精神攻撃に耐性が付く。有効化しますか? はい いいえ
俺は今日のようなことがまた起こるかもしれないと思い迷わずに「はい」を押した。
もう一度確認するとしっかり精神耐性レベル1になっていた。
まだレベルが上げれそうだったのでレベルMaxになるまで上げてみた。
結局レベル5で表記がMaxになったのでレベル5が最大みたいだ。
すべてのスキルを最高レベルまで上げでから気づいたのだが左上に書かれたスキルポイントが減っていたので次からは考えて上げた方がよさそうだ。
スキルポイントは1000あったので大丈夫だとは思うが。
念には念をだ。
それと【短縮習得】【短縮詠唱】【偽装能力】【完全再現】の四つはレベルアップできなかった。
この四つは神から与えられたスキルだからレベルアップの概念がないのだろ。
次に魔法欄を確認する。
何もなかったはずの魔法欄にも新しい魔法が追加されていた。
【印刷】
【硬化】
【洗浄】
この三つだ。
スキルポイントのようなポイントは見つからなかったが、どうやって使えばいいのかわからのいので、硬化をクリックしてみる。
さっきと同じように新しいタブが出てきた。
>「硬化」とイメージしながら唱える。イメージした物体を硬化する。(硬さは身体レベルと土魔法のレベルに準ずる。好きな硬さで調整可)
魔法は身体レベルと魔法属性レベルの高さによって威力、精度が変わるらしい。
威力の上がり方としては身体レベル乗の魔法レベルみたいだ。
つまり、俺で言うと身体レベルが100で土魔法レベルが5なので、100億ってことになるがこれはどれほどなのだろ?
魔法属性を持っていない魔法は身体レベルの0乗なのでレベル1の人と同じ威力しか出せないわけか。
スキルを得た時は最大レベルまで上げるのがよさそうだ。
耐性系スキルも同じようなレベル制度みたいだ。
「そこのお二人さん」
小物そうな商売人が俺とアリスに呼びかける。
「大丈夫です、地図は持ち合わせているので」
アリスはカバンから持ち出し、商売人に見せつけている。
「そうですか、じゃあ迷宮攻略、頑張ってくださぇ」
そう言って商売人は次の人に売り込みに行った。
「準備もできたようですし並びましょ」
「はい」
俺とアリスは迷宮内に入るための審査(ギルド証を見せるだけ)のために並んでいる最後尾に向かう。