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冒険者

「これに手を当ててくれ」


 おじさんの言われるがまま、水晶玉に手を当てた。

 水晶玉が光り出す。

 おじさんは詠唱を始める。


「●●▲▲■■、印刷(プリント)


 水晶玉の横に置かれた紙が光り出す。

 光が収まると、白紙だった紙には文字が書かれていた。

 この時、俺の魔法欄に「印刷」が追加されたことに気が付くのがもう少し先のことだった。


「おぉ、レベル10か、すごいな」

「いえいえ、それほどでも」


 ここではレベル10でもこの反応になるのか。

 しかしおかしいな、レベル100のはずなのに……

 でも、レベル10でこんな反応されるなら本当はレベル100だとは言わないほうがいいだろう。

 俺はやはりチートな主人公になれそうだ。

 転移初日から牢屋に入れられたときはどうなるかと思ったが、こんな美女に助けられて、運が返ってきたので楽勝だな。


「レベル10なんて本当にすごいですよ!私のレベルなんて6なんですから」

「そうだな、騎士団入団試験でも受けてみたらどうだ?その年でレベルが10もあったら入れるんじゃないか?」

「そうですか、でもそんなに興味が出ませんね」


 俺は笑顔で答える。

 10と6だったらレベルは4しか変わらないがレベル4の違いでそこまで驚かれるならレベル100なんて神レベルだろ。

 自分がチートな主人公と同じだと思うと俺は心の中で大はしゃぎした。

 

 まじか!今聞いたか?俺騎士団は入れるってよ!俺はこの世界で勇者になる男だからここで入っちゃたらおもしろくないよな?たまに手助けしながらも地位を求めない、クールな存在になろう。

 またアニメの主人公をまねしたとは言ってない。


「それで、職業はなし?どうなってんだ?」

「それってマズイことなんですか?」

「マズイに決まってるだろ!職業は生まれた瞬間に与えられるもんじゃねぇか!それがないってことは……」


美人のお姉さんも驚いている。


「でも、いいじゃない!天職がないってことはどんな職業にでもつけるし、騎士団のメンバーや冒険者の人は天職を無視してやってるわけだからそれほど大きな問題でもないわよ、稀にずっとやっている内に天職が変わったって人もいるしね」


 お姉さんのおかげで気が楽になった。

 でも、天職がある世界ってどうなんだろう?

 いろいろと縛りが多くて大変そうだ。


「まぁそうだな、今どき天職を気にしてる人なんて珍しいし、無視できない人というと巫女さんぐらいだもんな」


 おじさんの初めのリアクションを見て天職を無視して冒険者になる人はなんて稀なのかな?と思ったが、そんなことないようだ。

 また、不幸モードに突入か?と思われたがそんなことなくてよかった。


「■■■■▲●●●●、硬化(ハード)


 紙が薄っすらと光る。


「これでオッケーだ」


 受験前にお世話になった単語帳サイズの紙を手渡される。


「これで身分証明書は完成だ、なくすなよ?」


 ありがとうとお礼を言いながら受け取る。

 

え?


驚くことにペラペラだったはずの紙が金属かと思えるほどカチカチになっている。


「どうした?土魔法を見るのは初めてか?これでこの紙は金属みたいに堅くなってるから敗れる心配はないよ、少々荒く扱っても大丈夫だ、安心しな」


 錬金魔法は金属をつくるだけだと思っていたのでびっくりだ。

 錬金魔法って便利なんだな……


「ありがとうございました」

「いいってことよ!じゃあな!」

「さようなら」


 俺は狭くて汚い――優しい場所を後にした。


「嬢ちゃん!」

「はい?」

「お金、ありがとな!」

「いえいえ、それはあなたがいう事ではありませんよ、では」

「ああ」


 お姉さんも俺に続いて外に出る。

 発行所を出てから少ししてから俺は足を止めて振り返った。

 お姉さんはまだついてきていたようだ。

 俺は頭を下げる。


「本当に助かりました!ありがとうございます!お金は絶対に返しますので」


 そういうとお姉さんは笑顔で、


「ほんとにいいのよ、私が出したのはたったの鉄貨5枚なんだし気にしないで、あっ!どうしてもお礼がしたいのなら、ちょっと私と一緒に来て」


 そう言ってお姉さんは俺の前を歩きだした。



 お姉さんは一つの建物の前で足を止めた。


「少年、この建物がなんの建物かわかるか?」


 建物の前で固まって話している人たちの装備をみれば何となく予想が出来るのだが、一応、右上にAR表示されているマップに目を向ける。


「冒険者ギルドですか?」

「そうだ、知っていたのか?」


 さすがにARでマップが表示されているとは言えないので笑顔でごまかしておく。


「そうか、だったら私の頼みが何となくでも分かったかもしれないな」


 ここに来たということはあれしかないだろう。

 わかっている、俺の冒険の始まる一言が言われることを。


「ここで冒険者ギルドに登録して一緒に迷宮に行ってくれないか?」


キター!冒険者ギルドへのお誘い!


「自分でもわかっている、無理ならいいんだ、迷宮には危険も多い……」


 この世界ではやはり危険で好んでなる人は少ない仕事なのかもしれない。

 だが、俺は神から与えられたチート並みの力がある!使わないのはもったいないだろう。


「分かりました、俺も先に助けられてます、あなたに手を貸しましょう」


 あくまで、紳士に、落ち着いた声で返事をする。


「本当ですか!ありがとうございます!」


 彼女はとても喜んでくれたようだ、よかった。


「それでは早速、登録しましょう!あ、その前に自己紹介してないですね」


 そういえばしてない、最初から友好的だったので俺もやってないことさえ忘れていた。


「私はアリスです、よろしくお願いします!」

「俺はヒカリンです」


 やはりこのふざけた名前を言うのは恥ずかし、もうどうしようもないのだけど。


「ヒカリンさん、行きましょ!」


 アリスは俺の手首をしっかり握って中へと入る。

 

 中はいくつかのカウンターがあり、横には酒場もついていた。

 まだまだ外は明るいが、たくさんの冒険者がお酒を飲んでいる。

 俺と変わらない位の子供もいるがお酒を飲んでいるところを見るとやはり15歳で成人なようだ。


そんな事を考えながら俺とアリスは新規受付と書かれた札が釣り下がっているカウンターに向かった。


「こんにちは、お二人様の新規登録でよろしいでしょうか?」

「いえ、この子ひとりで」


 アリスはバックから何かを取り出し受付嬢に見せる。


「分かりました、それではここにサインをお願いします」


 受付嬢は俺に向かって呼びかける。


「文字は書ける?」


 アリスは心配そうに俺に問いかける。


 舐めてもらっちゃ困る、俺は習字で賞をもらったことだってあるんだ。


「大丈夫です」


そう言って受付嬢からペンを受け取って、紙を見た瞬間、俺は固まってしまった。

この国の文字は日本語ではないのだ。

何となくで読めるし、普通に話せるので気にしていなかったが、俺は書くことは一度もやっていないのだ。


結果から言うと必死に頑張って書いた小さな子供が書くような字で、名前を書ききることが出来た。

 汚いとは言え、名前を書ききることが出来た理由としては、書こうと思った文字の形が頭に浮かんだからだ。

 しかし、この国の文字は漢字、いや、それ以上に複雑でどこから書き出せばいいのかさえ分からなかった。


 そんなハプニングも乗り越えて、あとは説明とプレートを貰うだけで新規登録は終わっり、お金は必要なかった。

冒険者ギルドについての説明で特筆するべき点と言えば昇進(ランク)制度だろう。

 ランクは鉄、銅、銀、金、ミスリルの順に上がっていき魔物の討伐数でランクアップが出来るようだ。

 しかし、金からミスリルへの昇進は特殊で、2つの階ごとに5年にい階のペースで現れる階層主を倒さないといけないらしい。

 やるからには最高ランクを目指したいが、都市によって冒険者ギルドは別物らしいので、今はお金を稼ぐのが先決だ。

 いつか旅もしてみたいしね。


必要だったら、またアリスに払ってもらわないといけなかったしね。


「今から迷宮に行くのですか?」

「ううん、明日からにしましょ、今から行ってたら帰るのがものすごく遅くなっちゃうからね」

「迷宮はここから離れているのですか?」

「全然そんなことないよ、でも中でモンスター狩ってから外に出るころには真っ暗だよ、それよりもヒカリンさんは武器や防具を持っていないですよね?」


 そう言えばそうだ、俺は勢いで冒険者になってアリスと迷宮に潜ると宣言したものの、装備を持っていなかった。


「はい……、すみません……、どうしましょう……?」

「いえ!全然大丈夫ですよ!一緒に買いに行きましょ!お金は私が出しますので!」


 また、アリスに借りが出来てしまいそうだ。

 絶対に迷宮で活躍して見せなきゃ。

 俺は改めて心に誓った。


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