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うまくいかない世界

遅くなりました


どれだけ寝てしまったのだろう?

 俺は目を開ける。

 久しぶりに明るいところに来たせいか、眩しい。

 少しすると目も慣れてきて、周りの様子がしっかり見えるようになってきた。


 目の前に広がる景色を見た瞬間、本当に異世界に来たことを実感した。

 周りにはコンクリートはおろか街灯もない、家も近くにはないようで草原が広がっている。


「本当に来てしまったみたいだな……」


 早速、神に頼んだことが本当にできるのか確かめる。

 俺は右手を上から下に振り下ろす。

 

「出来た」


 俺の前にメニュー一覧がAR表示されている。

 神は俺が注文した通りのメニュー表示にしてくれているみたいだ。

 一つのアイコンの上についているびくっりマークに目が留まる、バックのアイコンだ。

 まだ、何も獲得していないはずのバックの中には一つだけアイテムが入っている。

 アイテム名は「最後のコンタクト」だ。


 アイテムを選択すると動画がAR表示される。

 動画はクズ神が自撮りしたようだ、伝え忘れていたことを伝えるためにしたらしい。

 内容はこうだ。


 今、俺がいる世界は危機的状況、つまり、魔王の復活が迫っているらしい。

まだ、この世界の住民には気づけない程の兆候だがこれは確実みたいだ、それで神々は地球の住人を何人か転移、あるいは転生させることにした、そのうちの一人が俺っていうわけだ。


と、いうことは俺以外にも地球出身の奴はいるってことか。


これは、私が勝手にしたことだからいいと前置きをしてから、普通は0から始まるレベルを神補正で100からにしてくれたらしい。


これで、楽勝異世界ライフだな。と心の中でガッツポーズする。


魔王が復活したら討伐に向かって欲しいが、それ以外のことは自由にしてくれ、健闘を祈る、これで動画は終わった。

動画は一度再生されたら消えるシステムだったらしくアイテム欄には何も入っていなかった。


それじゃ、神が楽勝設定してくれたみたいだから街にでも向かいますか。


俺は右上にAR表示されているマップを見る。

検索欄があったので検索してみると近くの街までナビゲーションしてくれるようだ。

本当に便利だ。

幸いなことに、約1キロ先に町があったので今日は野宿しなくてよさそうだ。



レベル100のおかげか、15分ほどで、少しも疲れたと感じずに街まで来られた。

街は壁で覆われており、東京と変わらないほどの面積はあるだろう。

外からも一部の街並みが見えるが栄えているのがよくわかる。

 俺は中に入ろうと門へと足を進める。

 門の位置は人が列を作っていたのでマップを使うまでもなく分かった。


「次の者、こちらが開いたぞ、早く来い」


 衛兵に呼ばれて彼の元まで行く。

 今頃だが、しっかり言葉は理解できる、文字も日本語とは違うが何となく理解できるのだ。

これも神の初期状態でくれたスキルの「言語理解」のおかげだろう。

 ここに向かって歩いている間に、スキル一覧を確かめたのだが、「言語理解」のほかにも「短縮習得(クイックゲット)」、「短縮詠唱」、「偽装能力(フェイクステータス)」、「完全再現(パーフェクトコピー)」などがあった。

 「完全再現」なんかは、名前からして楽勝路線まっしぐらだ。


「おい!何をしている!早く身分証明書を出せ!」

「身分証明書?」


 俺はこの世界に来たばっかりでアイテム欄には何も入っていない。

AR表示は他人に見せることはできないし……

それに、街に入るのに身分証明書が必要なんて聞いてない。


「もしかして身分証明書が見せられない理由でもあるのか?ちょっとこっちまで来てもらおうか」


 俺は衛兵に連れられて、狭い部屋に入れられる。

 まるで、刑務所で取り締まりを受ける容疑者みたいだ。

 いや、まるでも何もその通りなのだが……


「それで?なんで身分証明書を出さないのだ?」

「何度言われても変わりませんよ」


 これで何度目だろうか?

 ムキムキマッチョなおじさんにしつこく聞かれ続ける。

 そろそろ勘弁してほしいものだ。


「分かった、本当に持っていないのだな?」

「だから何度も言ってるじゃないか!」


 どうやら、この堅物も納得してくれたようだ。

 これでやっと街に――


「公都への入場は容認できない、このまま立ち去れ!」

「え?」


 俺は発言の機会が与えられないまま門の外へと連れていかれた。


「これは領主様決めた規則だ、従え」


 それだけ言い残し、衛兵は門を閉じた。

 あたりは暗くなっていて昼間はあった人の列もなくなっている。

 異世界ライフ初日から世界は優しくないようだ。


 こんなはずじゃ……



食べ物も水も何もない一日何も食べていないので激しい空腹に襲われる。

 あたりには明かりもない自分では火を起こすこともできない。

 俺は公都から漏れる光を見つめながら夜の街道を彷徨う。


「なんでこんなことに……」


 自然にそんな言葉と一緒にため息が出てきた。

 神の前で調子に乗ったのがいけなかったのかな……


 このまま何もしないで彷徨っているだけではいつか体力が尽きてしまうのは明確だったので野営できそうな場所を探すことにした。

 目の前に広がる草原には何もなく、小さな小動物のようなものがたくさんいるが、害はなさそうだ。

 草原の奥には森も見えるがそっちは大型動物がいそうなので寝るのは危ないだろう。

 俺は草原の中へと入っていき真ん中ぐらいまで行って、大の字で寝転がった。

 草は小動物が食べているのか、10センチほどしか伸びていない。

 いい感じの芝生だ、気持ちいい。

 俺は空腹を感じながらも目をつむった。



次回は明日に投稿します

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