招待状
王子のサロンで運ばれてきた食事をいただいているとき、理紗は思わず「もう疲れた…」と弱音をはいてしまった。
するとエドアルドが「では馬車を用意させよう」とあっさり頷いたので理紗は仰天した。
「帰っていいのっ? このあとの予定は?」
「特にない。今日は入園セレモニーがあるだけだったしな」
入園セレモニー?
首をかしげる理紗にエドアルドがため息をついた。
「講堂で行われたんだよ。君はどこかに行ってしまっていなかったけれど」
「う。知らなかった…」
だからやけに人が少なかったのね。
「いったいどこへ行っていたんだ。それにあのバッグはどうした」
「あ」
そうだった。
理紗は王子にバッグを落としたことと、警備局に届けられてないか確認に行きたい旨を説明した。
黙って耳を傾けていたエドアルドがあきれた顔をする。
「バッグを何度落とせば気がすむんだ。──まさかまたどこからか飛び降りてないだろうな?」
ぎく。
「まさか」
すまし顔で答えながら内心冷や汗をかいた。
だが都合の悪いことは言わないにかぎる。
「迷子になったり倒れたり…まったく。目が離せないなきみは。今夜の舞踏会では私のそばからはなれないように。いいね」
舞踏会?
きょとんとする理紗に王子がいぶかしげな目を向けてきた。
「この学園の生徒を招いての王宮舞踏会だ。きみのもとにもまず間違いなく招待状が届いているはずだが」