幼い子供
「あの…お名前を伺っても?」
「ドレイクだ」
「…ありがとうございます、ドレイクさま。ハンカチは新しいものを用意してお返しします」
「そんなことは気にしなくていい」
地面に座り込む理紗を振り返り、ドレイクが眉をひそめた。
「立てるか」
理紗は黙って頷いた。地面に手をつき足に力をこめるがなんだが体が重かった。
なにより無気力になりこのまま座り込んでても別にいいか…という気分になってきた。
ドレイクがため息をつき、そばに屈みこんできた。
「立てないなら運んでいってやる」
理紗はふたたび頷いた。両手をさしだすと軽く引っ張られ立たされる。そしてふわっと横抱きにされた。流れるような軽やかな動きで、理紗などまるで花びら程度の重さだといわんばかりだ。
目の前には頑健そうな顎とくっきり浮き出た喉仏があり、ほほにはかすかに髭が目立ち始めていた。
それをぼんやり見つめていると、ドレイクがちらりと横目で見てくる。
そして「やめろ」とうなった。
「?」
「くすぐったいからよせ」
「あ…」
無意識のうちにひげに触れていた。ツンと指先に感じる刺激は理紗にとって懐かしいものだった。
ドレイクの武骨さは幼い頃に亡くした父を思い出させた。短い髪も、太い眉も、その下のにらむような目付きもそっくりだった。
なにより理紗になにも期待してこないそっけなさが安心感をもたらしてくれた。
幼い頃父にしたようにその太い首にしがみつき、ゆったりとした揺れに目を閉じた。




