迷子
──あぁもう、ここどこなの?
シュバルツのオフィスから出たあと建物内をあてもなく走り続けて、理紗はいま途方にくれていた。
さきほどの男性に見つかってしまうかもしれないため外に出られず、かといって行くべき場所がわからなかった。
そもそもこの建物自体が奇妙な作りをしていた。
外観はそこまで大きくはなかったのに、中の廊下は延々とどこまでも続き部屋の数も多かった。
見つめる先にはドアが無数に並んでいるが、どれも開かないし人の気配もない。まるでホラーだ。
ゲームの世界だし、ただの背景ということなのだろうか?
それともストーリーが進むにつれ、順次使用解禁となるのか。
とにかくどこへ行くべきかのヒントになるものと、お手洗いを探した。だがよくあるあの表示マークは無く、ドアはどれも開かず、理紗は段々焦ってきた。
すると前方のドアが開き、制服のワンピースを着た人物が部屋から出てきた。
茶色のロングヘアーで赤いカチューシャはしていない。
ヒロインではないということに安堵して、理紗は声をかけた。
「あの、お手洗いを探してるんですけど…どこかご存じですか?」
「あぁ、それならここにありますよ」
「ありがとうございます!」
いま出てきたばかりのドアを示す相手に理紗は笑顔で会釈した。
そしてドアに手をかけ中へと入り──首をかしげた。
そこはお手洗いではなく応接間のような空間だった。