秘めた願望
──これは自分の願望がみせる夢なのだろうか
理紗はこれから視界を奪うために使われるものをまじまじと見た。あの小説と同じグレーのネクタイだ。
アラサーにもなって乙女ゲームにハマっている友人をどこか憐れむような目で見ていたが、本当は理紗にも人には知られたくない嗜好品があった。
それがBDSMを題材にした恋愛小説だ。
日本ではあまりみかけないが、海外では一時たいへんなブームとなり、多数の作品が出版され、人気のあるものは映像化もされている。
なかでもお気に入りなのが、富豪で世界的企業の若きCEOと生真面目な女子大生の心の交流を描いたシリーズだ。ハリウッドで映画化され日本でも上映された。もちろん初日に見に行った。ひとりで。
グレーのネクタイはその物語の重要なアイテムであり、二人の心の距離を表す大事なものだったのだ。
映画観賞後に浮かれるあまり、当時のカレに意味もなく似たグレーのネクタイを送ったりもした──それで目隠ししてほしいとは最後まで言い出せなかったけれど……。
一度でいいからあの物語のヒーローのような影と色気のある男性に従ってみたいと思っていた。けれど理紗のまわりにはそんな気骨のあるものはいなかったし、理紗自身積極的には探さなかった。
そんなひとは存在しないと思ったから。
──そしていまその願いが叶おうとしている──




