紅光宮殿
………かっ体が重い…てか節々が痛すぎる。
暗い。いや、目を閉じているのか?
やたら重い瞼をこじ開けると、そこには豪華絢爛なシャンデリア。
間違いじゃない。シャンデリアだ。キラキラ輝いていて正直目が痛い。
というかここは何処だよ。金かけてそうな天井が見える。起き上がって周りを確認しようにも、体が痛すぎて倒れる自信しかない。これ内臓ヤッてない?
俺が己の体の安否を心配していると、突然視界に美少女が入り込んできた。
勝ち気そうな赤い髪の美少女。嫌いじゃない、むしろ好きなタイプだ。控えめに言って結婚してほしい。
そんな俺のキモい内心が伝わったのか彼女は怪訝そうな顔で俺を見つめた後、急に血相を変えて叫んだ。
「キャーー!しっ死んでる……!!」
………………え?しんでる?
「え?俺死んでるの?」
驚きすぎて普通に声出た。え、死んでるの?
「キャーー!喋った!動いた!!」
またもや赤髪美少女に叫ばれる俺。何を思ったら死んでると思うんだよ。しっかり確認してから叫ぶのはおかしいだろ。目悪いのか。眼鏡かけろ。
「あのー…すいません、びっくりされてるところ悪いんですけどー、ここ何処ですか?」
とりあえず目の前の第一発見村人こと美少女に訊いてみる。すると彼女はハッと何かに気づいたような顔をして、居住まいを正した。
「これは天の使い様、目をお覚ましになりましたか。ここは夕日の国セーテ、紅光宮殿でございますわ。私はルシエル・セッテルヴァー、セーテの第一王女でございます。これからよろしくお願い致します。」
何食わぬ顔で挨拶を寄越すルシエルさん。淀みない口調だが微妙に感情が篭ってないし、目が泳ぎまくっている。さっきのは無かったことにするんだね。無理があると思うよ。
「あー、天の使い?とかよく分かんないんですけど、っていうかテレビですか?カメラ何処ですか?」
「てれび?かめら?…天上の魔法なのですね、素晴らしいです!さぁ、起き上がってくださいまし。お部屋へご案内致しますわ!」
駄目だコイツ、話を聞いてくれないぞ。どうしてもその設定を貫き通したいんだな……わかった、俺も腹をくくろうじゃないか。
「うむ、苦しゅうない。ルシエル殿、よろしく頼むぞ!」
気分はお代官様だ。ノリノリで答えたが俺は今1ミリも体を動かせない。
察したルシエルさんが用意させた担架で、俺は運ばれていったのだった。
ちなみに周囲にはオッサンがたくさんいた。担架で運ばれていく俺を皆無言で見送っていた。
非常に、シュールだったと思う。