ヒーローとしての卒業
あの闘いから1ヶ月が過ぎた。
世の中は卒業シーズンに突入し毎日どこからしらから嬉し悲しい涙の音が聞こえてる。
だけど俺達ヒーローには世の中の決まった行事とか関係なしに勝手に決められたいわばヒーローカレンダーに乗っ取って動かされている。
ヒーローはそれに抗うことはできないし、抗えたとしてもそれはカレンダーに「抗う」と書かれていただけのこと。逃げようとしても逃げられない。カレンダーに書いてある日程表に従うだけ。
ヒーローカレンダーの日程表に先月あるあるヒーローに関してこう書かれていた、卒業と。
その言葉の通りある一人の少女が一足早くヒーローを卒業した。
彼女は敵に心を捕らわれ、同じく心を捕らわれた少女と共に俺に襲いかかってきた。
俺は攻撃を受けかわしながらもどうにかして正気を取り戻せるか必死に方法を探していた、彼女を「卒業」してもらうために。
話した、必死に、必死に。方法がそれしかなかったから。
結果的に彼女は自分を取り戻した、俺のうったえが正気に戻ったのだ。とてもヒーローらしい王道な展開じゃないか。
あとは少女の心も取り戻してめでたしめでたし!
となったらどんなに良かったものか。
少女は前に言ってた、「頭の中から声が聞こえる、その声に従ってるだけ」だと。
それを俺は「誰かが別の場所から指示を出している」と思っていた、思い込んでいた。
けど正気を取り戻した彼女は俺にこう言った。
「黒幕は私、本当に倒さなきゃいけない敵は私達の中にいる。」
最初俺はその言葉にピンとこなかったけどすぐに理解した。
彼女達をこうした黒幕、倒さなきゃいけない敵はずっとそこにいた、彼女達に憑依し、支配していたんだ。
自分の魂を2つに分けて。
「こいつを倒すには2つの魂を同時に破壊しなきゃダメ、でもこいつは私達から出ていこうとしない。
だから…じゃあね…!」
彼女は抵抗する少女を魔法で縛り上げ抱き抱えと眩しい光を放つ。光に全てを包まれる直前彼女は俺に寂しくとも儚い笑顔を浮かべ光の中に消えていく。
彼女は…ミクはこの瞬間ヒーローを、人生を卒業した。