魔法少女を終わらせるための決戦
季節によって決まった行事があるみたいにヒーロー達にも月ごとにやらなきゃいけないことがある。
そいつはヒーローによって違うし同じことだしとしても時期も季節もバラバラなんだ。
けど誰であろうとヒーローには最後にやらならなきゃやらない行事がある、最終決戦、敵との因縁の決着。文字通りの最後の戦い。これをやらないとヒーローはヒーローから解放されないし、もし負けでもしたら人類と地球が大変なことになる重要かつ重大な行事。
もちろん第三者が介入なんかできないし敵も持てる以上の力を出せないある意味泥臭いタイマンの殴り合いに近い。
が、それは最終決戦の話であって前哨戦にはそのルールは適用されない。
実は今人類最大のピンチがすぐそこまできているのだ。
この季節、2月に最終決戦を行うはずのミクが知っての通り敵に捕まっている。ミクの敵はミクの攻撃しか通用しない。なのに彼女がいない今敵を止められる人は誰ひとりいない。
最終決戦に参加はできないけどミクを最終決戦にさせる手助けはできる…、なんて建前なんか関係ない。俺は純粋に彼女を助けたい、そんな気持ちが抑えられなくなりアミカが必死に調べてくれて分かったミクの居場所に向け飛び出した。
いつものアミカがだったら絶対止めてただろうにこの時は何も言わず俺を送り出してくれる。あんま折り合いが良くなかったアミカとミクだけと助けたいという気持ちは一緒なんだ。
アミカにまた仲良くケンカさせてやろうと心に決めた俺が来た場所は木造の古き良き薄暗い廃校だった。
最初はアミカには申し訳ないけど「こんな場所に本当にいるのか?」と疑心暗鬼になってたんだ。だけどそのやましい考えはすぐに消える、ヒトミの出現によって。
彼女は教室の最後列の席に肘をついて着席している。かたや俺はそんな彼女を教壇に立ち睨みつける。
この光景はまるで
「あの時と逆だね!」
そう笑顔で呟いた彼女に俺は少しの苛立ちを覚えるけどそれに任せたら前と同じ、少しは成長したんだよ俺は。
「ヒトミもヒーローなんだよね?なんでそんなとこにいるの?」
「前にも言ったでしょ、私は何もない普通の女の子。何もないからどこにでも入れる。」
「頭の中で響く声に従ってるって言ってたけどヒトミはいいのそれで?」
「いいって何が?」
「自分のことを自分で決めないで他人に言われるまま命令されるままそれに従って生きてくことにさ。」
「別にいいんだよ、だって私には何もないんだから。」
俺はここにひとりの少女を助けにきた、だけど今この瞬間ひとりがふたりに変わった。
そしてアミカの嫌な予感もどうやら当たってしまったようだ。
「はははっ…、手助けするだけだったのに
どっちが最終決戦だよまったく…。」
「ねぇ、なにひとりでボソボソ喋ってるやねさ!」
「呆れてるだけだよ、助ける人と戦う仲間が増えたことにさ!」
俺はベルトを巻きヒーローへと姿を変える。もう力の出し惜しみはしない、最初から最大全力全身フルパワーの黄金の鎧を身に纏う。
「まったく懲りないよね、これだから男子はさ。」
ヒトミも純白のドレスを身に纏いあの頃と同じ攻防が今まさに始まろうとしている。
俺は右手に剣を持ち彼女もステッキをその手に忍ばせる。
「あっ、そうだ!戦う前にひとついいかな?」
「なに?」
「私「あの時と逆」って言ったけどごめんね、これじゃあまだ不完全だよね。」
不完全と言う彼女を言葉が何を意味するかはすぐに分かった。あの時の再現なら、完全な逆転なら何かが足りない、誰かがいない、役者不足だってことにさ。
「だから完全にするために私の仲間を呼ぶね、これで完璧にあの時と逆の同じになる。」
ヒトミはステッキを天高く上げくるくると回す。
それに共鳴するように彼女の目の前に光が渦を巻いて現れる。
渦が次第にスピードど落としその中から影が現れ光が薄くなるに連れてそれが人の形を成していく。
その正体を俺はよく知っている。ちょっといい加減でがさつで、でもいざと時には役に立つ支えてくれる、俺が今ここにいる理由の全て。
「紹介!ってほどでもないか。もしかしたら私より知ってるかもだもんね君は。」
光の中から現れた見覚えのピンクの衣装を纏った彼女はいつもの変わらない笑顔を見せ言った。
「久しぶりねツナグ、そしてさようならだよツナグ。」