決戦はクリスマス 前編
世はまさにクリスマス、子供はサンタさんからのプレゼントにワクワクを覚え、カップルは刺激的でドキドキな夜を過ごし、就労に励む人達は年度末やら繁忙期やら慌てふためく。
じゃあ俺達ヒーローはというとそれはそれは忙しくてたまらない。
12月に入ってから敵の動きが何故か活発になりその度に俺は今ある持っている力をフル活用して戦いに挑んでいく。
それは他のヒーロー達も同じであって、例えば5人組のヒーローはいつの間にか7人に増えていた。まあそれはいいとしてその人達は一度倒し復活した敵達と相手をしていた。最初苦戦したのもなんのその、7人は自分の持てる力を最大限発揮しそいつらをなぎ倒し、今はそいつらを再生された幹部クラスの敵と戦っている。
光の巨人はまるで最後の戦いだと言わんばかりに巨大な怪獣と激しい戦闘を繰り広げていた。
一度は胸のタイマーの灯火が消え巨人自信も光の粒子となって消滅したが空に現れた虹色のオーロラがバラバラになった巨人を形成し復活させる。
オーロラと同じ虹色の姿となった巨人は全身から体と同じ色の光線を繰り出し怪獣を倒し巨人は役目を終える。
正念場なのはミクも同じだ。彼女は敵の親玉とついに対面した。無論彼女は己の使命を果たすため勇敢に戦いを挑んだものの敗北し、その後の彼女は少しというか酷く落ち込み涙を見せた時もあった。でも持ち前の性格が彼女を暗闇から救いだし幹部を一人新たに手に入れた力で倒した。
そして絶対に親玉を倒すと心に決めたんだって。
とにかく忙しかった12月を乗り越え今日は終業式、戦闘で蓄積された疲労と校長先生の長い話のダメージで俺とミクは机にばったりと倒れている。
「なにだらっとしてるのよ二人とも!」
最後列の机で項垂れている俺達に後ろで仁王立ちをしているアミカが渇をいれるけどそれをミクはダルそうに手を上げて答えた。
「ちょっと黙っててよ…私達疲れてるの…。」
「ミクの言うとおり、高校生には過剰過ぎる労働をこなしたんだから休ませて…。」
「はぁ…全く…あんた達もうちょっとヒーローとしての自覚をね…。」
アミカのお叱りを遮るかのように教室の扉が開き先生が教室に入っていく。
「ほらほら先生来ちゃったよ…。」
「アミカも早く席につかないと…。」
「…ったく…、お説教の続きは冬休み最初の行事に取っとくわ。」
「はいはい冬休み冬休み…。」
アミカはムッとミクを見つめた後不満そうに自分の席に戻っていく。
アミカを含めクラス全員が席に座ると先生はクラス名簿を教卓の上に置き静かに口を開く。
「早速ですが転校生を紹介する。」
元気とは言わないけどいつもより静かで淡々と放った言葉にそれまで静かだった教室は一瞬にしてざわついた。
ただでさえ高校受験というシステムがある以上高校での転校生っていうのが珍しいのに、今日、終業式が終わり明日から冬休みがスタートするこの時に転校生がやってくるなんてどんな事情があったとしても普通ならあり得ない。
俺とミクも衝撃的な言葉とざわめきによってさっきまでのダルさと疲れが吹き飛んだようにしゃっきりと体が身軽になる。
同時にアミカの険しい表情を見たらなにがおかしいってことにヒーローとしての勘がひしひしと訴える。
「あいつがあんな表情するってことは…。」
「うん、なんかヤバそうね。」
俺達はいつでもヒーローになれるようアイテムを手に忍ばせる。
「さあ、入ってきていいぞ。」
先生の号令に教室の扉が開きそこから一人の少女がはいってくる。
高校生としては少し小柄であどけなさが残るその子は先生の隣に立ちクラスのみんなに笑顔を振り撒く。
そのクラスメイト達はというとさっきまでのざわめきはどことやら、男子は転校生が女の子と分かり愛嬌振り撒く仕草に心をわしづかみされ、女子は女子でどこか安心をた様子だった。
「なんか普通の子だね?」
「…。」
「ツナグ君?」
「あっ…ごめん…!」
「どうしたの?ボーっとしちゃって。」
「あの子どっかで見たような気がしてた。」
「どっかってどこよ?」
「それが分かれば苦労しないよ。」
俺は目の前にいる子を知らないはずなのにどさこか会ったような、もしくはそんなことがあったようなそんな気がしてた。
それがヒーローとしての感なのか、ただの気のせいだったのか分からないけととにかくその子とは初めての感じがしなかった。
「それでは自己紹介をお願いします。」
「はい!」
先生の淡々とした要請に彼女はハキハキと答え一歩前に全身する。
ああ見えて緊張しているのか一度手を胸に置き大きく深呼吸をした後彼女は口を開いた。
「えっと、私の名前は白川ヒトミです。あの後ろにいるヒーローを倒すためにやって来ました。
皆さんとはほんの一瞬の短い時間だけどよろしくお願いします!」