クラスメイトは魔法少女
「私達って大変だよね。」
俺の机の上に座り足をブラブラさせてる小柄な女の子、原田ミクが俺に言った。
「ただでさえ学生生活で忙しいのにどこからやって来たか分からない変なのと戦わなきゃいけないんだよ?ツナグ君もさっき戦ってきたんでしょ?」
「そうだよ…、だから激闘とお説教で疲れてるから静かにしてくれない…?」
学校に来る前たまたま必然的に敵と遭遇してしまった俺は朝の運動とは激しすぎるくらいの激闘を繰り広げてきた。もちろん勝利し、襲われそうになっていた中学生の女の子を助けることはできたものの代償は大きく制服は汚れたことに加え無断で遅刻したことにより先生との第二ラウンドを繰り広げてぼこぼこ打ちのめされた。
おかげで心身共にぼろぼろ、なのに事情を知ってるはずの彼女はからかうように俺に絡んでくる。
「え~、いいじゃん!もっと話そうよ。これあげるからさ。」
そういいミクは制服の胸ポケットから棒キャンディを取り出し机に置いた。俺はそれを受け取り舗装を取り口に咥える。
「疲れた時には甘い物だよ。」
「親切にありがとう。」
ミクも俺に渡したキャンディの同じものを口に咥えた。
「でもさ、ほんとなんで私達なんだろうね。人間五万といる中でただの学生である私達がさ?」
「アミカに何度聞いても選ばれたからとしか言ってくれないんだよな。」
「アミカちゃんね…、そういえば彼女今日は一緒じゃないの?ヒーローになってからプライベートが無くなるほど一緒にいるって言ってたじゃん?」
「そうなんだけど…今日はまだ合ってないんだよね。いつもなら呼ばなくても出てくるのに。」
朝、アミカに玄関で待ち伏せされ一緒に登校することが半ば生活の一部のなっていたから今日それがなかったことに多少のモヤモヤと不安感があるのは確かだ。だからといって探しに行こうしても一切自分のことを話してくれない彼女を探す手がかりが全く見つからない、あるとしたら彼女も通ってるこの学校くらい。けど彼女の席は無人のまま。
「そもそもアミカちゃんっていったい何者なの?ツナグ君にヒーローの力をくれたも彼女なんでしょ?」
「与えられっていうか…脅迫されて半強制的に渡されたっていうか…。」
「ふーん。」
あの時のことを思い出すと知らず知らずに苦笑いがこびりでる。
そんな俺を見てミクは不思議そうに眺めているがそれ以上のことは聞いてこなかった。
これも「この業界」に置いては暗黙の了解、深入りも深寄りもしてはいけない。
だったらこの俺とミクの状態はどうなんだというけど名目上では「クラスメート通しのたわいのない会話」なのでなんも問題ない。
もっとも暗黙の了解なんて俺とミクは気にしてないんだけど。
「俺もよくは分からないんだよ、アミカのこと。」
「あんなに一緒にいたのに?」
「あいつ自分のことはなんも話してくれないんだよ。それ以外のことは聞いてもないのに話すのに。」
「そうなんだね~。」
「きゃあぁぁぁぁ!!!」
突然外から女性の叫び声がこだました。
それに釣られる俺達を含めた教室にいたクラスメート全員が窓に集結しグランドを眺めた。
そこに映し出されたのが体育の授業のためグランドで準備していた生徒たちを触手なようなものを何本を繰り出し拘束していく少なくとも俺が戦っている敵とは別種族の怪人が鎮座している。
逃げまとう生徒もその触手の餌食となりそれを窓越しに見てみたクラスメート達は自分も触手に襲われるかもしれないという不安と恐怖に教われ次第に窓から離れていく。
「なんでこんなとこに現れてるだよ…もしかして俺達の正体バレたのか…?」
「正体のなにも別に私達隠してるわけじゃないし、なんならクラスの人達も何人かしってるくらいじゃん。」
「まあ…そりゃそうなんだけどね…。」
「単なる偶然だと思うよ?敵はいつどこで現れるか分かりませんし。」
「とにかく今はアイツを倒さないと!」
俺はベルトを取り出し腰に巻き付け窓を開き飛び出そうとするが「待って!」とミクが手を掴み制止させる。
「なんで止めるだよ!」
「いいからいいから。」
ミクは犬を落ち着かせるみたいに俺を手馴れつける。
「ツナグ君はさっき戦って疲れてるんだから今戦ってもぼこぼこにされるだけだよ。」
「でも…俺がやらなきゃ!」
「まあまあ、この学校にいるヒーローはツナグ君だけじゃないんだよ。
それにあの敵は私の担当だから。」
ミクは俺を窓から下がらせて逆に自分は足場を文字通り足をかける。
「ここは私に任せなよ。君よりちょっとだけの先輩にさ!」
ミクはそう言い3階にあたるこの教室の窓から飛び降りた。その瞬間まばゆい光が彼女を守るように包み込み静かにグランドに着地する。
光の繭が破られこから出てきた彼女は黒いショートの髪は鮮やかなピンクに染まりロングのツインテールに形を変え、ブレザーの制服はドレスを模したような髪の色と同じ色の衣装に姿を変える。
変身の際に発生した光に釣られ一度は窓から離れた生徒達は再び集まりグランドで怪人と退治している俗にいう魔法少女に姿を変えたクラスメートに視線を集中する。
「はははっ…、やっぱり見ちゃうよね…。この姿恥ずかしいからあんま知り合いに見られたくなかったけど…まあしょうがないよね…、世界の平和と私の平穏な学校生活のためだもん。」
ミクは胸に手を当てると体の中から辞書のような分厚い本が飛び出してくる。彼女はそれを手にしページを開く。
そこに書かれたいた文字を読み上げると本は2本の小型の鎌へと変化し彼女の腕に収まる。
「これさ魔法少女が持ってていい物じゃないよね、でも貴方を倒すに最高の武器だと思うの?
さあ怪人さんかかっておいで?後で友達に話す言い訳にしてあげる!」