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脇役が主役になるまでの物語

俺はこの世界の脇役だ、どこにでもいる一般人A、通行人Bの名も無き人間だ。

この世界の主役は世界の、人類の平和を脅かす存在から人々を守る正義のヒーロー達のことである。

だから世界の平和なんて大それたことは選ばれたヒーロー達に任せて俺達脇役はのうのうと暮らしていればいい、それがこの世界のルールなんだ。

俺もそのルールに従って生活をしてきたのに、それなのにさてさてどうしてこうなった。










ビルは崩れ、至るところから黒煙が空に上がっていく。瓦礫が地面にゴミのように散乱し街は混乱の渦に飲み込まれていく。

もちろんそれを起こした原因は平和を脅かす存在である怪人だ。

案の定俺はそんな怪人が起こした騒動に巻き込まれてしまった。もう巻き込まれることは半分諦めというか最早慣れてしてまったからそこまで気にしなかった。

けど今日はいつもと違うことが2つある。

1つはこの騒動を起こした怪人、今まで見てきた怪人やら怪獣はどこからしら所属する種族の特徴っていうのがある。それは国や専門組織が発表して人々はそれを自身の身を守る手段として把握している。

だけど今回出てきた怪人は今まで発表されてきた特徴が何一つない。派手でカラフルな外見どこを探しても見つからないのだ。

それから考えるに多分こいつは新種、新組織のやつだ。うん、きっとそうだ。

だから対処しようがない、対処法を見つけるには犠牲が必要になる。それも沢山の。

だけど今回はまだ一人の犠牲者は出ていない。それがもう1つのいつもと違うこと。

時間が停まってるのだ。

建物から崩れた欠片は空中で止まり、黒煙もいつまで立っても消えない。

怪人から逃げまとう人達は悲鳴1つあげず人形のように固まり、この騒動の原因を作った怪人すら小指すらピクリとも動かない。

この停まった時間で動いているのは俺と彼女だけ。


「どう、分かってくれたかしら?」


見た目こそ黒いワンピースだけど見れば見るほどこの世界のものではない奇抜な服装を見にまとったアミカと名乗る俺と同い年くらい少女が問いかける。



「どうって言われてもさ…。」


「まあいきなりこんなこと言われたら誰でも混乱するよね。でもね今この状況を救えるのはあなたしかいないの。」


「なんで俺なんだよ、こんな何も取り柄のない一般人の俺がどうして!」


俺は言葉を荒らげアミカに問い詰める。だっていろいろあったけど昨日まではなんも変哲のないどこにでもいる高校生だったのにいきなりそんなこと言われたら誰でも混乱するだろうよ。



「答えは1つしかないよ、あなたは選ばれたの…、世界に。」



「世界に…?俺が?」


「当たり前のこと言うけど、5人組で戦ってるヒーローも、光の巨人に変身して戦ってるヒーローも元はあなたと同じただの一般人だったの。だけど世界に選ばれて平和を守る使命をおったヒーローになったんだよ。

そして先月、ある一人のヒーローがその役目を終えた。」


そのヒーローのことを俺は知ってる。彼が役目を終え、使命を終え、ヒーローとしての仮面を捨てる瞬間を俺はこの目でバッチリと見届けていた。

そいつとは色々あってただただ迷惑だったけどいなくなってみると心に穴が空いたみたいな寂しさが襲ってくる。


「けど平和を脅かす存在はすぐ新しく生まれた。だから世界がそいつらに対抗する新しいヒーローを選んだの。それが…。」


「俺…?」


「そう、あなた。でも本当はあなたは7月に選ばれる予定だったの。だけどその時のあなたは入院中の病人だったし順番をズレてこのタイミングってなったわけ。

というこでこれ以上順番をズラすことができないから。」


「でも俺はそんな大それたこと…。」


「あーもううっとうしいなー!!!」


アミカは突然別人格が宿ったように大声でそう叫んだ。


「えっ…?」


「男なんだからウジウジするのやめてくんないかな?」


「えっと…あの…?」


「せっかく優しくしてあげてるんだからささっさとしてよね!!時間停めてるのも楽じゃないのよ!」


これとした動作をしていないのにアミカの首筋から汗がスルッと流れていく。


「いい?この役目があんたにしかできないの。ここであんたが私の手を取って正義の味方をするか、そのままウジウジしてあいつらに世界征服される姿を惨めにみてるかどっちかしかないの!」


アミカは優柔不断な俺に手を伸ばす。彼女の手を取れば俺は一般人じゃなくなる、普通じゃなくなる。それは嫌だ。でもこのままだと世界の平和がなくなる、世界が普通じゃなくなる、俺のせいで。それはもっと嫌だ。

世界を守る運命を背負うか、世界を滅ぼした十字架を背負うか。その2つを選べというなら答えは決まってる。



「どうせ背負うならみんなが知らないほうがいい。」


「よろしい。」


俺は彼女の手を掴む。その瞬間掴んだ手が光輝き俺を包み込んだ。

眩い光が体にフィットするように吸着されていきそれが意見を求める暇もなく俺自身を異形の姿へと変えていく。

俺は銀色の鎧を身に纏った戦士へと変身をした。









今この瞬間あんたは普通ではなくなった。脇役でも一般人Aでも通行人Bでもない、この世界に選ばれた新しい物語の主役になったんだ。

これから様々なことがあんたを待ち受けるだろうよ。でもこれは決められたこと、

運命だの宿命だの沢山の試練があんた待ち受けるだろうね、だけどあんたなら大丈夫、だってもうヒーローだから。

あんたも見てきただろう?沢山のヒーローが、正義を脅かす存在に、自分の運命に抗い立ち向かっていく姿を、勇姿を。

だから頑張れ新ヒーロー。

おめでとう来道ツナグ君。

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