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空 色々な出会いをする

 ここから本格的に異世界で活動を始めるので、比例して例のネタは減少していきます。あくまで空の初心と異世界に行くための理由であって異世界で活動を始めた現在、見上げる憧れでなく到達すべき先ですので。まあ、ちょくちょく悪ふざけにならない程度にはネタ挟みますが

 洞窟の中も気になるところだけど、もし中にもなにかがいたら目も当てられないのでとりあえず倒したオーガのみ回収して帰路に着く。十分な休養と食事、そして修行の見直しで幾分かマシになった時点で再度、洞窟に訪れ中の確認を試みる。やはりオーガの住処だったらしく、他に生き物はいなかったが大量の骨と、戦利品のつもりかは判らないけど皮やら小型の棍棒やら雑多の物がある。

 臭いが酷いので手早く済まそうとするなか、気分の悪くなるものを発見した……おそらくは人骨だ。まだこの世界の人間とは出会っていないけれど来る前に聞いた限り見た目は大差ないようなので、まず人骨なんだろう。雑多な物の中にあきらかに人の使う武防具やバッグなどがあり、確認すると服の作りやサイズ的に男女2人、遺骨も大量の骨の中から確認したところ流石に頭蓋骨しか判別できなかったけれど2人分だった。先の話はわからないけれど、人のいる場所に訪れたらせめて判別できた頭蓋骨と遺品程度は遺族に届けるなり、墓に弔うなりはしたい。

 遺骨と遺品は一纏めにして回収し、判別できない大量の骨や物は洞窟の外に運び出し油をかけて焼却して埋めてしまう。洞窟の入り口も前回よりスムーズになった<気>による拳の一撃で崩落させ塞いでしまうと、微妙なやり切れなさ、この世界の厳しさを感じながら帰路に着いた。


 ……そして現在、私はそのままではどうしても実家を感じてしまうから、と大改造を行なったマーク2ハウスの地下にある熟成庫で捌いたボアをベーコンとソーセージに加工し、最後に牛を吊るし終わり大量の内蔵の入ったタライを運んでいる。家から出ると、音と臭いに反応して数頭のオオカミ(っても私とのサイズ関係は地球基準なら10才児とグレート・ピレニーズくらいで配色が紅と深い紫)がこちらを向く。


「さ、みんな呼んでちょうだい」


 私が一声かけると群れのボスが遠吠えを鳴く、すると何処からともなく十数頭のオオカミがやってくると全員ちょこんと一斉にお座りする。


「食べていいわよ」


 その一声でまずボスから、そして群れの順序にそってガツガツと消費されていく。私は動物全般、特に犬は大好きなのでついつい顔が綻んでしまうのを感じながら、あの日以降のことを思い出す。


 




 ……あれから野菜や果物が手に入ったので幾分、食事や栄養は改善されたとはいえ食肉がないのが問題だった、がこれは野生種のボアがうろついていたので解決、さらに幾らか先の話になるけど牛の生息地も発見したので更に食は改善される。ただ、このボアを狩った日に問題が起こった。

 血の臭いに誘われたのか、または気付かなかっただけでハウスを建てた場所自体が縄張りだったのか見たこともない、鮮血みたいな紅と黒に錯覚する深紫の配色とサイズのオオカミの群れが現れたのだ。

 唸り声をあげ牙を剝く相手にいくら犬好きとはいえ命までは渡せないので、こちらも戦闘態勢に入る。まあ結果を言えば数匹の首をへし折った時点で引き下がったんだけど、あくまでそれはその場では、の話で来る日も来る日も私が外に出るたびにオオカミに襲撃された……群れが壊滅するまで。


 そうして犬好きの心に多大なダメージを負う仕事をやっと終わらせた私の前に、今の群れが現れたのだ。

 ただ群れの性質なのか自分たちがテリトリーに侵入した立場と理解しているのか、こちらの攻撃意思を確認する程度で私にその意思がないと判ると、前の群れの殲滅と偶に出る豚顔の(多分オークだろう)魔物やサイズも小さく色も緑のオーガを倒しまくった結果、魔物や動物に危険地帯と判断されたマイハウス周辺は逆に言えば最高の安全地帯でもある、ここに居ついてしまった。まだこの時点では互いに不干渉というか気にしない関係だったんだけど、ある日を境に関係が前進したのだ。


 その日も私は別段気にするでもなく(オオカミたちにとっては万が一にも害意が向けば群れの壊滅、故に常に何頭かはハウス周辺にいる)洗濯物を干しながら悩み事をしていた。そこで、ふとオオカミを見る、今まで不干渉を貫いていたので気付かなかったけど、前の群れと違ってこの群れのオオカミは痩せて骨ばっていたのだ。念のため、数日間、注意して見ると群れ全体が栄養不足なのが見て取れた。ここで天啓というか私の悩みを解決してくれる一石二鳥が目の前に転がっているのに今更ながら気付いたのだ。

 ……私の悩み、それは解体した食肉の内蔵の扱いだった。流石に捨てるのは問題があるけど、私は内臓食がホント苦手なのだ、母と兄弟は好物だったのだけれど元父と私はハラミは好物! 以上! な人だったのだ。いくら食べられないとはいえ食材を廃棄はできない、腐らないのでアイテムボックスに溜まる内蔵、捨てれず消費できず跳ねる私のストレスゲージ。そこに目の前に飢えて栄養失調手前の動物、しかも動物は栄養価の高い内臓を好む! この日、お互い不干渉を決めた関係に終わりが訪れたのだった……


 その間にも当然、日々の修行と<気>の鍛錬は繰り返し拳だけでなく足や腹部、顔といった攻守に使える一点集中や全身の<気>の流れを練り廻らせ爆発的に身体能力や<気>を強化したり<気>を生命力として探ったり探知したりする能力、そして! 遂に! 気功波を放つことを成功したのだ! ……未だ瞬間的な操作で使用するのは不可能だけど。重力操作も常時5Gでこちらに来た当初より高い身体能力を発揮できるようになったのだ。

 この期間がどれだけだったのか正直、わからない。相変わらず操作をミスすると失神するし(これは意図的に無理をして起こしてるともいう)ついつい熱中しすぎて徹夜や食事を忘れることも多い上、そもそも時計もなければカレンダーもないので日付が分からないのだ。群れのメスが子を宿し、仔が産まれ、その子たちが既に見た目だけなら親たちに少し小さい感じと、私の体感的に数ヶ月といったところじゃないかな? つまり私も16才(仮)、日本なら結婚可能な年齢になったのだ。合流する日が楽しみなんだけど、ここで気になることもあるのだ。より<気>の高みを求めて周天法や内丹に手を出した辺りから体の日々の好不調や病気等が無くなったのだ。道教や仙道の行き着く先は不老不死、<彼>は例の作品を知ってたにもかかわらず知らない振りをし 私の認識する<気>の知識 とした。もしやコレを狙っていたのだろうか? まあ現状、確認するすべはないし若い状態を保ったまま元父と再会でき、永久に近い時間を共に過ごし共に修行できるのなら、なんら不満はないのだけど。きっといつの日にか分かるんでしょう。






 ……私の服をクイクイッと引っ張る感覚で意識が引き戻される。見ると私と出会ってから産まれた子の一頭が甘噛みで引っ張っていた。元々の群れのオオカミは関係が近づいたとはいえ元が野生、お互い適度な距離感があるのだけど、私とであってから産まれたこの子たちは産まれた時から知っていて食料や病気、怪我の世話をする私を完全に身内と思い、近づくどころか普通にお腹を撫でろと催促したり顔を舐めまわしたり尻尾フリフリとか、私だけならまだしも他の、たとえば猟師にもこの態度で近づかないか、お姉ちゃん心配です。


「どうしたの? なにかあった?」


 私が声をかけると「クウン」と声を出し少し歩くと振り返り、まるで何処かに案内したいみたいな行動をとる。


「ついていけばいいの?」


「ワウ!」


「わかった、行きましょう」


 この子はまだ食事をしていない、にも拘らず私を連れて行こうとするならそれだけ重要なことなのだろう。私がついてくると理解したのか一気に加速し走り出す、私もすぐ後ろについて走っていると到着したのか速度を緩め視線を先に向ける。視線の先にはもう一頭、同じく私と出会って以降に産まれた子が周囲を警戒するようにして佇んでいた。なにかヤバイ魔物でも出たか?と周辺の気配と<気>の反応を探るが特に危険な反応は感じない、と二頭の子が視線を木の根元のほうに向ける。

そこには、まだ一桁の年齢であろう少女、異世界暦数ヶ月で初めて出会う人間が倒れていた……


 即座に近づくと、まずは外傷の確認をするが問題なし。頭を打っている可能性もあるので動かさずに声をかける。


「大丈夫? 意識はあるかな? 返事ができないなら頷いたり目を開けたりできる?」


 私が声をかけるとうっすらとだけど目を開いた、が焦点が定まっていない。


 「意識はあるみたいね、頭を打ったとかどこか怪我をしたとかあるかな? 大丈夫なら瞬きしてね」


 どうやら怪我はないらしい、となると……この唇や肌の乾燥具合は軽度の脱水症状か。


「もしかして喉が渇いて辛いんじゃないかな? 経口ほs……甘いお水飲める?」


 先ほどと違い何度も瞬きをする。やっぱり脱水症状か、ならばアイテムボックスから柑橘類と糖分、塩分を加えた自家製経口補水液のうち、常温のものを取り出す、あまり冷たいのはこんな時お勧めできません。少女の口にスクイズボトルの飲み口を入れ少し流し込むと、カッ! といままで彷徨っていた目に力が戻るとゴクゴクと水分を流し込んでいく。


「もっと飲む? いっぱいあるから安心してゆっくり飲みなさい。急いで飲んだら体がビックリしちゃうわよ?」


 2本飲んでやっと落ち着いたみたいでこちらを見た、途端に何故か硬直して目を見開いてる。


「どうしたの?なにかあった?」


 見た感じこの世界の人間と私に違いは感じられないが何か違いがあるのかと心配したんだけど少女の次の一言で私が完全に固まってしまった。


「……めがみさま?」


「…………」


「……? めがみさま、どうしたの?」


「あ~……私は女神様じゃないよ? 私は空 ソラっていうの」


「めがみさまのおなまえはソラさまっていうの?」


 理解出来ないのか可愛らしく首を傾げて『めがみさまのおなまえはソラさま! ソラさま!』とはしゃいでいる少女の純粋さがツライ……


「いや、あのね? っと、先にあの子たちにご褒美あげなっくっちゃね」


 少し離れた場所できちんとお座りして尻尾をブンブンしてる二頭に食事をせずに案内してくれたお礼を含めてオークの肉を提供する(私はまだオークは試してないけどオオカミの食い付きが違う)

オオカミに気付いた少女が怯えるけど


「大丈夫よ、この子たちはすごく賢くて貴女が倒れてるのも教えてくれたのよ?」


「……いいオオカミさんなの?」


「そうよ、でもオオカミみんながこの子たちみたいないい子ばかりじゃないから、注意してね?」


「うん、わかったよ!」


 オオカミたちが食事を終えるまでに彼女の名前はマイナちゃんというのを聞き、なんとか女神様とソラさまは止めるように説得して『ソラおねえちゃん』に落ち着いた。そしてマイナちゃんも多少不安定ながら動けるようになったのでオオカミの背に乗ってもらいハウスにいどうを開始した。


「もう少ししたら私の家に着くから。そうしたら美味しいご飯をいっぱい食べようね?」


 マイナちゃんはご飯と聞いて喜んでいるが実は食糧を持ってないわけじゃない。ただ彼女はどう見ても栄養が足りていない、髪の色艶もなく頬もこけて腕も細い。どれだけの期間、空腹なのか、また食事していないのか分からない。そんな状態の彼女にペミカンや自家製栄養バーは危険すぎる。カロリーは高いし栄養も高いけど消化がお世辞にも良いとはいえない一品なのだ。アイテムボックスに消化に良い食糧も入れておこうと内心誓っているうちに我がハウスに到着した。


「はい、ここが私の家よ。あなた達も案内ありがとね」


 お礼と、ついでに乾燥肉を渡し大喜びで群れに帰っていく二頭を尻目にマイナちゃんは再び目を見開いて硬直していた、よく驚く子だなぁ。


「どうしたの?さ、ご飯の用意とか他にも聞きたい話もあるから早く入りましょ」


「……ソラおねえちゃんはやっぱりめがみさまでおひめさまなの?」


「そのネタはもういいから……それより!準備やら色々しなきゃいけないから入って入って! あ、土足厳禁だから靴は脱いで入ってね?」


 こうして異世界で初めて出会った人間、マイナちゃんを食事を取らせるため、何故こんな危険な場所に一人でいたのか聞き出すため、そしてなにより……彼女を一目見たときから気になって仕方がなく、どうしても何とかしたいことを何とかするために私のハウスに迎え入れたのだ。


 

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