表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/11

空 異界に立つ ~In My Time of Dying~

正直、サブタイの英語用の洋楽が一番面倒だから今回で止め

 結局そのまま失神、おそらく次の日までぶっ倒れていた。


「やっぱり一筋縄じゃいかないというかすごい難度だわ、コレ……」


 事の難しさに頭が痛いが一歩ずつ進むしかない。


 と、いうわけでご飯食べなきゃ! っそれよりもお風呂! 汗臭い体なんて許せない! そういえば食糧以外あまり確認していない、急いでお風呂場に向かってみる。……ほっ、ウチのお風呂そのものだ。安心してとりあえず着替えと各種ケア用品を確認し入浴することにする。……それにしても魔石だっけ? 電気ガス水道がないのに元の家と同じように使えるなんて、なんと万能な……


「あ~しあわせ……」


 我が家を模したお風呂はバブルジェットとミスト機能付きなので、まずはしっかり温まって全身の毛穴がしっかり開くまでリラックス、リラックスゥ~!

 実は行き先が古代・中世レベルと聞いた時点でお風呂こそが一番重要だったのだ!歴史で学んだ知識だけで実際のこちちの文化水準は知らないが、仮に地球の当時程度の水準なら、公衆衛生も衛生観念も私が耐えられるレベルじゃないと思ったのだ。

 実際いくら失神していたとはいえ入浴もせず寝ていたなんて御神楽 空、一生の不覚!

風呂好きの日本人と違い、母はわりときれい好きだったが英国は文化的にお風呂による身体衛生に興味が薄いのか、シャワーが数日に一度(バスタブに入浴はホント偶に)どころかなんと下着を数日、着用する人が少数とはいえ未だ存在するとか 私、信じられません!


「昨日は入れなかった分、しっかりケアしなくっちゃね~」


 まず、体を顔をしっかり、かつ優しく磨き上げる。この時、私の胸のある邪魔なブツが縮小するように祈りながら洗い、マッサージすることも忘れない。

 次に髪なのだが私の髪はすごく、ホントすごく長い。なにせ足首まであるうえ、ボリュームもすさまじい。

 まだ私が小さい頃に私をお風呂に入れてくれた元父が『う~ん、シャンプーして髪を逆立てたら綺麗な金髪に瞳の色も合わさってまさに超化だな! 足元まで伸ばしたら超3出来るんじゃないか? ボリュームもあるし空は髪が長いほうが父さん可愛いと思うぞ』 この日、私は他の髪型が可愛いと言われる日が来ない限り一生、長髪であろうと決めた。ただ、そのままでは色々不都合なので基本、一纏めにしてゆるふわ三つ編みにしている。よく小さい子が髪をロープ代わりに登ろうとして大変だけど……


 髪質や体質、量やダメージによって違いはあるが私の洗髪はこんなの。まずシャンプーの前にしっかりお湯で洗いそれから頭皮をマッサージするように洗い残しのないようにしっかりと丁寧に、そしてシャンプーの薬剤が残らないようお湯でしっかり流す。頭皮に傷がついたりシャンプーが残ってたらダメージの元なので呆れるくらい丁寧でしっかりやるくらいでちょうどいいのだ。ガシガシやったら後悔するよ?

 そして水気を切ったらトリートメントを半ばから毛先に向かって頭皮につかないように注意して荒めのコームで梳かす。頭皮につくと、せっかくシャンプーをしっかり流してもトリートメントが毛穴に詰まるよ。

 そして指で優しく毛先に揉み込み、シャワーキャップを被り10分ほど放置するのだ!そして根元から毛先に向かって(反対にするとキューティクル開くからNG)すすぎすぎない程度に流してしっかり水切りする。間違っても絞っちゃ駄目よ?

 んで私は長いからタオルで挟み込むよう優しくポンポンッ! でもしっかり水気を取ったら流さないタイプのトリートメントを長さや髪量からみたら え? 足りるの? と思う程度に少量を手にしっかり伸ばし、毛先から順に馴染ませるのだ!

 ドライヤーは(魔石式ドライヤーまであるなんて恐ろしい子!)熱が集中しないようにしながら、まず根元をしっかりと乾かし、そして中間から毛先のほうに乾き過ぎない程度に乾かしましょう。


 お疲れ様でした!


 年齢的にもまだ若いしメイクも特別な時以外は興味ないが、若い頃からある程度キチンとしたケアをする事が10年後の勝敗を決めるのだ! 汗が引くのを待って、化粧水と乳液で済ませる。そしてやっとご飯だ、と食糧その他をキチンとチェックした時、中途半端な絶望が私を襲ったのだ……


 穀物はある。各種調味料があるので味噌や醤油にも困らないのだ! なんと彼が気を使ってくれたのかチョコやチーズといった一部加工品、イースト菌やモルトパウダー、納豆菌まであるじゃない!


 ……でも肉も野菜もないんデスヨネー……あ、冷蔵庫に牛乳あった。ラッキ……


 普通なら調味料や酵母がなくてやきもきするするはずなのに逆ですか、そうですか。


 料理は苦手な方ではないのでバゲット焼いて牛乳とチーズで食べたよ。明日はチョコケーキ焼こうかな……バランスもなにもあったもんじゃないなぁ……


 急いでズレ直して早く食材確保しよう……気絶してる間に過ぎたけど、こんな感じで私の異世界1日目は過ぎていった。


 ……<気>の制御を身に着ける過程で何度も失神や、集中しすぎて徹夜を繰り返したりしたので正確な日数はちょっとわからないが数日でズレは解消し、<気>も幾らかの集中を要するもののなんとか拳に纏わすというか拳の強化までは出来るようになったので、探索と発見できれば食材の確保をしようと異世界滞在1週±5日くらいで遂に外出となった。


 山篭り中なので道着のままでいいか、と服はそのまま念のための食糧やテント等はアイテムボックスIN、ホント便利デスネー。


「さて、なんか見つかったらいいんだけどなんにもなかったら泣けるわね……」


 と、不安視しながらも、いざ探索を始めれば予想は良い方向で裏切られた。やはり地球とは違うのか普通、改良されていない原種は可食部が少ない、味が悪い、ひどい場合は毒があったりするんだけど拍子抜けするくらいにまともな野菜や果物がそこらに自生し、生っていた。なんか季節感というか収穫時期のおかしいものもちらほら見かけるが、そもそも異世界なんだからと言い聞かせてアイテムボックスにぽんぽん放り込んでいく。一応、迷わないように地面に目印を書きながらとはいえ流石に探索初日にベースから離れすぎたな、とここらで切り上げて帰ろうとしたところで見つけた、いや見つけてしまった、斜面の岩肌に出来た洞窟を。


 ここで無視するなり後日探索として、すぐに離れていればよかったのに、僅かな判断の迷いや間違いが生死を分けかねないとこの後、私はいやと言うほど味わうことになる。


「……洞窟?ん~天然かな、人工物って感じじゃないわね」


 眼前にポッカリと空いた洞窟を見つめながら調べてみるかを考える。まあ、何もなかったらそれでよし、何かあったらすぐに離れればいいかと一応の注意はしながら洞窟に近づいてみる、と「っ!なによこれ!ひっどい臭いね……」

 なんというかとにかく臭い! 生臭い……生臭い!? ここで自分の行動の迂闊さとヤバさに気付いた。洞窟で生物由来の生臭さがあるってことは肉食動物、ここが異世界だということは魔物の可能性だってあるのに! もし洞窟の中にナニカがいたらこちらに気付いて出てこないとは限らない、早急に離れなければならない、出来るだけ音も気配も消して。


「最悪ね、自分の迂闊さに嫌気がs【ガサッ】ッ!!」


 洞窟に背を向けないようにしながら少しずつ離れてるその時、背後の木々の向こうからなにかの音が聞こえた。……洞窟に背を向けるわけにはいかないが音の発生源に背を向けている現状も危険にかわりはない、よりにもよって目印の方向からナニカがこちらに向かってくる……逃走は不可能と判断してせめて背後を取られないように岩肌に移動して背中を隠す。ガサガサと草を踏みかき分け向かってきたモノがついに姿を現す。


 それはおそらく3mはあるかという赤鬼、西洋風にいうならオーガ…レッドオーガだった。


 この世界の説明は受けていたしゲームや漫画、アニメ等でオーガだろうがオークだろうが知識はあったが現実にソレが目の前に出ると一瞬、頭が真っ白になるというか目の前の現実を認識できないのか、したくないのか完全に目を見開き動きを止めてしまった。そしてその僅かな隙にこちらに気付いたむこうは一気に距離をつめ手に持った棍棒的な物を振り上げ容赦なくこちらに叩きつけてくる!


「……ッ!!」【ドガッ!】


 すんでのところでなんとか横に回避すると間合いの外に逃れる。できればなんとか逃れたいところだけど相手の身体能力も不明、この山の魔物である以上地の利もむこう、ってか逃走に背中を向けるとか危険すぎる。最悪、洞窟からもう1匹出てきたり別の魔物が出てきたら完全にゲームオーバーだけど現状、絶賛大ピンチ中なので他に意識を割いてもより危険なだけなので完全に割り切って、このオーガに集中する。

 私に一撃を避けられても特に気にしていないのか、はたまたいたぶって遊ぶつもりかは知らないけど不快さを示すでもなく、またこっちに棍棒を振り上げる!少なくとも見えない速さでも反応できない一撃でもない、ギリギリまで引きつけると紙一重で避けカウンターでがら空きの横っ腹に回し蹴りを叩き込む!が


「なっ?!」

 

 よく分厚いタイヤを、と例えたりするけどこれは分厚いなんてもんじゃない、タンクローリーか航空機か装甲車のタイヤかと言いたくなる、蹴った方の足が逆に危険なレベルの感触。しかもオーガと私では自重に絶望的な差がある、蹴りを放った私が逆に弾かれ体勢を崩したところに棍棒が横殴りで飛んでくる!これを一気に沈めて避けるとなんとか再び間合いの外に逃れるが(ヤバイ、せめてアーミーナイフを装備してきてたら……)刃物程度なら許可みたいだったのだが残念ながら手持ちは、摘み取りに使用した小型のナイフのみ、いやたとえ大型の刃物があっても倒せるかどうか……

 ここで、ふと自身の思考に嫌悪を感じる。大口叩いてここに来た挙句に初戦闘から逃走や武器に意識を向ける自分の馬鹿さに。だけど実際問題、あっちは一撃当てれば終わり。こっちは正直、手がない。多分、関節極めても効かない……以前にそもそもサイズが違いすぎて極められないな。

 

 手がないわけじゃない、<気>を纏わせた拳を腹に叩き込めれば少なくともダメージ、上手くいけば倒し切ることすら可能だろう。でもそれには<気>を練る時間が必要だ、果たしてそんな隙が……いや、現状これしか手段がない以上迷ってる暇なんかに、と呼吸を整え中心の<気>の大元から全身に流れる<気>を、その流れが拳に流れるよう、その流れがより太くなるように「ちっ!」やっぱり待ってはくれないか!再び間合いをつめ棍棒で叩きつけてきたヤツに拳を、って、ここで相手も学習したか上からの棍棒を避けた瞬間、横殴りに変化させてきた……結果、私の拳はヤツの腹に掠るに留まり、いよいよ危険が、と思っんだけどなんとヤツから私に距離をとり


「グオ!ガァア!!」


 あきらかに先ほどまでとは違い、獲物ではなく敵として認識した殺気立った視線と声をこちらにぶつけてくる。みるとヤツの腹に掠ったような傷と判り難いけど出血がある! ……しめた、<気>が効果があるとわかった上にこっちを警戒している今がチャンス、そう何度も<気>を使うのはまだ無理だし、溜めが必要とばれたら終わりだ……次の一撃で決める。


 再度呼吸を整え、中心から全身にいきわたる、<気>の経路の流れを拳に集中し、太くし、より澱みなく詰まりなく、小川が集まり大河になるが如く


 焦れたのか、侮ったのか、棍棒を振り上げ必殺の一撃を叩き込もうと近づいてくる。


 ……まだ


 動かないこっちを諦めたのか、力が切れたのかと勘違いしたのか僅かな警戒すら解く


 ……まだだ


 確実に殺す気なのか引き絞るように棍棒を振り上げる……僅かに光る私の拳に気付かないままに


 ヤツのがら空きの腹に、淡く光る拳が吸い込まれていった……






 「……初戦闘からこれとか、先が思いやられるわぁ……」


 肉体・精神的な疲労で全身投げ出して地面に体を預ける私から少し離れた場所に、どっかの初代大魔王よろしく腹に大きい風穴を開けたオーガが目を見開いたまま絶命していた……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ