クジ運最悪な俺。しかし最高を掴む!
俺の特技は、とっても珍しい。
当たりが引けない。という、驚異的なクジ運。99枚の当たりクジの中に、1枚だけハズレクジがあれば、ハズレを引ける。
それだけじゃない。100枚の当たりクジしかない箱を用意すると、俺が触った瞬間に、箱が壊れたりする。ハズレの内容を、実質当たりにしても無駄。無駄無駄! つまり、悪い方に振り分けられる。
他にもある。
高校の時、誰かが面白がって席替えをクジ引きにしたら、とんでもないことが起きた。俺がクジが入った箱に真っ先に手を入れると、手が抜けなくなった。クラスメートは俺を笑い、クジ箱を解体する前に、底に穴を開けた。何故か俺が皆にクジを渡す係になり、クラスはきっちり半分ずつ、男女に分かれた。凄くね? 無論、やり直し。
変なことは他にも沢山ある。
必ず何かしらの商品券が当たります、何て謳い文句に誘われて、クジ引きをすると、手にするのは白紙。開く加工がされてないこともある。まあ、優しめに文句をいうと、大抵何かもらえる。最近だと、コンビニでビール。この手は結構使える。まあ、良心が痛むので程々にしてるけど。
俺はある意味強運。最悪、にポイント振りすぎじゃない?
この超人的とも呼べる能力で、どうやって人生を切り開くんだよ。
誰か、俺に教えて欲しい。
突然世界が破滅! とか魔王が現れた! とか無い世の中なので、俺は平々凡々と暮らし、しがないサラリーマンをしてる。
「あれ? すみません……。機械の調子が……」
さて、ここはショッピングモールの一階。目の前には、若くて可愛い大学生くらいの女の子。3千円以上の買い物をしたらレシートを持ってきてね、クジが引けます、っていうイベントの特設場。
「あー、それ。多分、直らないと思います」
口寂しいし、飴玉一個、そう思ってきただけなのに、今日も俺はハズレなしのクジだと引けない。何なんだ、この力は⁈ 奇妙奇天烈なら、背後にいて、壊した物を治してくれるような奴が欲しい。あと、時は加速する! とかやりたい。
何のことか分からない? 君とは趣味が合わないな。運命の相手じゃなかった。しかし、折角なので連絡先を交換して、歩み寄ろう。大学生? 俺、まだ新卒だから年が近いね。なーんて、くだらない口説き文句を考えていたら、スタッフの子は困った顔をしていた。ヤベッ、顔に出てた?
「あの、大変申し訳ございません」
「え? ああ、よくあるんで気にしないで下さい。飴を貰いにきたんで、こっそりくれません?」
俺は特設場の机に置いてある、飴が入ったカゴを指差した。
「あっ、治りました!」
スタッフの女の子の手の中で、真っ黒だったタブレットが光を放った。画面上で、スロットが回り出している。
「沢山の人に操作されて、疲れたんですかね?」
俺が笑うと、スタッフの子も笑ってくれた。俺は「STOP」の表示のところに、そっと触れた。
「ええ⁈」
「あー……」
タブレットの画面が、いきなりトランプゲームに切り替わっていた。
これってクジ運関係あるの? ハズレが無いなら、引かせない的な? いつもこんな事になる。俺ってドラマや漫画でいうなら、通行人Aなのに、地味で変な事ばかりに遭遇する。
突然の自体に、自分のせい? とスタッフの女の子は焦りと怯えで青い顔になった。
「何か俺、こんな風に機械によくフラれるんですよ」
俺は爽やかな笑みを残し、サッとカゴから飴を手に取って、その場を去った。
後の布石である。
俺はお茶をして、のんびり待った。アルバイトが終わった所を見計らって、スタッフの女の子の近くをプラプラ。目が合った時、俺は恥ずかしそうに、はにかんだ。
この後、どうなったって?
サラリーマンのオアシス土曜日。彼女を失った俺に、新たなる出会い。なんたって、俺は楽しい話題には事欠かない男。
さて、そんなセコい事ばかりをしていた俺。その、かなり未来。気付くのが遅かったけど、積み重なったハズレの分、俺は大成功していった。
俺はアメリカで「謎の大富豪」と呼ばれている。
職場は時代の最先端にして、科学の世を開拓していく研究所。天才と変人に囲まれているが、明るく楽しい仕事場。その仕事、何だと思う?
少しヒントをあげよう。
人工義眼のモニターに触れたら、画面が虹色に早変わり。これって、商品化出来るかな?
訳が分からない地味な能力も、使い方次第ってこと。だって世の中ってのは多少は平等に出来ている。ずっとハズレなんてない。
俺のクジ運最悪な人生は、最高な人生を作った。それはまた、別の機会に語るとしよう。自分語りが長い男はモテない。女が基本的にお喋りだから。これもある意味平等なのか、俺は未だ独身。でも、未来は明るいって信じている。身を持って体験してきたから。
発想を変えて、行動すれば、信じている明るい未来は訪れる。
◇◇◇
ちょっと視点を変えたら世界は変わる。
俺は日々、奮闘中。
親子のサクセスストーリー
「クジ運最悪な俺が作る最高の人生」
お暇な方、良かったらどうぞ。