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宝の正体 5


ひとしきり笑うと満足したのか、キラは仲間達の方へと振り返ったが、そんなキラを心配し海賊の一人は躊躇(とまど)いながらキラに声を掛ける。


「せ、船長?」


「お前等、俺達の捜し物はまだ見つかってない。何一つ終わってないんだ。だからまだ……俺はお前等全員の船長のままだ。これからも着いてきてもらうぞ」


そう告げるキラの顔は自信に(あふ)れ、正に海賊王に相応(ふさわ)しい。


普段の調子を取り戻した船長を見て、海賊達の表情も明るくなり活気を取り戻して叫び出した。


「あっっったりまえだぜ!船長ー!」


「俺達の冒険はまだまだ終わらないってな!」


「あんたが嫌がっても!あんたはいつまでも俺達の船長だ!」


「我等が船長!キラ!!船長も海賊王もあんただけだぜ!」


「…………と、いうわけだ。これからどうします?船長」


仲間達の言葉に満足したガイは、ニヤリとした笑みを浮かべて船長…キラへと尋ねる。


そんなガイや仲間達にキラもまた満面の笑みで答えた。


「決まってるだろ!シャングリラに帰還して宴だ!」


「よっしゃあ!戻って宴だー!……って、船長?今日はなんの宴すんだよ?」


キラの言葉に一度は興奮した海賊の一人が、キョトンとした顔でキラへと聞き返した。


そんな彼に向けてキラは楽しげに答える。


「はぁ?そんなの『念願の宝があると思って探しに行ったけどハズレでした。残念。よし!これからも見つかるまで世界中探してやろう!の宴』だ!」


なんとも間抜けな宴のネーミングに海賊達は声を(そろ)えて大笑い。


しかしそれはキラを…船長を馬鹿にするような笑いでは無い。


「ハハッ!!そいつぁいいぜ!過去最高にダセェ宴だな!」


「ホントにな!こんな宴する惨めでかわいそうな海賊なんざ俺達と船長ぐらいだ!」


「ハズレだったんだからしょうがねぇや!」


言葉は否定的であり全員が大爆笑。


それは彼等もまたキラ同様に現実を受け入れ、吹っ切り、前を向いている証拠でもあった。


仲間の反応に満足したキラは笑みを浮かべたまま蓮姫達へと振り返る。


「当然、今回最大の貢献者(こうけんしゃ)であり功労者(こうろうしゃ)でもある蓮ちゃん達も参加だ!異論は無いよな?」


ニヤ…と悪そうな笑みを浮かべるキラに、蓮姫もまた楽しげな笑みを返した。


「勿論。そんな過去最高に楽しそうな宴、参加しない理由無いもんね」


「ははっ!だろ?」


「うん!それに……実はシャングリラにはもうちょっとお世話になりたかったの。介抱(かいほう)したい人もいるし……落ち着いた場所で聞きたい話もあるから」


チラリと未月の方へ視線を送る蓮姫。


その視線でキラは誰の事について話しているのか、瞬時に理解する。


「あの男か。でもいいのかい?奴は君や彼を本気で殺そうとしたんだろ?」


「だからこそだよ。勿論、キラやシャングリラの人達には迷惑かけないようにする。ううん。約束する。だから」


「オーケー。皆まで言わなくていいよ。君は俺達の恩人なんだ。迷惑なんて思わない。好きなだけゆっくりしていってくれ。寝床も食料も気にするな」


「っ、ありがとう。キラ」


「それに謝礼だって渡さないとな。シャングリラに戻ったら宝物庫に案内するから、約束通り好きなだけ持ってってくれ」


「マジで!?」


「いいの!?」


「ヤッターーー!!」


キラの言葉に反応したのは火狼、残火、星牙の三人。


最初キラからその提案があった時と同じように、歓喜の表情を浮かべながら興奮している従者二名と友人一名に蓮姫は慌てる。


「ちょ、ちょっと皆!落ち着いて!それにキラ!私そんなの貰えないよ!」


「「「えーーーーっ!!!?」」」


蓮姫の返答は三人にとって意外すぎるものだったが、今までの流れを考えれば蓮姫の言葉は至極(しごく)真っ当なものだ。


まだ何か言いたげな三人に対して蓮姫は呆れつつも苦言……いや、正論を口にした。


「キラ達の探してる宝は結局ここで見つからなかったんだよ?それなのに私達だけ宝を貰うなんておかしいでしょ?」


「いや。そんな事は無い。蓮ちゃんは約束通りこの神殿の結界を解いてくれた。宝がここに無いって分かったのも蓮ちゃんのおかげ。希望はまだあるって気づかせてくれたのも蓮ちゃんのおかげだ。俺は船長として、海賊王として、何より一人の男として、可愛く勇敢(ゆうかん)な君に礼をしたい」


そうウィンクしながら告げると蓮姫へと近づき、ごく自然な仕草で彼女の手の甲を取って口付けるキラ。


宝を渡す理由や礼というよりは口説いているようにしか見えない。


これは本気ではなくキラ流の挨拶だと頭で理解しようとする蓮姫だったが、照れから若干頬を赤く染め、強くは言えなくなる。


「で、でも……」


「ほらほら~!船長さんもこう言ってんじゃん!有り難く頂こうぜ!姫さんっ!!」


蓮姫が押され気味なのをいい事に、興奮気味で喋る火狼。


後ろでは残火と星牙が目をキラキラさせながら『うんうん!』と大きく頷いていた。


そんなあからさまな彼等を見て当のキラも『プッ』と吹き出してしまった。


「ククッ……と、とりあえずシャングリラに戻ったら、宝物庫には案内させてもらうよ。宝の数々を見れば気持ちも変わるかもしれないからね。……さて」


蓮姫が頑固に宝は受け取れないと思っているように、キラもまた絶対蓮姫達に謝礼はするという頑固な姿勢を崩さない。


そしてこの押し問答を早々に切り上げる為にも、キラは部下達に向けて声を張り上げた。


「野郎共!俺達のシャングリラに帰還するぞ!」


「「「アイアイサー!!」」」


船長であるキラの一声で、全員はシャングリラへと帰還する為、この広間から一人、または数人で魔法陣を使い去って行く。


「ほら!弐の姫の嬢ちゃん達も船に戻るぞ!」


「は、はい!皆、行こう!」


蓮姫達も海賊に(うなが)されるまま魔法陣へと足を踏み入れる。


未だ眠るツルギは、あのガイが未月の代わりに肩に担いでくれた。


それぞれ談笑したり、仲間の無事を喜んだり、心配したりと騒がしい面々。



ただユージーンだけは魔法陣で転送される瞬間まで何一つ言葉を発さず、あの崩れた巨大魔法陣を見続けていた。


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