かぐや姫 1
かぐや姫 1
朝食を食べ終わった後、蓮姫達は予定通り都へと足を運んでいた。
「…へぇ~。まるで映画やドラマのセットの中にいるみたい」
キョロキョロと周りを見渡しながら歩く蓮姫。
そしてそんな彼女を守るように、固まって歩く従者達と残火、そしてその他一名。
今まで王都や城を歩き、蓮姫が『撮影現場に迷い込んだようだ』と思った事は何度もあった。
しかし、大和の都はその中でも特に異世界に迷い込んだ感覚や、タイムスリップしたかのような錯覚に陥りそうになる。
今まで洋風や中華風の街並みばかりだっからこそ、余計に。
「え、えいが?」
「あ、気にしないで下さい。梅吉さん」
蓮姫の言葉の意味が理解出来るはずもない梅吉は、ただ首を捻りその意味を考える。
蓮姫は苦笑しながらも彼に優しく話しかけた。
何故、蓮姫達と一緒に梅吉まで都に来ているのか?
「でも…本当に良かったんですか?着物を借りただけでもありがたいのに…梅吉さんに都の案内までさせて」
「そ、そんな!お姫様にんな事言ってもらえて…おらの方がありがてぇです!それに!お姫様方を案内しろっつのは、御館様の命でもありますだ!」
「本当に何から何まで…ありがとうございます」
「い、いえいえいえ!お、おらの方こそ、ありがとうごぜぇます!」
「姫様。そのやり取り、キリがないのでそろそろやめませんか?」
「そうそう。お互い感謝を持つのは大事だけどよ。区切りをつけんのも大事よ~」
ユージーンはため息をつきながら、火狼は両腕を頭の後ろに組みながら蓮姫達へと声をかける。
「す、すんません!おらまたやっちまっただか!?」
「大丈夫ですよ、梅吉さん。そんな畏まらないで下さい」
「だ、だども…大事なお姫様に失礼があっちゃ…ダメですだ。や、やっぱり牛車をどっかから借りて…」
「梅吉さん。本当に気にしないで下さい。牛車なんて勿体ないですよ。それに歩いた方が都をよく見て回れますから」
「だ、だども…お姫様にそげな粗末な着物ば着せて…歩かせるなんざ…本当にいいんですだか?」
梅吉はチラリと蓮姫、そして彼女の従者達を見やる。
あの後…翁と梅吉は、それはもう両手で抱えきれない程の着物を持って部屋に戻ってきた。
翁が選んだ着物(元々はかぐや姫の物だろう)は派手な色や、豪華な刺繍が施された物ばかり。
ニコニコと蓮姫に勧める翁の姿は、まるで孫に成人式の着物を与える祖父のようだった。
しかし蓮姫が選んだ着物は色こそ上品な若草色をしているが、柄は殆どなく小花が裾に少しあるだけ。
貴族の姫が着るには質素で地味な代物であり、むしろ年配の女性の方が身に纏いそうな着物だ。
翁は「遠慮なさるな、蓮様」と他のものを幾つも薦めたが、蓮姫は結局その地味着物を譲らなかった。
ちなみにユージーンは薄い紺色の着物、火狼は茶色と白の縞模様とこれまた地味なもの。
未月は濃緑で少し目を引く着物を着ているが、ちなみにコレを彼に選んだのは蓮姫だ。
「本当にいいんです。この着物…まぁ浴衣みたいだけど…歩きやすいですし。元々そんなに派手な服って好きじゃないんです」
「だ、だども…貴族のお姫様なら…十二単ば着て…牛車に乗って移動するもんですだ」
「姫様は大和の姫じゃないからな。姫様が良いと言ってるんだ。お前も下男なら上の人間の言葉に従え」
「あ、す、すんません!また失礼な事言っちまっただか!?」
ユージーンの指摘に、慌ててペコペコと勢いよく何度も頭を下げる梅吉。
蓮姫はそんな彼の様子にクスリと笑う。
「梅吉さん。そんなに謝らないで下さいよ。気にしすぎです」
梅吉の肩に触れニコニコと微笑む蓮姫。
そんな彼女を見て、火狼とユージーンは彼女に聞こえないよう小声で話す。
「姫さん…また無理して笑ってんな」
「あぁ。俺達や何も知らない梅吉に心配かけたくないんだろ」
「なんで姫さんばっか…嫌な思いしなきゃなんねぇのかね。弐の姫だから…って言っちゃえば、それでおしまいだけどさ」
「…胸くそ悪い話だが…それがこの世界の真理だからな。…だからこそ…姫様はそれを覆さなきゃならねぇ」
「言うは易く行うは難し…ってね。旦那もわかってんだろうけど…そんな簡単じゃねぇよ?」
火狼は未だ梅吉に微笑む蓮姫を見て、悲しげに目を細める。
「今までたくさん傷ついてきた姫さんが、もっともっと傷つく事になる」
「それでも…姫様は歩みを止める事はしない。だからこそ…姫様は守る価値のある……いや、従者が守りたいと思う…そんな方だ」
迷いなく呟くユージーンの横顔を見て火狼は息を呑む。
この男は本当に蓮姫を…弐の姫に心酔しているのだ、と。
火狼はピュ~、と口笛を吹きながらニヤける。
「ホンット…旦那っていい男~」
「……お前、マジで気持ち悪い」
「なによぉ!旦那のいけずぅ!」
「……そうやって本心隠して…普段通り振舞ってるのが気持ち悪いんだよ」
全てを見透かしているような目で自分を見つめるユージーンに、一瞬呆気にとられる火狼。
だが意地の悪い笑みを浮かべると、頭の後ろに組んでいた手を外し、胸の前で組み直す。
「……あ~らら。ホント旦那っば、いつも辛辣ですこと。でもさ…それって姫さんと同じじゃん?」
「姫様と一緒にすんな。お前の場合は…本心を隠して良からぬ事を企んでる…違うか?」
「うん。旦那ってやっぱ鋭いよ~。俺が嘘つきだから警戒してるってのも、賢明な判断だと思うし。でも大丈夫。俺はなんにもしない。残火を無事、解放してくれるなら…ね」
火狼は笑みを絶やさない。
だが彼の目は笑ってはいなかった。
残火を助けてくれた事には本当に感謝している。
しかし…彼女が本当に解放されるまで、火狼も安心はしていないらしい。
「心配すんな。俺の魔術は完璧だからな。姫様があのガキを裁かないなら…俺もそれ以上はしねぇ。……今は、な」
「そうね。その言葉を信じるよ。信じるしか…出来ないしね」
「そうだろうな。変な素振りでもしようもんなら…その時は俺も、何するかわかんねぇからな」
「姫さんの命令無視する気~?やめてよ。優しい姫さんの気持ち無視するなんて…らしくないよ、旦那」
「お前が俺や姫様を語るな」
お互い見つめ合う……いや、さぐり合う様な目線を交わす二人。
蓮姫はユージーンの事も、火狼の事も信頼し、信用している。
しかし、ユージーンと火狼はお互い信用などしていない。
それは二人とも相手の気持ちに気づいているし、理解もしていた。
「ジーン!狼!二人とも何してるの?置いていくよ!」
先を歩いていた蓮姫が声をかけると、ユージーンと火狼はニッコリと笑顔を浮かべ主へと向けた。
「申し訳ありません、姫様」
「今行くよ~。麗しの姫さんや~」
それは普段と変わらぬ表情。
いつも蓮姫に向けている笑顔。
何事も無かったように彼等は揃って主の元へと駆け出した。
「お待たせ致しました。それで姫様…これから何処へ参りましょう」
「姫さんの行くとこなら、何処だってついてっちゃうよ~」
ニコニコと自分に話しかける二人に、何処か不自然さを感じる蓮姫。
追求しようともしたが、ユージーン達が離れている間に決まった予定を優先する事にした。
「梅吉さんとも話していたんだけど…梅吉さんも都に来るのは久しぶりなんだって」
「へ、へぇ。都に暮らしてんのは貴族様や武士様、商人ばっかですだ。おら達庶民は大きな買い物や、物を売る時しか都にゃ来ねぇんです」
「でね、折角都に来たんだから…梅吉さんからかぐや姫に、何かお土産を買いたいらしいの」
蓮姫の提案に梅吉は顔を真っ赤にしながら、モジモジと指をいじり出した。
「そ、そなんです。だ、だども…おらなんかが…買った土産…か、かぐや様…喜んで…くれっだろか?」
「大丈夫ですよ!梅吉さん、自信を持って下さい!」
「ですが姫様は…都を見て回りたいのでは?」
ユージーンの正論に、梅吉の赤かった顔は瞬時に真っ青に変わる。
本来、梅吉は蓮姫達に都の案内をさせる為に同行しているのだ。
自分の買い物に付き合わせる為などではない。
「そ、そだ!おらの買い物に…お姫様達…巻き込む訳にゃいかねぇですだ!」
「いいんです。都にどんな物が売っているのか私も見たいですし。それに昔、聞いた事があります。『その土地を知りたければ先ずは市場に向かえ』って。市場はその土地の習慣や人々の様子が一番わかる場所らしいですから。私としても市場に行くのは助かります」
蓮姫はかつて想造世界で聞いた言葉を思い出しながら梅吉へと告げた。
そんな蓮姫の言葉に火狼はウンウンと頷く。
「ふんふん…そうね~。そう言われると…姫さんの意見も間違ってねぇわ。いんじゃね?姫さんも女らしく買い物出来るしさ」
「女らしくは余計。…でも確かに、私もお買い物したいんです。だから…行きましょう、梅吉さん」
「は、はい!ありがとごぜぇます!お、おら…お姫様がしてる耳飾りみてぇな、立派な物さ…かぐや様に贈りてぇだ!」
「っ、…そう…ですね。…一緒に素敵なお土産を探しましょう」
何も知らないからこそ梅吉から放たれた言葉は…蓮姫の胸を激しく締め付ける。
蓮姫は梅吉に微笑むが、無意識に右手で右耳を触った。
今、梅吉に指摘された…レムストーンのピアスを隠すように。
余計な一言を放った梅吉を後ろから睨みつけるユージーン。
背中に強烈な寒気を感じた梅吉が慌てて振り返る。
しかし梅吉が見た時には既に、ユージーンは人当たりの良い笑顔を貼り付けていた。
何処か釈然としない気持ちのまま、梅吉は一行を市場へと案内する。
しばらく大通りを進んだ後は、小さな碁盤目のような街中へと入っていくと目的地は直ぐだった。
「こっちです。ここさ曲がったら……あ、あそこですだ!あれが市場でごぜぇます!」
梅吉に案内され広い通りへと出た蓮姫達の目には、道の左右に連なる露店が映る。
「ありがとうございます、梅吉さん。たくさんお店があるんですね。食べ物に…生地に…装飾品…食器まで」
「へぇ!ここは大和一の商いの場ですだ!」
「お~…いいじゃんいいじゃん。これだけの店があんなら、姫さんも買い物のしがいがあるっしょ!」
「……そうね。まぁ、買い物したくても…お金……無いんだけどね」
呑気に告げる火狼に蓮姫はジト…とした目付きで答える。
その言葉に自分達の状況を思い出した火狼は愛想笑いで誤魔化した。
「あ、あはははは~。でもまぁ…買うのだけが買い物じゃないし。うん。品物見るだけも買い物の醍醐味だって」
「ソレもはや買い物じゃねぇよ。ただの冷やかしだ」
「旦那~、いらん正論なんて今は求めてないんだけど」
「へぇへぇ。それはすみませんでした。…姫様…あちらの露店なんてどうですか?」
火狼に謝る気の無い口だけの謝罪をすると、ユージーンは蓮姫をある店へと誘導する。
その店は女性が好きそうな装飾品の露店だった。
「いらっしゃい!なんだなんだ?随分と綺麗な旦那にお嬢さんだな」
「お褒め頂き光栄です。少し商品を見せてもらいますよ」
「どうぞどうぞ!こんなべっぴんさん達なら商品も喜ぶってもんさ!なんならおまけしてやるよ!」
店主と和やかに会話するユージーンを見て蓮姫は、まるで人当たりの良い仮面を付けているようだ、と普段の彼との違いに感心しつつも呆れる。
「ほら姫様。この店は螺鈿細工を扱ってるようですよ。姫様も女性ですから、こういうきらびやかな物はお好きでしょう?」
「さっきから女らしくとか、女だからとか…一々嫌味に聞こえる」
「犬と違って俺は嫌味じゃありませんよ。そんな事より…ここの商品は良い物ばかりです。見て損は無いかと」
「螺鈿って確か……貝だよね。確かに綺麗だけど」
蓮姫はチラリと台に並ぶ商品を見る。
確かに美しいものばかりだし、蓮姫もこういった装飾品を眺めるのは正直好きだ。
あれも綺麗、これも素敵、と目移りしてしまう。
そんな彼女の代わりにユージーンが商品の一つを手に取り蓮姫へと見せた。
それは螺鈿細工のピアス。
「コレなんてどうですか?少し派手ですが、動く度にキラキラと耳元で反射するのは美しいと思いますよ」
「え?…どうですか?って言われても…」
「あぁ。あまり派手なのは好きじゃないんでしたっけ?それじゃあ……こちらの真珠が付いた物はどうです?上品な作りですからお嫌いではないでしょう?」
「いや…確かに好きだけど…そもそもお金が無いし…」
「金の心配はいりません。所持金で買えるような物ばかり選んでますから」
所持金や今後の事を考えて遠慮する蓮姫だが、ユージーンは笑顔でそれに答える。
「心配いらないって言うけど…今後の事を考えたら」
「今後の事なんて後でいくらでも考えられますよ。そうだ。こっちの赤い物も素敵ですね。姫様に似合いそうだ」
そう言って彼が新たに持ったのは赤い螺鈿細工のイヤリング。
それを見て…蓮姫はユージーンの意図に気づいた。
ユージーンは先程から耳飾りばかりを蓮姫に勧めている。
それを意味するのは…。
蓮姫は一度深呼吸すると、ユージーンを見据えて自分の嘘偽り無い気持ちを告げた。
「ジーン。本当にいらない。私は今のままでいい。代わりの物なんていらない」
蓮姫の言葉にユージーンも貼り付けていた笑顔を消した。
ため息を吐くと不服そうに蓮姫へと尋ねる。
「……どうしてです?そんな物…もう必要無いじゃありませんか。いっそ捨てて、新しい物を身につけるべきです」
ユージーンが言う『そんな物』とは、かつてレオナルドが蓮姫に送ったレムストーンのピアスのこと。
それはレオナルドからの愛が込められた贈り物。
ロゼリアでピアスの本当の意味を知ってから、彼女はそのピアスを常に付けていた。
当然、彼女にとってそれがどれだけ大切かは、ピアスの意味を教えたユージーン本人が一番良く理解している。
「私はコレを捨てるつもりなんて無い。このピアスは…大切な…私の宝物なんだから」
蓮姫は片手でピアスを触りながら、ユージーンへとキッパリ断りを入れる。
その言葉はユージーンにも予測できた。
しかし面と向かって言われると面白くないのか、ユージーンは馬鹿にしたように鼻で笑う。
「宝物…ですか?本当に?…まったく…姫様は何処まで自分の気持ちを偽れば気が済むんです?」
「……どういう意味?」
「言葉通りですよ。そのピアスに触れたり、鏡で見る度に姫様は、元婚約者殿を思い出し胸を痛めるでしょう。ついさっき梅吉に指摘された時のようにね」
「……………」
確かにユージーンの言う通りだ。
今まではピアスに触れたり、鏡で見る度に蓮姫の心は愛しさで満たされた。
愛されている喜びが湧き上がった。
しかし…レオナルドが婚約を解消したと聞いた今となっては、そのピアスは蓮姫の心を傷つける物へと変わってしまった。
ユージーンの言葉は事実。
蓮姫は何も返す事は出来ず、ただ俯いてしまう。
流石に言い過ぎたか、とユージーンはため息をつくと、蓮姫の頬に手を当てて顔を自分へと向けさせた。
「姫様が傷つくくらいなら、そんな物…身につけてほしくないんです。ピアスがお好きなら俺が姫様に似合う物を贈ります。この店に無いのなら他を探しましょう。高値の物だろうと姫様の為に手に入れます。貴族が付けている物が欲しいなら、そいつを殺してでも姫様に差し上げます」
「……最後のはやめて」
「例えですよ、例え。でも…姫様の為なら…俺はなんだってしますよ」
柔らかく微笑むユージーンからは先程までの嫌味は感じられない。
蓮姫の頬に触れる手はとても優しく、まるで彼女の悲しみまで包み込もうとしているかのよう。
蓮姫だって最初から気づいていた。
ユージーンは蓮姫を悲しみから救いたくて、わざと代わりのピアスを贈ろうとしているのだと。
これは彼なりの優しさなのだと。
「…姫様…俺だって……姫様を大切に想っているんですよ」
悲しげに眉を寄せて呟くユージーン。
普段の傲慢さとはかけ離れた彼の表情に、蓮姫は心が痛む。
ユージーンにこんな顔をさせているのは、他ならぬ自分なのだから。
「…ジーン……私は…」
蓮姫がユージーンへと声をかけたその時…。
「てぇへんだぁ!てぇへんだぁ!」
市場の奥から騒ぎ立てる人物が現れた。
その人物に蓮姫とユージーンは勿論、近くで露店を見ていた火狼達、いや…市場中の人間が注目する。
「な、なに?」
「……さぁ?とりあえず大変なんでしょう」
「答えになってないから」
「すみませんね。答えなんて知りませんし興味無いので」
蓮姫の言葉を遮られた事でユージーンは普段の彼へと戻っていた。
そんな彼にクスリと笑うと蓮姫は彼の手を引く。
「行ってみよう」
「姫様~?本当に俺との約束守る気あるんですか?」
「ちょっと気になるだけだから。お願い」
「…まったく……仕方ありませんね」
ユージーンは蓮姫の手を握り直すと、手を繋いだままその人物の元へと近づく。
蓮姫達が歩き出した時には、既に彼の周りには野次馬が出来ていた。
野次馬の数は段々と増え、騒いだ張本人は既に見えない。
蓮姫は仕方なく、野次馬の一人に声をかける事にした。
「すみません。何かあったんですか?」
「いやはや。かぐや姫に求婚した公達の一人、倉持の皇子様が、姫の望みの品を持ち帰ったそうだ」
「っ、本当ですか?」
驚く蓮姫に他の野次馬達が口々に答える。
「本当らしい。先程大和に戻った倉持の皇子様は、この事を大々的に告げなから竹取の翁の館に牛車で向かっているとか」
「これでかぐや姫は、倉持の皇子様の妻の一人となるだろうな」
「無理難題に応えたんだ。かぐや姫も断る事はしまい」
笑いながら賑やかに噂する野次馬達。
蓮姫がチラリと後ろを振り返ると、そこには顔を真っ青にした梅吉の姿があった。