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0. prelude
初投稿ですので、どうぞお手柔らかに。
ここは書の国。
魔法もなく人外者もいない、灰色の石と硝子の四角い塔が連立する、機械仕掛けの国。
そして、ありとあらゆる世界から物語的な者を集め、その物語を剥ぎ取り収集する、最も残忍な国。物語を剥ぎ取られた者は、漂白されて書の国の住人となり、誰かから剥ぎ取られた物語を心躍らせて読んでいる。そうして、今度は物語を剥ぎ取る側に回る。そんな世界。
だから、その本を、自分自身から剥ぎ取られた物語を見付けたのは偶然だった。
古い図書館の書架で見つけた対の本は、布張りに金の箔押しでそれぞれの題名が記されている。
分厚い方の一冊は武器と石炭。そして数頁しかない短編のものが、クリスマスの王様。
「…………武器と石炭。……え?石炭?」
けれどもまずは、自分の本のタイトルの面妖さに首を傾げたのは言うまでもない。
奇跡的に見つけ出した自分の物語。どんな素敵な物語なのだろうと、胸を弾ませ手に取った瞬間の喜びを返して欲しかった。