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LAST-ZERO-  作者: 新門JACK
01 田中悠介
3/10

03 コドク

 ラーメン大盛りを完食した後、駅で千秋(ちあき)と別れる。

 何でも彼女のためにクリスマスプレゼントを買いに行くらしい。一緒に買いに行ってあげようか? とからかってみたものの、恥ずかしいからと断られてしまった。

 千秋の彼女ってあの子だよな……。

 黒髪でボブで結構レベルが高かったような覚えがある。ここらではお嬢様学校として名の通ってる白百合女学院だったはず。そこは制服も古風なセーラー服で女子もレベルが高くて、千秋と俺が通っている男子校の奴らから見れば女神的存在。


 本人は知らないが、そんな女神を彼女にするなんてっ!と一部の男子から一目置かれているのを俺は知っている。対する俺は……言わなくてもわかるだろう。いわゆる年齢イコール……というヤツだ。


 外見は中の上、知能は上の下、身体能力は……下の下の俺。

 こんな中途半端なやつが男子校にいたら女子にモテるわけもなく、バレンタインに貰ったことのあるチョコレートはfromマイマザーだ。クリスマスなんかなおさら教会の鐘が打ち鳴らされるのを聞きつつ、冬期講習。


 ……別に俺は彼女がいなくても全然気にしない。

本当に気にしてない。大学で作ればイイ話だ。


 ケッと思いつつすっかり暗くなった道を歩く。

 俺にとって家は寝るだけの場所だ。どんよりとした重い気持ちを抱えつつ、田中の表札が付いた家の門をくぐる。


「……ただいま」


 一応毎回そう言ってるけど、返事が返ってきたことは皆無。

 電気も何も付いていない。人の気配すらない。暗いリビングの電気を点けようと手探りでスイッチを探し、照明を点けるとそこには独りで過ごすには持て余す空間が広がっていた。


 いつものことだから寂しくも何ともない。それでもやっぱり。


「比べちゃうよな」


 他の家の子が長期休みに旅行に行った、とか誕生日にプレゼントを貰った、とか聞くと。小さい頃は心がざわついて仕方がなかった。今では学校に行く金を出してくれるだけでも有り難いと思っている。

 冷蔵庫から炭酸水を飲もうとペットボトルを取り出すが、残り僅かなことに気が付いて舌打ちをしたい衝動に駆られる。明日は塾で帰りも遅くきっとコンビニに立ち寄る元気もないだろうから今買い足しておくか。

 制服のままブレザーのポケットに財布を突っ込んで夜のコンビニへと繰り出した。それが最後になるなんてこの時は思いもよらなかった。


「……さみぃなぁ」


 コートくらい着てくればよかった。コンビニに寄るついでに夜食も買っておこう。手をすり合わせて寒さに凍えながら早足で夜道を歩く。


「……今日は満月か」


 ふと見上げた先には神々しいほどに美しい月が街を照らしていた。

 ……嫌な予感。急にゾクゾクと背中に悪寒が走る。振り返って辺りを注意して見回すが誰もいない。


 ……さっさと帰ろう。それがいい。


「っらっしゃせー」


 やる気のない金髪頭の店員が俺を出迎える。

 足早に目的のコーナーに向かってカゴに2Lの炭酸水を数本、ポテチを数袋、チョコレートをかごに入れてレジに向かい、会計を終える。5分もかからなかった。


「っざいましたー」


 略すなよと思いつつ、店の外に出る。

 やっぱりさっき感じた悪寒は拭えない。風邪でも引いたのかもしれない。


 最初は歩いていたけど、気が付いたら走っていた。

本能が急げ、と告げている。無性に走らなきゃいけないような気がしてラスト家まで一直線の道へと全力疾走で曲がった。












____はね飛ばされた。


 人ってこうも綺麗に宙を飛ぶものなのか。

 景色がひっくり返る中、呑気にそんなことを考えた。一瞬一瞬が鮮明に自分の目に写る。衝突したトラックが慌てて夜に似つかわしくないもの凄い音を立てて急停止する。


 ……俺は、死ぬのか。

 

 そう自覚した途端に灼熱の痛みが身体に襲いかかった。


 ____イタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタいイタい_____


___誰かたすけて。


 まだ、死にたくない。


 まだ死ねない_____________


 バラバラ。


 バラバラだ。


 痛みで思考がまとまらない。


「ああああああああああああああああああああ」


 そう叫ぶ声は俺のものか。


 くそ……。


 そして俺は意識を失った(ブラックアウト)



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