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LAST-ZERO-  作者: 新門JACK
01 田中悠介
2/10

02 ミライ

主人公の過去。高校生時代です。世界観は現代と大して差はありません。

「……うーーん……どうしたの?田中くん。夏休みサボっちゃった?」

「……いえ、ちゃんと勉強してました」

「D判定かぁ。 一年前だったら全然大丈夫だったんだけど、今この時期Dだと君の志望してる大学は難しいかも。 こんなこと言うのは心苦しいんだけど、一つランク落としてみない?」



 高校生最後の夏が終わった。

夏に受けた模試を片手に担任にこんなことを言われる始末。悔しさと虚しさで心が折れそうになる。


___俺は勉強した。


 食事とトイレ以外の全てを勉強に費やした。

なのにコレ。この結果。なんなんだよ…なんで?

 模試の結果は相対的に出ることくらいわかってる。俺がいくら勉強して臨んでも他のヤツが俺より出来た。それだけだ。俺の能力の限界か。俯いて何も喋らない俺に担任が声を掛ける。


「田中くんの目指してる大学からワンランク下げでも十分世間では名門認定される大学だし、少し考えてみようか」


 この先生は安全志向で有名な先生だ。

 受かるか五分五分だったらすぐにランクを落とせと言われたと先輩が言っていたことを思い出す。彼は模試返却後に成績爆上げして見事に第一志望し合格した。


「……T大学じゃないとダメなんです」

「うーーん……ってあれ、ちょっと田中くん!」


 もうこの女の声は聞きたくない。

 勝手に席を立つと、俺は面談室から退出した。後ろでギャーギャー女が喚く声がした。





 廊下に出るとそこに坂田千秋(さかた ちあき)が壁に寄っかかって、俺に気が付くとヨッと声をかけてきた。千秋は幼い頃からの付き合いで、かれこれ10年くらいになる。


「ああ、千秋……」

「飯でも食いに行かねえ? 丸ごと次郎が最寄りにできたからさー」

「ああ……」


 俺は力なく頷いた。

 きっと千秋は俺が元気ないことを見抜いている。そして敢えて触れないでくれる。無神経に見えて実はよく気が付く。千秋はそういうヤツだ。


 一旦教室に行って自分たちの荷物を取りに行く。

 校門の外に出るまで俺たちは何も言葉を発しなかった。外はもう薄暗くなり始め、街灯がちらほらとつき始めていた。


「……なあ、悠介(ゆうすけ)

「なに?」


 制服のポケットに手を突っ込んで歩きながら千秋が問う。

いつになく真剣な顔だった。


「将来何になりたい?」

「何だよ急に」


 俺たちの横を自転車が通り過ぎる。


「俺はJSSに入局して捜査官になりたい」

「……お前らしいな」


 昔から千秋は刑事ドラマとか英雄物語が好きだった。『犯人はお前だ!』と言われたことは数え切れない。きっと千秋ならなれるだろう。口に出して言ったことは必ず実現させてきたのをずっとみている。


 ……なんだか虚しい。

 過ごしてきた月日は同じなのに中身が全然違う。俺は、カラッポだ。


「……考える余裕ないわ」


 模試の結果も悪かったし。

勉強しか出来ない俺に勉強を取り上げたら何もない。


「まあ、俺は宣言しただけ。悠介に宣言すると不思議となれるような気がしてくるから。……あ、ここだよ。ここ。丸ごと次郎。今日は開店サービスで300円でラーメン大盛り食えるぞ」


 千秋が先にラーメン屋の暖簾をくぐる。その後ろ姿を直視出来なかった。千秋は俺には眩しすぎる。


「……悠介?」

「わりぃわりぃ」


 慌てて千秋の後を追ってその暖簾をくぐった。

その日食べたしょうゆラーメンは今までで食べたどのラーメンよりも美味しく感じた。








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