01 イマ
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薄暗く陰湿な雰囲気の漂うJSS局内で噂される人物がいた。彼が無表情にただ廊下を歩くだけで自然と人々が彼のために道を空ける。
なんとなく人を寄せ付けない感じが彼の周囲には漂っていた。
”最終戦”を知らぬ新人たちが彼の姿を見て興奮し、噂する。
「____あの人が”LAST-ZERO”だって」
「あの人が……意外と普通なんだね」
「馬鹿言え。あの人がいなかったらとっくに日本なんか滅んでたぞ……」
「今頃、∞の天下だったぜ……恐ろしい」
「でも噂によるとその”LAST-ZERO”も奴らの仲間だったらしいじゃないか」
「それ、本当なの? もしそれが真実なら今ここにいないでしょ。上が許す訳ない」
彼はそう皆が自分のことを噂するのを知っていた。フッと自嘲気味に笑う。
___確かに自分は裏切り者だ。それは誰が何と言おうとも自覚している。でも、そんなことはどうでもいい。
彼はタンタン、と音を立てて錆びかけた鉄板でできた階段を登る。ざらざらとした感触の壊れ欠けた手すり。それを改修する余地もない局の傾いた財政。
しかし、人々の表情には絶望ではなく、これから始まるであろう新時代への希望の方が大きかった。
屋上へと出る扉を開いた途端、凄まじい風が彼に襲いかかる。それを気にすることなく歩みを進め、何もない屋上の中央へと向かう。
そして天を仰いだ。ここから見上げる空の色はあの頃と変わらず青い。
哀しくなるほどに青い……。
「……北条一佐ここにおられましたか」
「……星野二尉何か用でも?」
声のする方を振り返ると、彼女が屋上の扉付近で仁王立ちしていた。星野美玲二尉。28歳。彼女もまた最終戦時代には局内にいなかった新世代だ。
額に青筋を浮かべながらカツカツとヒールを鳴らして彼に近づく。
「幹部会議があるのをお忘れですか?」
「そう言えば今日だったね……あはは」
「笑い事ではないです!毎回貴方を探しに行く羽目になる私のことも少しは考えて下さい」
「ごめん……今から行くよ」
「貴方の謝罪は信用なりません。いくらJSSの特別功労者だろうとも約束を破るのは私が許しません」
プクッと頬を膨らませて星野は早く行け、と北条を促す。
僕の方が年上なんだけどな……。年上らしいところなんてないからパートナーである彼女に完全に尻に敷かれている。
別にそれでもいい。せめて今だけはのんびりと何にも考えずに日々を過ごしたい…。
「北条一佐早く」
星野に再度催促され、北条海斗は屋上を後にした。
____2XXX年。
医療技術は限界に達していた。
延命措置は出来ても、それだけ。
ベッドにろくに動けずにいつ訪れるかわからない”死”を待つだけに人々は満足出来なかった。
もっと”生きたい”
たかだか80年の命だけでは到底足りない。そうして考案されたのが新薬『ZERO』。ある研究医によって秘密裏に開発された体内活性化薬だった。