第2話 総煌の來碼
希麟館の中。
狗零徒見習いの豪舞は、正規希麟児以外の麟道師と共に特訓を続けていた。
その特訓を外から見守っていた館主であり、彼ら少年たちを集めた本人……來碼。
特訓中は、正規希麟児たちは、数回も現れてきた凶麟の兵士たちと対峙で出撃し続けていたのだった。
それも下士官クラス程度の強力では、まるで戦った感がしない戦闘だという。
來碼は、道場内に入り、麟道師との対戦を中断させた。
「どうかね? 調子はよろしいか?」
「調子も何も……なんで下士官クラスとの対戦を許可下りないんだよ。全く!!」
「これ、豪舞!! 総煌様に失礼だろう!!」
「よい。そんな縦社会の位とは、この坊主には通用せんからな」
「しかし、社会のケジメは……」
「豪舞よ、この來碼の名にかけて、下士官クラス程度の強力疑似兵と一戦交えようか?」
「疑似兵? シミュレーションかい?」
「そうだ。そのシミュレーション機能と戦えるか?」
「実戦のランクなら、自信持てねえよ」
「お前専用に調整を合わせよう」
「レベル合わせなくて良いよ。俺は、早くあの3人の借りを返したいんだ」
「ま、せいぜい、シミュレーションで思い知るが良いさ」
「……」
徹底的にシミュレーターシルエットと呼ぶ兵士形態のドールでしごかれた豪舞。
「ぐはぁー!!」
「まだ、詰めが甘いなぁ……ワシが基本から鍛え直そうぞ」
「御本家、それは不要に及びます」
「んん?」
「あやつは、既に閃煌を極めております故」
「なるほど……な」
そんな時、システムの暴走なのか、麟道師がシミュレータードールたちに捕まったという。
「ムムッ!? 迂闊だったか……」
「麟道師のじっちゃん、ダイジョブか?」
ドールのレベルが急激に上昇し、老体の動きを封じ込めてしまったのだ。
「うわぁぁぁ!!」
「じっちゃん!? 己れ~!! ドール、……おめーら、許さねーゾ!!」
豪舞のオーラレベルが徐々に上がり、背後から麟光輪が浮き出てきた。
それは、次第に明るくなり全身に吸収しだした。その輝きは、新たなるオーラの煌めき『閃煌』となって、豪舞に身に付いた。
「ドール、覚悟しろ!! でや~!!」
数体のシミュレータードールは、一度の閃煌の威力による波動エネルギーで一撃で撃沈したという。
「でかしたぞ、豪舞。一時はシステムダウンでどう停止して良いか迷っていたのだ」
「こんなの……たいしたこ……と、ない……はあはあはあ~」
地べたにずっしり倒れ出した豪舞。長時間も昏睡状態になった。
「こやつ、いつの間にこんな力を?」
「これが、新たなる希麟児か。期待してるゾ、豪舞」
まるで良い夢を見ているかのような顔で眠りこけた少年……豪舞は、これからも、凶麟による災いあるところに平和をもたらす正義でありたいと、常に思い抱くのであった。