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東方未来祈祷伝  作者: 名無しの烏@幻草子
2/5

part01 動き始める異変

よろしくお願いします、名無しの烏です。

霊夢

「はぁ~...」


縁側で日向ぼっこをしながらお茶をすする霊夢は面倒だと言わんばかりのため息をついていた。


霊夢

「まったくいつになったら起きるのよ,この子は...」


彼女はそう言うと縁側から室内へ顔を振り向かせ寝かされている少女の様子を探る。


その少女は霊夢のような赤と黒の巫女服を見に纏い、髪の色は太陽の陽を淡く反射する茶髪、顔立ちは心なしか真面目そうな印象である。


霊夢

「外来人かしら...?それにしては服が幻想郷っぽいし...」


彼女が言う外来人とは、外の世界から幻想郷に来た人のことを指す。

しかし、彼女の目の前のこの少女は外の世界で着ていそうな服装ではない。むしろ自分と似たような博麗の巫女服を着ていることに違和感を感じざるを得ない。


霊夢

「はぁ~...」


再びため息をつく。彼女の勘がまたこの幻想郷で何かが起きると囁いていたからである。


霊夢

「また紫が変なの連れてきたのかしら」




霊夢はまだ知らなかった。もう異変は動き始めていたことを。





幻想郷のどこにあるのかも知られていない洞窟、そこでは女性と少女が対峙していた。


いや、対峙しているという表現は少し間違っているかもしれない。

何故なら片方の女性は既に満身創痍、身体の隅々から大量の血を垂れ流して、立つこともままならぬ状態であり、


さらにもう片方の少女はその血まみれの女性を無傷の状態で、且つ冷たい瞳で見下ろしており、とても二人が対峙している状態だとはとは言えなかったからである。


「くッ...!!」


血まみれの女性は不意打ちとばかりに、傷だらけの身体に鞭打ち、少女に対して妖しげに輝く紫色の光弾をいきなり放つ。


しかし少女はそんな不意打ちを物ともせず、手にしていた刀で光弾をいとも容易く頭上に弾く。


弾かれた光弾は洞窟の天井を貫き、貫かれた穴からは太陽の陽が洞窟内に侵入し血まみれの女性を照らすことで、彼女の顔が露わになる。


「本当、参ったわね...」


傷だらけの女性の正体は紫であった。

彼女は額にまで垂れた自分の血液が目に入らないように拭い、この先の戦いをどう展開するかを思案する


そんな紫を見下ろしていた少女は呆れたように女性に言を零す。


少女

「...もういいわ」


「どういう意味かしら...?」


少女

「もう飽きたと言ってるのです。妖怪の賢者と言われる八雲 紫でも今の私には敵わないと分かった...それだけで充分です。貴女の式神も貴女自身でさえも今の私には敵わない。さぁ、少し休まれてはどうです?私の邪魔なんかせずに、ずっとそこで休んでおくことをおすすめするわ」


少女は背を向け、紫のことなど相手にせず洞窟の更に奥の方へと歩んでいく。


「なめ...ない.....わよ」


息も荒く疲労困憊な紫の口から絞り出されるように言葉が溢れ出る。


「この紫様を、なめるんじゃあないわよ!!!」


紫は最後の力を振り絞り、少女に飛びかかる。

その両手の拳には高濃度の妖力が込められており、それらに触れるだけで致命傷を与える程の妖力であった。


少女

「........」


少女は紫の攻撃に振り返ることなく、ただ一言だけ小さな声でスペル名を呟く。


少女

「堕欲 欲界の六欲天」


「ッ!!!!!」


次の瞬間、紫の周りに突如六つの人影が現れ、彼らがそれぞれ手にしていた武器で彼女の腹部を突き刺して、彼女を取り押さえる。


ある者は自身の鋭く尖った爪で、

またある者はその身の丈ほどある巨大な大剣で、

そして片手銃を紫の額に押し付け、いつでも殺せると示す者もいた。


紫は突然のことに目を見開き驚きつつも、体がそのままの状態を許さず、麗しい口から鮮血が垂れる。


「そんな、いったいどこから?気配は無かったはずなのに!?」


少女

「その子達は私の分身、私が直接異変を起こすのはもう少し後。

まずはその子達にお膳立てをお願いするつもりよ」


「あなたは...いったい何をするつもりなのッ!?」


紫は余裕のない切羽詰まった叫びが洞窟に反響する。

少女は彼女の質問に静かに答える。


少女

「何をするつもりか、答えは至ってシンプルね。

私は、幻想郷の全ての人の願いを叶えてあげたい。ただ、それだけよ...」


少女はそう言うと再び洞窟の奥へと歩を進め、

それと同時に小さく開いた華奢な右手の平を少し上げて握り締める。


「ッ!?」


すると紫の周りが鮮黄色に輝き、紫を滅多刺しにしていた六人は速やかに彼女の傍から離れ、自身の武器を彼女から抜き取る。


紫の負った傷は深いらしく、武器を抜かれた後も彼女はその場から動くことができない。


少女

「やはり貴女は邪魔ね、大人しくしてなさい」


少女は握り締めた右手を勢いよく開けると、先程より強い鮮黄色の輝きが紫を包み込む。


次に鮮黄色の閃光が消えた時、彼らの視界に入ったものは、

鮮黄色の巨大な水晶に閉じ込められた紫の姿であった。


少女

「フフフ...」


少女はそのまま歩を進めて洞窟の奥の闇へと消えていった。


紫を突き刺した六人もいつの間にかその場から消え去っており、その場に残されたのは水晶に封印された紫だけであった。








霊夢

「そういえば、最近紫見ないわね」


霊夢はなんとなく寝かされている少女から、雲一つない快晴の空へと視線を移す。するとまだ夜になっていないのにも関わらず、空に流れ星のような軌跡が描かれる。


霊夢

「あ、今日も来たわね」


霊夢の視界に空を飛ぶ小さな人影が写る。

その人影は箒にまたがり、白と黒のエプロンのような服を着て、黒の三角帽を被った金髪の少女の姿であった。


彼女の名前は霧雨魔理沙。博麗霊夢の友と呼べるような存在であり、またライバルとも呼べる存在であった。(しかし霊夢はそのことをあまり意識していない)


彼女は霊夢のいる縁側にトンっと降り立ち、三角帽のつばをくいっと上げて霊夢に対してビシっと指さす。


魔理沙

「霊夢ッ!今日こそはお前に勝たせてもらうぜッ!」


霊夢

「嫌よ、昨日も勝負したじゃない。何度やっても結果は同じよ?」


霊夢は今日何度目となるのだろうかめんどくさそうにため息をつく。


魔理沙

「う、うるさいッ!!!とにかく私と勝負するんだ!

今日の為に新しいスペルも、マジックアイテムも用意したんだからな!」


霊夢

「仕方ないわね」


霊夢は重い腰を上げ縁側から立ち上がりフワフワと空中に浮き始める。


魔理沙

「今日こそは、絶対に...!!!」


空に浮かび合った霊夢を見上げた魔理沙は、箒を握る手に力を込め、箒にまたがり直して霊夢同様に空に浮かび上がる。




魔理沙

「ルールはいつもと同じ!一度でも相手に弾幕を当てれば勝ち、

スペルの使用数は無制限で行くぜ!?」


霊夢

「何でもいいからさっさと始めるわよ」


魔理沙

「あぁ、行くぜ!」


魔理沙は両手をポケットに突っ込んで、手の平から溢れんばかりのビー玉のようなモノを取り出す。その球体には一つずつ星のような魔方陣が描かれており、それは魔理沙のマジックアイテムの一つであった。


魔理沙

「魔具 スモール・メテオ!!!」


魔理沙は大量の球体を辺りに放り投げる。

すると球体全てが重力に逆らい、ふわりと空中に浮遊し、淡い緑色に輝く。


霊夢

「......」


霊夢は魔理沙の取り出したマジックアイテムをじっくりと注意深く観察する。


魔理沙

「行けぇッ!!!」


魔理沙の指示と同時にマジックアイテムは霊夢に向かって接近する。

マジックアイテムの一つが輝き、それに描かれた魔方陣から光弾が霊夢に放たれる。


霊夢はそんな状況に置かれても動揺することなく、空中で体を翻し彼女に放たれる光弾を避け続ける。


魔理沙

「くそッ!!!当たれぇッ!!!」


先程のマジックアイテムに続くように、他のマジックアイテム達も霊夢に接近し、それら全てのマジックアイテムから光弾を放つ。また球体自身も物凄いスピードで霊夢に激突しようと襲い掛かる。


霊夢

「......」


放たれる光弾の数が増えようとも、

避ける球体の数が増えようとも、

霊夢は構わず、空中を自由自在に飛び抜け、目まぐるしく放たれる光弾を全て避ける。


魔理沙

「くそッ!だったらッ...!」


霊夢を攻めるマジックアイテムの動きが突然静止し、静かに霊夢を包囲する。


霊夢

「今度は何を出すのかしら、メンコ?おはじき?ベーゴマかしら?」


霊夢は余裕綽々といった様子で魔理沙に笑みを向ける。


魔理沙

「その余裕すぐにぶっ壊してやるぜ...」


魔理沙は懐から八角形の箱のような物を取り出す。

彼女の一番のお気に入りのマジックアイテム、八卦炉というマジックアイテムである。


魔理沙

「いつもより魔力を濃縮、鋭い針のようなイメージ、

加えて込める魔力はいつもより多く、大きく...」


魔理沙は小声で何かを呟く。

恐らく相当集中しているのだろう、そのピリピリとした集中が霊夢にも伝わり、霊夢は彼女の次の行動に全神経を注ぐ。


魔理沙

「行くぜッ!」


彼女の八卦炉から鋭い閃光が溢れると同時に彼女の魔力が急激に高まる。


魔理沙

「魔鏡 リフレクトスパークッ!!!」


魔理沙の八卦炉から、

勢いよく針のように鋭いレーザーが霊夢に放たれる。


霊夢

「いつものマスタースパークより少し速いくらいで私に当たると思ってるの?」


霊夢は彼女が放ったレーザーを体を捻ることで容易く避ける。


霊夢

「ッ!!!」


霊夢は戦慄する。

避けたはずのレーザーは霊夢の周りを囲んでいたマジックアイテムに吸い込まれ、スピードとパワーを上乗せされて彼女に再放出される。


霊夢が何度レーザーを避けても、そのレーザーはさらに速く強くなって霊夢に放たれ続ける。


魔理沙

「いくら躱し続けてもリフレクトスパークは霊夢を狙い続けるぜッ!!!」


魔理沙は勝ち誇ったような笑みを作り、

今もなおレーザーを避け続ける霊夢が、いつレーザーにやられるかを楽しみに観戦する。


霊夢

「......」


ついに霊夢は動きを止める。

諦めたのではない。その証拠に彼女の両手には何十枚ものお札が握られている。


魔理沙

「何をする気だ!?」


霊夢

「うっとおしいわね、このマジックアイテムってやつ」


霊夢は自分の面を狙って飛んできたレーザーを上体を後方へ反らしてレーザー躱し、それと同時に両手に持っていた大量のお札を全方位に放つ。


霊夢の放ったお札は全て魔理沙のマジックアイテムに命中し、マジックアイテムは大爆発を起こし膨大な火煙が彼女を包み込む。


魔理沙

「くそォッ!!!」


火煙を掻き分けて魔理沙がいきなり霊夢の目の前に現れる。

その手には八卦炉が握られており、既に魔力が込められている状態であった


魔理沙

「恋符 マスタースパークッ!!!」


魔理沙の八卦炉から強大で膨大で極太な魔力が込められたレーザーが霊夢に零距離で放たれる。彼女のレーザーは眩い閃光を放ちながら、濃い煙火を一息で全て吹き飛ばした。


魔理沙

「はぁ、はぁ、はぁ、.....っく!!」


先程のマスタースパークに全魔力を注いだせいか、大きく息を乱す魔理沙の背後には、


霊夢

「......」


何食わぬ顔でお札を魔理沙の首へあてがう霊夢の姿があった。


魔理沙

「どうして...撃たない?」


魔理沙の感情のこもっていない声が霊夢に尋ねる。


霊夢

「どうしてって...もう勝負は決まってるのに、わざわざ撃つことないでしょ?霊力の無駄遣いよ」


そして、霊夢は魔理沙の首にあてがっていたお札を下げ、続けてしかめっ面で魔理沙に話し続ける。


霊夢

「それよか、あんた本当に勝つ気あるの?」


魔理沙はうつむいたまま霊夢の諫言を受け止める。


霊夢

「技は複雑なように見えてるけど結局は直線状の攻撃だし、

最後のマスタースパークにせよもう少し工夫すれば、こんな簡単に背後を取られることはなかったでしょうね」


ほんの少しの沈黙、すると霊夢は彼女の肩に手をポンッと置き、


霊夢

「もっと頑張りなさいよ」


魔理沙

「っ!!!」


魔理沙は突然、背後の霊夢を突き離し、その場から逃げるように飛び去っていった。


霊夢

「いったい何だってのよ?」


霊夢は不可解な顔をしつつも、

魔理沙を追うことはせず神社の縁側に降り立っていった。












少女

「フフフ...聞こえる、聞こえるぞ。欲の声が、人々の願いが...!!!」


洞窟のさらに奥にある部屋、

巨大で豪華な椅子に腰かける少女は嬉しそうに何やら独り言を呟く。


そんな少女の前で紫を取り押さえた六人の影が忠誠を誓うように頭を垂れる。

彼らの中には屈強な青年や、か細い少年、遊女のような身なりの女性まで様々な者が少女に跪いていた。


少女

「さぁ、行きなさい!!!より深い欲を持った者の所へ!!!

貴方たちの宿主になるに相応しい身体の持ち主の所へと!!!」


少女がそう言うと六人の人影は、

ふっとその場から音もなく消え去り、そこに残るのは少女だけとなった...。









フラン

「お姉さま!お外に遊びに行きたいの!お外に出てもいいでしょ!?」


レミリア

「駄目よ、フラン。貴女はまだ自分の能力を制御できていないわ。部屋でじっとしておきなさい」


フラン

「.....どうして、どうしてなのお姉さま。

495年間も私を地下に閉じ込めて、まだ私を館に閉じ込めるつもりなの...?お外に、出たいよぅ...!」





『そこまで外に出たいか...?』





フラン

「誰...?」





『私はお前だ...』





フラン

「私...?」





『あぁ、お前の願いを叶えてやろう』










幽々子

「西行妖、その昔、多くの人間の精気を吸った妖怪桜でその花が満開になった時、西行妖に封印されている【誰か】が復活する。...前に私が無理やり咲かそうとしたんだけど、結局霊夢達に邪魔されて咲かせられなかったのよね。

結局、【誰】が封印されていたのかしら...?知りたいわね」





『知りたいわ...私も凄く知りたいわ...』





鈴仙

「綺麗な月ね......」


てゐ

「そうだねー、こんな日は月見団子がバカ売れするに違いないね!よし、ちょっと一儲けしてくるわ!!」




鈴仙

「ったく、てゐったら、風流もあったもんじゃないわね。......、月、か。私も久しぶりに皆に会いたいな......」





『故郷に戻りたいの?それはとても素敵ね♡」






諏訪子

「懐かしいよね~♪昔、神奈子と私が戦ったこと!

あの時は神奈子に見事にやられちゃったんだよね♪」


神奈子

「懐かしいな、でもあの時に比べたら今の信仰は少し心許ない」


諏訪子

「あ~あ、もっと私達に信仰があればな~」





『足りない足りない。まだまだ足りない...』










「姉御!今日はここらで俺達は帰らさせてもらいやす!」


勇儀

「おう、じゃあまた明日な!......また、一人酒か、仕方ないよな。あいつらにはまだ地霊殿での仕事が残ってるし」





『寂しいのぅ、一人は本当に寂しいのぅ......』










魔理沙

「ちくしょうッ!!!」


魔理沙は力任せに思い切り玄関のドアを開け、近くに会った椅子を感情のままに蹴り飛ばす。


魔理沙

「どうしてだッ!何故なんだッ!何か理由があるのかッ!

どうして私は、霊夢を追い越すことができないッ!?

こんなに努力しているのにッ!

こんなに必死でやっているのにッ!!

こんなに苦労してやってるのにッ!!!」

もっと頑張れだと?ふざけんなッ!!!

これ以上どうやって頑張れって言うんだよッ!?

そこまで私が怠けているように見えたのかッ!?

くそ...くそォォォッ!!!.........力が、霊夢を圧倒できるような、強大で、莫大で、膨大な力が欲しい!!!」





『そんなに力が欲しいか?』





魔理沙

「誰だッ!?」





『そんなに力が欲しいのかと聞いてるんだよ』






魔理沙

「欲しいに...、欲しいに決まってんだろ!!!」





『気に入った...あんたに与えてやるよ。あんたが欲する力ってやつをなッ!!!』





魔理沙

「っ!?」


突如、魔理沙の足元からドロドロとした泥のような闇が魔理沙を包み込もうとする。魔理沙は反射的に、本能的にこの闇は危険と判断し、その闇から逃げようとする。


しかしその闇は粘り気があり逃れようとしても、しつこく魔理沙の肌に付着しづける。そしてやがて闇は更に濃くなり、完全に魔理沙を包み隠す。


闇に包み込まれる前に魔理沙が見せた表情は、

恐怖や、焦りや、絶望などではなかった...。





魔理沙は、笑っていた...






少女

「フフフ、さあ始めるわよ!異変って奴を!!!」




お読みいただきありがとうございました!!!ご感想お待ちしております!!

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