1/6
プロローグ
プロローグ 1
一陣の風が通り抜け、乾いた大地に砂塵が舞った。
一人の騎士が歩いていく。
威風堂々、風を切って歩を進める。一歩一歩、確かに大地を踏みしめて。
空は有明。染まり始めた朝焼けに、まだ残る月が霞んでいる。
視線の先には一人の宿敵。騎士にとっての倒すべき敵。
交わす言葉はもう絶えた。今更語る事などない。
旅が始まり、幾多の困難を乗り越えた。一つ一つの戦いを経て、そして残った確かな想い。
騎士は静かに立ち止まる。
宿敵は身動き一つとらぬまま、ただ泰然と騎士を待つ。
風が止まる。
万物全てが眠りに落ちたかのように、世界は静寂に包まれた。
騎士と宿敵、二人の呼吸が世界に響く。
最後に立つのは己か敵か。いまだ昇らぬ朝の日を、望める者はただ一人。
騎士と宿敵が、同時に一歩を踏み出した。
最後の闘いが始まる。