そろそろ目を覚ましなよ
向日葵も終わりだな、と、丸椅子に腰掛けて、窓の向こうの空を見ながら穂花は思った。
季節は秋に移り変わっている。
もうすぐ事故から丸三年。
みんなにとって、辛い三年だった。
「宮本くん。そろそろ目を覚ましなよ」
慧の長い睫毛を見詰めながら、声を掛ける。
「私、あの時の返事、まだ待ってるんだからね。せっかく告白したのにさ。ハッキリ言ってくれるまで、毎日来るんだから」
と、冗談めかして言ってみた。
ふと入り口に人の気配がして、聞かれてはいまいかと恥ずかしくなる。
「誰だろ。おじさんカンファレンスから戻って来たのかな」
さっき医師に呼ばれ、祐治は出て行ったばかりだったので、穂花は首を傾げた。
ごめんください、と聞こえたような気がしたが、自分が応対するのもおかしいので、祐治に報せようと立ち上がる。そして、ついでに花瓶の水を替えることにした。
「宮本くん、水、替えてくるね」
サイドテーブルの花瓶を持ち上げ、慧の顔を覗く。
「あれ?……」
穂花は目を疑った。
もう一度、じっくり見詰めてみる。
微かに、睫毛が揺れる。
そして、瞼はゆっくりと押し上げられていく。
穂花の手から花瓶が滑り落ち、ガシャン、と床で割れた。
「た、大変」
確かに、慧の目が開いた。
曇りのない、美しい瞳は、世界を見詰めている。
「お、おじさん! 宮本くんが、宮本くんが目を覚ましました!」
穂花は大声で叫びながら、半分よろめきながら、病室を飛び出した。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
目を通して下さったお一人ずつに
感謝を伝えたいです。
初めて描く世界、ジャンルでした。一気に書いたので充分推敲されておりませんので、現在練り直しておる最中です。
それでもストーリーに触れ、何かを心に残して頂けたら幸です。
厚く御礼申し上げます。
よろしければ感想、ポイント評価
お待ちしております。
西原詩絵




