ユニコーン
天に向かって伸ばしたケイの指先に何か温かいものが触れた瞬間、白い光が足許を包み込み、ブーツが馬へと変化した。
真っ白な馬は、まるでユニコーンのように美しく、手綱などなくとも、ケイの思うように走った。
ケイは指先に、誰かが触れたような気がした。とても温かい心を感じる。
ブンブンという音は次第に遠ざかり、馬はスピードを速めていく。
いつの間にか完全に森を抜け、砂漠を抜け、寂れた町を抜け、海に出た。
ボロボロの看板に、〃岬橋〃と書かれている。斜めになって、無造作に地面に刺さっていて、ケイは何だか悲しくなった。
確かに、岬橋のようだ。ここが、猫に目指すように言われた、橋――。
ケイは馬を降り、恐る恐る進む。
車道がある。その脇には、歩道がある。橋の下には、真っ白い川だか海だか分からないが、水が流れている。
この橋を渡ってもいいのだろうかと、ケイは悩んだ。酷く怖い気もした。渡れば、全てが変わってしまいそうで、不安でいっぱいになる。
振り向くと、さっきまでいた馬は消えていた。きっと、後戻り出来ないということなのだろうと、ケイは悟った。
一歩。また一歩。コンクリートで出来た橋の上に足を滑り込ませていく。
ケイは、この景色を知っていた。何故自分がここにいるべきなのか、本当は分かっていた。たった今までそれを失っていただけだ。
足を進める度、ケイは怖くなる。知らなくてはいけない未来に、怯みそうになる。しかし、立ち止まることも出来ない。
橋の中頃に、一人の少女の後ろ姿を見付けた。
――ああ、そうか。そうだったのか。
ケイは、ゆっくりと近付いていく。
少女がそれに気が付き、振り向くと、二人の間に真っ白な光が溢れだし、ケイの全身を包み込んだ。




