追憶
「…りゅ………ずっ…………いっ………ね……」
あぁ…またこの夢だ……いったい誰なんだ?
俺は真っ白な部屋に黒髪で可愛いが知らない女と2人でいる。知らないはずなのにどこか懐かしく愛しい……
「りゅう………しょに………ね」
なんて言ってんだ?きこえねぇよ。
「ハッ!!……はぁはぁまたあの夢か……」
俺の名前は杉田 隆平ごく平凡な高校2年だ。1ヶ月程前から変な夢を見るようになった。
「いったいなんなんだ?あの女はなにがいいたい?」
寝覚めの悪さに不機嫌になりながら制服に着替えリビングに向かった。
「おはよう。りゅう。」
「はよう……」
リビングには母さんが朝御飯の準備をしていた。うちは母子家庭で父さんはいない。俺が生まれる前に死んだらしい。
「元気ないわね?どうしたの?」
「いやなんでもない……」
「そう。ならいいけど。そういえば春香ちゃん……あっ……なんでもないわ。」
ズキッ!!なんだこの頭痛は?春香……?いったい誰だ?
「どうしたの?」
「なんでもない…」
「今言ったことは気にしなくていいからね……」
「あぁ……」
「じゃぁ行ってくる。」
「いってらっしゃい。」
ズキズキッ!!なんなんだこの頭痛は……なんだ……これは近所の公園?
俺の頭の中には近所公園が鮮明に写し出されていた。そして学校へ行かずにその公園に向かった。
この公園に来るのも久しぶりだな……最後に来たのは中学か……違う……もっと最近だ……
ズキッ!頭痛と共に記憶にない映像が頭の中に写しだされた。
(ほぉら!口にアイス付いてる!)
あの女?
(マジ!?)
それと……俺?
(りゅうはいつまでたっても子供なんだから!)
なんだよこれ……
(うっせぇ!そんなこと言ってる春香も付いてるぞ!)
春香……?お袋が言ってた名前だ……だけど俺にこんな記憶ない……
そこで映像は途切れた。
「うぁぁぁ!!」
俺は公園の真ん中で叫んでいた。
いったいなんなんだよこれ……俺の記憶にない…
ズキッ!……こんどは丘の上?
俺の頭の中にはここから少し行った所にある丘が写し出されていた。
なんでこんな所が?
丘の上にはなにもなく町内を一望できるくらいだった。
ズキッ!!またか……俺はまた頭の中に映像が流れてきた。
(うちね!こっからの景色大好きなの!)
(バカと煙は高いとこが好きってやつか!)
(そうゆうこと彼女にゆう?)
……彼女?……でもこんな奴知らないし付き合った覚えはないぞ……
(次はあの公園行こ!)
(はいはい。)
なんなんだよ……わけわかんねぇよ……
そこで映像は途切れた。
……今度は道路……?あの女が行こうとした場所じゃない?
次に写し出されたのはあの女が行こうとした場所ではなく行く途中にある道路だった。
道路につくとこれまでと同じように頭痛が遅い映像が流れた。
(ブゥゥン!)
(もっとスピードだそうよぉ!)
俺のバイク?
俺はバイク持っていないはずなのに何故かそれが自分のものとわかった。
(事故っても知らねぇぞ?)
(りゅうは事故んないから大丈夫!)
(ならもっと上げるぞ!)
(ブゥゥン!)
(パッパァ!)
(りゅう!危ない!)
(うわぁぁ!)
(ドカァン!)
トラックに轢かれた俺と女……わからねぇ……いや……わかろうとしてないのかもしれない……
ズキズキ!!頭痛が酷くなってる。これ以上動くなとゆうことなのか?だけどそんなわけにはいかない……
そして最後に写し出されたのは病院と部屋の番号だった。
藤山病院506号室?
俺は病院へ向かった。女のこと何故こんな記憶があるのか全部知るために……
病院に着くと頭痛がより酷くなり歩くことも困難になった。
行かなくちゃ……たとえなにがあろうと……
俺はやっとの思いで506号室についた。
ぐっ!気を失いそうだ……
(春香……どこだ……)
ここは……病院の廊下?
映像には病院の廊下そして包帯をして今にも倒れそうな俺……
(春香……)
(りゅうくん……)
(オバサン……)
誰だ……?
(こっちよ……)
ここは……506号室……
(春香……)
(春香ね……植物人間になったの……)
やめてくれ……その先を言わないでくれ……
(もう一生目が覚めないかもしれないの……)
そんな……
(嘘だろ……春香……ふざけんなよ……おい……目ぇ開けろよ!なぁ!はるかぁぁ!!)
うぁぁぁ!
(俺のせいで!俺のせいで春香が……うぁぁぁ!!)
そこで映像は途切れた。
全部思い出した……春香の人生を奪ったこと……罪の意識とショックで記憶を閉じ込めたこと…全部……
「俺……最低だ……」
すると不意に目の前のドアが開いた。
「りゅうくん……?」
「オバサン……」
「どうしてここに?」
俺はオバサンにいきさつを全て説明した。
「そうだったのね……りゅうくんはあの後倒れて目覚めた時には春香のことを全て忘れてたの。それでりゅうくんの為を思うなら思い出せない方がいいってことになったのよ……」
「そうですか……それで……今春香は?」
「入って……」
病室にベッドと色々なチューブや機械があった。
「春香……」
ベッドには痩せてはいるが紛れもない春香がいた。
「明日ねもう春香をちゃんと眠らせてあげようってことになってるの……」
それって……
「死なすってことですか?」
「えぇ……でも、最後にりゅうくんが来てくれてよかったわ……」
そんなのあんまりだろ……
「ごめんね……りゅうくん……」
俺は抗議は出来ないと悟り春香の手を握りしめ話しかけた。
「ごめんな……俺のせいで……その上忘れたりなんかして……」
俺は泣きながら春香の手を握っていた……
ギュッ!
「!!?春香!?」
「どうしたの?」
「今春香が俺の手を……」
俺は驚いていたため言葉を上手く話せなかった。
「春香!おいっ!」
「………ん?」
「春香!俺が分かるか!?」
「……りゅう?」
「オバサン!春香が…春香が起きた!」
オバサンは腰を抜かしその場に崩れていた。
「私ねずっとりゅうに話しかけてたの……だけどりゅうはいつも黙ってて私のこと嫌いになったと思って怖かった……」
「嫌いになんかならねぇよ……」
「りゅう……ずっと一緒にいようね……」
春香は夢の中でそれが言いたかったんだな…ごめんな…忘れてて……
「あぁ……この先も……何年たっても……お互いジジイババアになっても一緒にいるからな……もう二度と忘れない……」
「大好きだよ……りゅう……」
「俺もだ……春香……もう二度と離さないからな…」
追憶 完