喋らない僕に話しかけてくれた君
初めまして… 恋愛ものなんて書かないから緊張しました。
どうか見てやってください!!
僕の名は春日野魔法。僕と言っているが、性別は女だ。
小さい頃から『僕』と言ってきたから『私』に直すことはできないのかもしれない。それに僕はもう5年も人とは話していない。 一度他人と話して失敗したことがあり、それから話すのがおっくうになってしまったんだ。だから僕は一生人と話さないと思っていた。
そう、あの人に会うまでは…
中学二年生になり、僕は新しくやってくる一年生をみて溜息をついた。 後輩が来るのがこんなにも嫌がる人はこうもいないだろう。周りの皆は新しくできる後輩を見て目を輝かせていた。
-どうせ自分が先輩にやられていた分のストレスをぶつけて楽しむつもりなんだろ-
そう僕が思いながら窓の外の後輩を眺めていると、楽しみな顔をしている子や緊張して眠そうな子、面倒くさそうに歩いている子などたくさんの一年生がいた。 だが、一人だけのんびりと本を読んでいる男子に僕は目を奪われた。
まるで自分の世界に入っており、本当の世界を無視しているように一見みえたが、その顔は誰がどう見ても、希望に満ち溢れていた。
-周りとは違うような子が入学してきたな-
僕はそう思い、入学式がくるのが楽しみになった。
入学式も終わり、昼休みになった。 僕は一人カーテンも開いていない暗い図書室で本を読んでいた。
熱中していたのか気がつくと目の前には男子が一人僕と向かい合わせで本を読んでいた。その男子は、朝、僕が目を奪われた読書男子だった。
「この本好き?」
男子が聞いてきたので破った紙に『好き』と書いてその男子に渡した。
「声が出ないの? それとも話すのが嫌いなの?」
『話すのが嫌い』
「君から何か質問してもいいよ」
『君の名前は何?』
「夜影康樹」
康樹君とは昼休みが終わってもずっと言葉と手紙のやり取りをしていた。もちろん学校の午後の授業をサボってしまったから先生は怒っているはずだ。しかも康樹君は学級委員としてクラスをまとめないといけなかったらしい。
「入学初日にサボったのは生まれて初めてだ。」
『ここは先生にバレないから下校時間までゆっくりしてていいよ』
「ありがとう」
下校時間になるまでの間は緊張の連続だった。先生にバレるかもしれないという考えの他にこんなにも長い間男子といるのは初めてだったから嬉しいような恥ずかしいようなくすぐったい感覚に襲われていた。
それが恋だというのに気がつくまでほんの少し時間がかかった。
「皆が帰っている」
「…そうだね」
「あ」
康樹君が何かに気づいたような声を出した。僕はまだ何に気づいたのか分からなかった。
「どうしたの?」
「初めて声を聞いた…」
「あ…」
自分でも気づかずに声を出していたのに僕は少しだけ驚いたが康樹君の笑顔を見て心の中の薄暗く濁った
何かがとけた気がした。
「五年ぶりに声を出した」
「じゃあ、俺がこの五年間の中で始めて声を聞いた人だね」
そう考えると僕は嬉しくなった。
「君の名前は?言葉で教えて」
「春日野魔法。二年生図書部」
「部員は?」
「僕一人」
「自分のこと、『僕』じゃなくて『私』って言ったほうがいいと思うよ」
「『私』?」
「うん、そっちのほうが君にあってると思う」
胸の鼓動が高まった。これで自分が恋をしていることが明らかになった。
「俺、図書部に入部する。それと…」
「それと?」
「俺、魔法さんのこと…好きかもしれない」
「あ」
「?」
「同じだ…」
新しい教室、新しい学年、新しい生徒 新しいものがたくさん来る季節に自分が明日から新しく生まれ変われると思うと、心なしか私はとても嬉しくなった。