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守られる理由

朝の光が、詰所の小部屋に差し込んでいた。


アオイは、ゆっくりと目を開ける。


(……あれ)


久しぶりに、

体が軽かった。


胸の奥にあった重さも、

ざわつきも、今は感じない。


「……起きましたか」


静かな声。


視線を向けると、

ベッドのそばにユリウスが立っていた。


「ゆっくりで大丈夫ですよ」

「無理に動かなくていい」


「……あ、ありがとうございます」


起き上がろうとすると、

ふわりと肩に手が添えられる。


「まだ少し、魔力が不安定です」

「支えますから」


近い。


息遣いが分かる距離に、

アオイは思わず体を強張らせた。


だが、不思議と――

怖くない。


触れられた場所から、

温かさが広がる。


「……安心すると、魔力が整う」

「やはり、そうですね」


ユリウスは独り言のように呟いた。


「……?」


「アオイ」

「あなたの魔力は、“攻撃”でも“治癒”でもない」


指先が、

そっと胸元に触れる。


布越しなのに、

心臓の鼓動が、はっきり伝わった。


「感情に反応して、周囲を調律する力」

「恐怖や不安を、無意識に打ち消す――

 共鳴型魔法です」


「……そんな、すごい……」


「ええ」

「とても、希少です」


その言葉を聞いた瞬間、

扉が勢いよく開いた。


「――ユリウス」


低い声。


振り返らなくても、誰だか分かる。


「……近い」


カイルが、明らかに不機嫌だった。


「治療中です」

「必要な距離ですよ」


「……それ以上は、俺がやる」


空気が、張り詰める。


ノアが、慌てて割って入った。


「ちょ、団長!」

「アオイ、困ってるでしょ!」


「……だいじょうぶ、です」


アオイは、そう言いながらも、

無意識にカイルの方へ視線を向けていた。


それを見逃さず、

ユリウスの目が、わずかに細くなる。


「……なるほど」


「何がだ」


「いえ」


ユリウスは一歩下がり、

アオイに微笑んだ。


「今日は、無理をしないで」

「誰かと一緒にいてください」


「誰か、って……」


「一人でいるのが、一番危険ですから」


その言葉に、

騎士団全員が、黙り込む。


沈黙を破ったのは、レオンだった。


「じゃあ、俺が――」


「俺が連れていく」


即答。


カイルだった。


「団長!?」


「異論は認めない」


アオイは、反射的に立ち上がろうとして、

ふらついた。


次の瞬間、

強い腕に抱き留められる。


「……っ」


視界が、一気に近づく。


「……軽すぎる」


耳元で、低く囁かれた。


「ちゃんと、食べろ」


心臓が、うるさくなる。


顔が、熱い。


周囲の視線が、

一斉にアオイに集まった。


ノアは露骨に不満そうで、

レオンは苦笑い、

ユリウスは――静かに見つめている。


(……なんで、こんな)


アオイは、ただ戸惑っていた。


嫌われていたはずなのに。

放っておかれていたはずなのに。


今は――

守られるのが、当たり前のようで。


その胸の奥で、

温かな光が、静かに脈打っていた。




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