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見えない棘

その違和感は、朝から始まっていた。


目を覚ました瞬間、

アオイは胸を押さえる。


(……重い)


息がしづらいわけではない。

痛みもない。

ただ、胸の奥に薄い膜が張ったような感覚が残っている。


「……気のせい、だよね」


そう呟いて身支度を整え、

いつものように城の廊下を歩く。


だが――

すれ違う侍女たちの視線が、どこか刺々しい。


「……あの子」

「また騎士団に行くんでしょう?」


声は小さい。

けれど、聞こえないほどではない。


足取りが、少しだけ遅くなる。


(……慣れてる、はずなのに)


そう思おうとしても、

胸の奥のざわめきは消えなかった。


騎士団の詰所に着く頃には、

額にうっすらと汗が滲んでいた。


「アオイ?」


最初に気づいたのは、レオンだった。


「顔、白くないか?」


「……だいじょうぶ、です」


そう答えたつもりだったが、

声が思ったよりも弱い。


ノアがすぐに近寄る。


「無理して来たでしょ」

「今日は座ってて」


「で、でも……」


「いいから」


半ば強引に椅子に座らされ、

水を差し出される。


その一連の流れを、

カイルは黙って見ていた。


「……ユリウス」


「はい」


短いやりとり。

それだけで、ユリウスはアオイの前にしゃがみ込む。


「少し、魔力を見ますね」


「え……?」


拒否する間もなく、

そっと手首に触れられた瞬間――


胸の奥が、きゅっと締めつけられた。


「……っ」


アオイが小さく息を詰める。


ユリウスの表情が、わずかに変わった。


「……これは」


「どうだ」


カイルの声は低い。


「外部から、微弱な魔力干渉を受けています」

「害意は薄いですが……長引けば、精神に影響が出る」


「……呪い、ですか」


ノアの声が震える。


「完全な呪いではありません」

「……嫌がらせに近いですね」


その言葉に、

詰所の空気が一気に冷えた。


「誰が」


答えは、誰も口にしなかった。

けれど、全員が同じ人物を思い浮かべている。


アオイは、俯いた。


(……やっぱり、僕のせいだ)


そう思った瞬間――

胸の奥が、ふっと温かくなる。


不安が、わずかに和らぐ。


「……?」


ユリウスが、再び魔力を確認する。


「……弱まってる?」


「何だと?」


「今、干渉が薄れました」


アオイは、何もしていない。

ただ、“怖い”と思っただけなのに。


「……今日は、ここで休め」


カイルがそう言った。


「城には戻すな」


「団長?」


「俺の判断だ」


反論は許さない口調だった。


ノアが、ほっと息を吐く。


「よかった……」


アオイは、戸惑いながらも小さく頷いた。


「……すみません」


「謝るな」


即座に返ってきた言葉。


「お前は、被害者だ」


その一言が、

胸の奥に、静かに染み込んでいった。


その夜。


騎士団の詰所の一室で、

アオイは毛布に包まれて横になっていた。


扉の外では、低い声が交わされている。


「……完全に、目をつけられたな」


「ええ」

「放置すれば、次はもっと強く来るでしょう」


短い沈黙。


「……守る」


カイルの声は、迷いがなかった。


「騎士団で、だ」


その言葉に、

誰も異を唱えなかった。


アオイは、それを知らない。


ただ、

胸の奥の温もりに包まれながら――

久しぶりに、深い眠りに落ちていった

 ユリウス(魔法騎士)

•知的で穏やか

•身長:178cm

•体重:63kg

  •髪の色:淡い金髪(白金に近い)

•髪型:肩につくくらいの長さ。

•目の色:澄んだ紫

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