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小さな嫉妬と、アオイの違和感

最近、

アオイが騎士団の詰所を訪れることは、特別なことではなくなっていた。


「アオイ、今日は何作ってきたんだ?」


レオンの明るい声に、

アオイは少しだけ肩の力を抜く。


「……今日は、クッキーです」

「この前より、少しだけ固めに焼いてみました」


「お、成長してるじゃないか」


そんな何気ない会話が、

以前の自分からは考えられないほど、自然だった。


ノアは相変わらず距離が近い。


「アオイ、これ座って!」

「ここ、風来ないから」


空いている椅子を引いてくれるその仕草に、

アオイは戸惑いながらも「ありがとう」と小さく言った。


その様子を、

少し離れた場所から、カイルが見ていた。


視線は鋭いが、

アオイに向けられるそれは、決して冷たくない。


(……見られてる)


理由は分からないのに、

背筋が伸びる。


その日の詰所は、どこか賑やかだった。


「ノア、任務の報告は?」

「あとでやります!」


「後でじゃない」

「……はい」


カイルの声に、ノアが素直に返事をする。

そのやりとりを見て、アオイは少し驚いた。


(ちゃんと、叱られてるんだ……)


自分とは、違う。

でも、だからこそ――ここは、ちゃんとした居場所なんだと思えた。


詰所を出るとき、

レオンがふと、声を潜めた。


「なあ、アオイ」

「最近、変なことなかったか?」


「変な……?」


「体調とか。変な感じとか」


アオイは、少し考えた。


「……たまに」

「胸の奥が、あったかくなることは……あります」


レオンは一瞬、真剣な顔をしたが、

すぐにいつもの笑みに戻った。


「そうか」

「無理はするなよ」


その会話を、

ユリウスが静かに聞いていた。


夜。

自室へ戻る途中、

廊下の影から、ひそひそとした声が聞こえる。


「最近、騎士団と仲良くしてるらしいわね」

「勘違いしないといいけど」


足が、止まる。


胸が、きゅっと縮む。


(……やっぱり)


そのまま部屋に戻り、

ベッドに腰掛ける。


静かな部屋で、

今日の出来事を思い返す。


笑ってくれた顔。

声をかけてくれたこと。

見守るような視線。


――それなのに。


(僕が、ここにいていい理由なんて……)


考え込んだ瞬間、

胸の奥が、じんわりと熱を持った。


不安が、少しだけ薄れる。


(……え?)


その感覚に、

アオイは小さく息を呑んだ。


まるで、

自分の感情に、何かが応えているような――

そんな、説明のつかない感覚。


その頃、詰所では。


「ノア」

「……アオイに、近づきすぎるな」


カイルの低い声に、

ノアは目を瞬かせた。


「え?」

「でも、普通に話してるだけで――」


「……分かっている」


言葉を切る。


「だが、目立つ」


ノアは一瞬黙り、

それから、少しだけ拗ねたように笑った。


「団長こそ、気にしてるじゃないですか」


カイルは答えなかった。


ただ、

無意識に握った拳に、

わずかに力がこもっていた。


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