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少しだけ、居場所

騎士団の詰所を訪れた翌日から、

アオイの日常は、ほんのわずかに変わった。


城の廊下を歩いていると、

見覚えのある鎧が視界の端に映ることがある。


「あ」


思わず足を止めると、

向こうも気づいたようにこちらを見る。


「……怪我は」


短い問いかけ。

けれど、その声は以前よりも柔らかい気がした。


「だ、大丈夫です」


そう答えると、

カイルは一度だけ頷いた。


それだけ。

それだけなのに、胸が落ち着く。


その日の午後、

アオイは副団長のレオンに呼び止められた。


「よ、アオイ」

「昨日のクッキー、評判だったぞ」


「え……」


思わず目を丸くする。


「また作ってくれないかって声もあってな」

「もちろん、無理なら断っていい」


一気に不安が押し寄せる。


(迷惑じゃ、なかったんだ……?)


「……少しなら」


そう答えると、

レオンは嬉しそうに笑った。


「助かる!」


それから、

アオイが詰所を訪れる回数は、少しずつ増えた。


通るたびに声をかけられる。


「今日は来ないのかと思った」

「ちゃんと食べてるか?」


ノアは特に距離が近かった。


「アオイ、これ見てください!」

「剣の手入れ、教えてもらったんです!」


無邪気に話しかけられるたび、

アオイは戸惑いながらも、少し笑ってしまう。


(……楽しい)


そう思ってしまったことに、

あとから罪悪感が湧いた。


城では、

相変わらず冷たい視線が向けられている。


「騎士団と関わるなんて」

「調子に乗ってるんじゃない?」


そんな声が、背中に刺さる。


ある日、

聖女の側仕えの一人が、アオイを呼び止めた。


「聖女様が、不快に思っていらっしゃいます」


淡々とした口調だった。


「ご自分の立場を、わきまえてください」


胸が、ひやりと冷える。


「……すみません」


反射的に頭を下げると、

相手は満足そうに去っていった。


(やっぱり……僕は、余計なんだ)


その夜、

詰所でクッキーを配り終えた帰り道。


「……送る」


カイルが、そう言った。


「え?」


「夜の城内は、物騒だ」


それだけの理由。


並んで歩く廊下は、静かだった。

鎧の音が、一定のリズムで響く。


「……無理はするな」


不意に、カイルが言う。


「嫌なことがあれば、言え」


アオイは、すぐに答えられなかった。


言っていいのか、分からなかったから。


「……はい」


小さな返事に、

カイルはそれ以上何も言わなかった。


部屋の前に着くと、

彼は一度だけ振り返った。


「……また来い」


命令でも、強制でもない。


ただの、言葉。


扉を閉めたあと、

アオイはその場にしばらく立ち尽くしていた。


胸の奥に残る、

あたたかい感覚を、確かめるように。


(……ここにいても、いいのかもしれない)


まだ、ほんの少しだけれど。


 レオン(副団長)

•軽口多めの兄貴分

•いち早くアオイの異変に気づく

•身長:180cm

•体重:78kg

•髪の色:深みのある赤茶

•目の色:琥珀色


 ノア(若手騎士)

•素直で懐きやすい

•アオイの「初めての友達」

•身長:175cm

•体重:65kg

•髪の色:明るめの金髪

•目の色:澄んだ空色ライトブルー


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