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嫌われてたはずなのに、騎士団のみんなが離してくれない  作者: ぷく


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不穏な気配

騎士団寮の廊下は、いつもより静かだった。


アオイは壁際を歩きながら、胸の奥のざわめきを感じていた。


(……なんだろう……)


理由はわからない。

でも、空気がどこか重い。


中庭に出ると、ノアとレオンが剣の手入れをしていた。


「アオイ」


レオンが気づいて声をかける。


「どうした?顔色悪いぞ」


「……少し、胸が……」


ノアが心配そうに近づく。


「痛いの?」


「ちがう……苦しいっていうか……」


そのとき――


遠くで、魔力の波が揺れた。


「……!」


レオンが顔を上げる。


「今の……」


「城の方だ」


ノアも立ち上がる。


空気が、ぴり、と張りつめる。


(……ミサキ様……?)


アオイの脳裏に、聖女ミサキの姿がよぎった。


あの、冷たい目。


あの、見下すような声。


胸が、ずきりと痛む。


「……ぼく……」


「行くな」


レオンが即座に言った。


「お前はここにいろ」


「でも……」


「団長に報告する」


ノアも頷く。


二人が走り去る。


アオイは、ひとり残された。


(……また……)


(何か、起きる……)


胸の奥が、熱を帯び始める。


(……やだ……)


(こわい……)


魔力が、無意識に揺れ始めた。


アオイの足元の石畳が、かすかに光る。


「……やめて……」


ぎゅっと胸を押さえる。


そのとき。


「アオイ」


低い声。


振り向くと、団長カイルが立っていた。


「……団長……」


「顔色が悪い」


カイルは、すぐにアオイの前に立つ。


「無理するな」


「……ぼく……また……」


声が震える。


「……何か……出そうで……」


カイルは一瞬、表情を固くした。


「……来たか」


そっと、アオイの肩に手を置く。


「大丈夫だ」


「俺が、止める」


その言葉に、胸が少し緩む。


「……ほんと……ですか……」


「嘘はつかない」


カイルは短く言った。


遠くで、鐘の音が鳴る。


城の方角から、魔力の波動がもう一度走った。


(……始まる……)


アオイの視界が、白くにじむ。


「……ミサキ様……」


その名前を口にした瞬間――


魔力が、はじけた。


カイルが即座に抱き寄せる。


「アオイ!」


風が巻き起こり、地面の砂が舞う。


「……やだ……やだ……」


「誰かを傷つけるの、やだ……!」


アオイの魔力は、攻撃ではなかった。


感情と同調した、波。


怒りでも憎しみでもなく――


恐怖と悲しみだけが、広がっていく。


それは、他人の魔法を弾き返すように、周囲の魔力を歪ませた。


「……これは……」


カイルは歯を食いしばる。


「……聖女の魔力と、共鳴している……」


アオイの体が、ぐらりと揺れた。


「……団長……」


「……ぼく……また……迷惑……」


「違う」


強く、抱きしめる。


「迷惑じゃない」


「……これは……」


「狙われているだけだ」


アオイの意識が、落ちていく。


最後に聞こえたのは、騎士たちの声。


「結界を張れ!」


「医務室を用意しろ!」


「アオイを離すな!」


――そして。


遠く、城の塔で。


ミサキは、窓からその光を見ていた。


「……ふふ」


「やっぱり、暴れるのね」


冷たい笑み。


「……早く壊れればいいのに」

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