番外編 熱が悪い! 後半
翌朝。
「……あれ……」
アオイはゆっくり目を開けた。
頭は少し重いが、
熱は下がっている。
横を見ると――
椅子で眠るカイル。
床に座ったままのノアとレオン。
壁にもたれているユリウス。
「……え……」
「……なに……この……」
カイルが目を覚ました。
「……起きたか」
「……熱は下がった」
「……あの……」
アオイはおずおず聞く。
「……ぼく……なにか……しました……?」
ノアがにやっと笑う。
「した」
「めちゃくちゃ」
「……え?」
レオンも続ける。
「団長の名前呼びながら」
「行かないでって」
「……」
ユリウスが冷静に言う。
「“すき”とも言っていました」
「……」
「ここが好きだとも」
アオイの顔が、みるみる赤くなる。
「……うそ……」
「本当」
「……覚えて……ないです……」
「……死にたい……」
布団をぎゅっと掴む。
「……忘れてください……」
「……全部……」
カイルが低く言った。
「……無理だ」
「……熱のせいだとは分かっている」
「……だが……」
「……嫌ではなかった」
アオイの耳まで真っ赤になる。
「……団長……!」
ユリウスが小さく笑った。
「……安心していい」
「記憶がなくても、事実は変わりません」
「……あなたは……」
「我々に守られている」
ノアが肩をすくめる。
「逃げられないね」
レオンも笑う。
「騎士団からは」
アオイは布団に潜り込んだ。
「……見ないでください……」
「……しばらく……」
「……顔……見れません……」
部屋に、やわらかい笑い声が広がる。
アオイは思った。
(……ここ……)
(……ほんとに……)
(……居場所なんだ……)
窓から、朝の光が差し込んでいた。




