魔力干渉の正体
翌日。
騎士団寮の中庭には、
またミサキの魔法の光が広がっていた。
「……今日も調整します」
そう言って、ミサキは手を掲げる。
白い光が、ゆっくりと地面に降り注ぐ。
(……来なさい)
(……反応しなさい、異物)
ミサキの視線は、
回廊の影に立つアオイを捉えていた。
⸻
「……また……」
アオイは、胸を押さえた。
昨日よりも、はっきりと苦しい。
(……やっぱり……)
(……聖女様の魔法……)
呼吸が、少し乱れる。
視界が、ぐらりと揺れた。
「アオイ!」
レオンが駆け寄る。
「おい、大丈夫か!」
「……だいじょう……ぶ……」
だが、膝が崩れた。
その体を、ノアが受け止める。
「団長呼んでくる!」
⸻
ミサキは、その様子を見て
小さく口角を上げた。
(……倒れた)
(……やっぱり……弱い)
だが、すぐに表情を曇らせる。
「……まあ……」
「また……?」
「私の魔法が……負担になっているのかしら……」
周囲の魔導士たちはざわめいた。
「まさか……」
「聖女様の魔法が原因だなんて……」
「……そんな……」
ミサキは、わざとらしく胸に手を当てる。
「……もし……私のせいなら……」
「……訓練は控えます……」
その姿は、
誰が見ても“心優しい聖女”だった。
⸻
医務室。
アオイは、ベッドに寝かされていた。
「……熱も出てるな」
レオンが言う。
「……すみません……」
「だから謝るなって」
ノアは腕を組む。
「最近、倒れすぎだろ」
「……」
カイルは黙ったまま、
アオイを見下ろしていた。
「……聖女の魔法の時だけだな」
ぽつりと、言う。
「……え?」
「……異変が出るのは、決まっている」
「……」
ノアが息をのむ。
「……じゃあ……」
「断定はしない」
カイルは低く言った。
「だが……偶然にしては、重なりすぎだ」
⸻
そのころ、別室。
ミサキは、椅子に座りながら
不機嫌そうに爪をいじっていた。
「……まだ……壊れないの?」
(……しぶとい……)
(……でも……)
(……もっと……強くすれば……)
「……泣き叫べばいい」
「……騎士団の前で……」
そう呟いて、
ゆっくりと笑った。
「……私が……正しいって……」
「……証明される……」
⸻
夜。
アオイは、眠れずにいた。
胸の奥が、ひりひりする。
(……また……迷惑……)
(……やっぱり……)
(……ぼく……いらない……)
扉が、静かに開いた。
「……アオイ」
カイルだった。
「……眠れないか」
「……はい……」
「……明日から、しばらく……」
「聖女の魔法には近づくな」
「……え……?」
「……理由は、まだ言えない」
「……だが……」
「……お前を守るためだ」
アオイは、目を見開いた。
「……守る……?」
「……倒れるたびに……」
「……俺は……」
一瞬、言葉が詰まる。
「……腹が立つ」
「……?」
「……誰かに……」
「お前が傷つけられるのが……」
その低い声は、
怒りと焦りが混じっていた。
「……だから……」
「……無理をするな」
アオイの胸が、
きゅっと締めつけられた。
「……すみません……」
「……違う」
カイルは言い切る。
「……お前は、悪くない」
その言葉に、
涙が、にじんだ。
⸻
その夜。
ミサキは、窓から騎士団寮を見下ろしていた。
「……守る……?」
「……笑える……」
「……あんな……役立たず……」
「……私の方が……必要なのに……」
闇の中で、
彼女の瞳だけが、
冷たく光っていた。




