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嫌われてたはずなのに、騎士団のみんなが離してくれない  作者: ぷく


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20/31

閉じられた檻と、開いた腕

城からの使者が現れたのは、その日の午後だった。


「聖女ミサキ様より、直々の召喚です」


静かな声だったが、拒否を許さない響きがあった。


「……行く必要はない」

カイルが即座に言う。


「拒否すれば、騎士団に処罰が下ります」


その言葉に、場の空気が張りつめる。


「……行きます」


アオイが、一歩前に出た。


「アオイ」

「大丈夫です。僕のせいで、みんなが困るのは……嫌です」


「一人で行かせる気はない」

カイルは低く言った。

「俺も同行する」


そうして、アオイは騎士団と共に城へ向かった。



聖女の部屋は、白く静かだった。


「いらっしゃい、アオイさん」


ミサキは柔らかく微笑む。


「騎士団に守られて……ずいぶん大切にされていますのね」


「……はい」


「あなたの力は、本来ここにあるべきです。

騎士団の“管理物”になるものではありません」


胸がざわつく。


「……僕は、自分で決めました」


「逃げているだけでは?」


その言葉に、アオイの足元が淡く光った。


「……っ」


薄い膜のような光が、体を包む。


「また……その力」


ミサキが一歩引く。


「攻撃じゃないです……

守るだけです」


そのとき、扉が開いた。


「それ以上、近づくな」


カイルの声。


「彼は、俺の管轄だ」


「聖女よりも?」


「比べるな。

彼は、物じゃない」


沈黙のあと、ミサキは視線を逸らした。


「……今日は、ここまでにしましょう」



騎士団へ戻る道すがら、アオイの足は震えていた。


「……すみません」


「謝るな」

カイルは短く言う。

「よく、立った」


その夜。


部屋に戻っても、アオイは眠れなかった。


(怖かった……)


扉が、そっと叩かれる。


「……起きているか」


「カイルさん?」


「眠れないなら……少し、来い」


通されたのは、簡素な寝室だった。


「……ここ?」


「見張りを兼ねる。

今日は、一人にするなと判断した」


言い方は堅いのに、毛布を差し出す手は優しい。


並んで横になると、距離が近すぎて息が詰まる。


「……すみません」

「黙れ」


低い声。


「……震えている」


気づかれていた。


「城で……思い出しました」

「何を」

「……嫌われてたこと」


沈黙。


カイルの腕が、そっと伸びる。


「寄れ」


有無を言わせない声なのに、力は弱い。


アオイは、ためらいながら体を寄せた。


「……怖かったな」


その言葉だけで、喉が熱くなる。


「……ありがとう、ございます」


顔を上げた、そのとき。


額に触れていた指が、頬に滑り――

距離が、なくなる。


ほんの一瞬。


唇が、軽く触れた。


触れただけの、短いキス。


「……っ」


心臓が跳ねる。


カイルはすぐに離れた。


「……眠れ」


低い声。


「勘違いするな。

これは……落ち着かせるためだ」


言い訳のような言葉。


だが、腕は離れなかった。


背中に、確かな温度。


アオイは目を閉じる。


(……檻みたいなのに)


でも、その腕は――

拒めないほど、安心できた。


守られるだけの場所じゃない。


閉じられた檻の中で、

開いた腕に、包まれている。


そんな夜だった。


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