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嫌われてたはずなのに、騎士団のみんなが離してくれない  作者: ぷく


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19/31

聖女の要求、騎士団の沈黙

翌朝、騎士団本部に緊張が走った。


「正式な通達です」


使者が差し出した封書を、ユリウスが受け取る。

中身を読んだ瞬間、その眉がわずかに動いた。


「……聖女ミサキより。

“アオイを城へ返還するように”との命令です」


その言葉に、詰所が静まり返った。


「来たか」

レオンが低く呟く。


「理由は?」

ノアが問う。


「“聖女の補佐として必要”だそうです」

ユリウスは淡々と読み上げる。

「魔力反応の管理、生活補助……名目はいくらでも並んでいる」


アオイは、壁際でその話を聞いていた。


(……やっぱり)


胸の奥が、冷たくなる。


「断る」


即答したのは、カイルだった。


「団長」

ユリウスが静かに呼ぶ。


「命令だ」

「……それでもだ」


カイルは一歩前に出る。


「アオイは、騎士団の保護対象だ。

城に戻せば、利用される」


「だが、聖女の権限は王直属だ」

レオンが言う。

「真正面から逆らえば、騎士団が処罰される」


その言葉に、空気がさらに重くなる。


「……俺たちの問題だ」

ノアが歯を食いしばる。

「アオイを、また一人にするかどうかの」


視線が、自然とアオイに集まった。


「……僕」


声が震える。


「行った方が、いいんですよね」


「行くな」


カイルの声は低く、強かった。


「お前が決めることだ」


「でも……」


「怖いなら、怖いと言え」


アオイは唇を噛む。


「……怖いです」


それだけで、喉が詰まった。


「城に戻ったら、また……

役に立たないって、言われます」


沈黙。


「……だから」


アオイは、ぎゅっと拳を握る。


「行きません」


その言葉に、ノアが息を呑む。

レオンは目を細め、ユリウスは小さく頷いた。


「本人の意思だ」

ユリウスが言う。

「無理に連れ戻す理由はない」


「だが、通達は無視できん」

レオンが言う。


「なら、条件を出す」

カイルが告げる。


「騎士団管理下でのみ、アオイを使う。

城には渡さない」


「……交渉か」


「命懸けの、な」


そのとき、アオイの胸が熱くなった。


(……僕のせいで)


「違う」


カイルが、アオイを見る。


「お前のせいじゃない」


「でも……」


「選んだのは、俺たちだ」


その言葉は、はっきりしていた。


「守ると決めた」


その夜。


アオイは、一人で中庭に立っていた。


(僕が、力を使えたら……)


そう思った瞬間、胸の奥がじん、と熱を帯びる。


足元に、淡い光。


「……また」


魔法陣が浮かび上がる。


だが、今度は違った。

薄い膜のような光が、周囲を包む。


「……これ、結界?」


自分で、発動させた。


「……できた」


小さく呟いたその声は、震えていた。


守られるだけじゃない。

守る側にも、なれるかもしれない。


「……使える」


そのとき、背後で足音。


「アオイ」


カイルだった。


「……見てました?」


「ああ」


光の膜を見つめ、低く言う。


「選んだな」


「……はい」


「なら、もう逃げるな」


そう言って、アオイの前に立つ。


「俺の後ろにいろ。

だが、立つことも覚えろ」


その言葉は、命令のようで――

初めて、対等に扱われた気がした。


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