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嫌われてたはずなのに、騎士団のみんなが離してくれない  作者: ぷく


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甘い匂いと、強い視線

朝の訓練場は、いつもより騒がしかった。


「今日は合同訓練だ」

カイルの声が響く。


騎士たちが集まり、剣を構える音が重なる中、アオイは端のベンチに座らされていた。


「見学だけでいいの?」

ノアが尋ねる。


「……うん。カイルさんに、危ないからって」


その瞬間、視線を感じた。


少し離れた場所で、カイルがこちらを見ている。

剣を持ったまま、動かず、まるで“監視”しているようだった。


「団長、怖い顔してるぞ」

レオンが小声で言う。


「……怒ってるのかな」


「違うな」

ユリウスが静かに言った。

「周囲を見ている。アオイの周りだけ、特に」


その言葉どおりだった。


他の騎士が近づくたび、カイルの視線が鋭くなる。

アオイが立ち上がろうとすれば、すぐに歩み寄ってくる。


「水を飲め」

「え、あ……はい」


手渡された水筒は、すでに冷えていた。


「日陰にいろ」

「……はい」


命令の形をしているのに、全部が“気遣い”だった。


だが、周囲の騎士たちはざわつき始める。


「過保護すぎないか」

「団長、あんな顔する人だったか?」


ひそひそとした声が聞こえる。


昼休憩。


アオイは例の焼き菓子を持って、詰所に向かった。


「昨日の……余ったので」

「余ったにしては多いな」


レオンが笑う。


「団長用が一番多いけどな」

ノアが指摘すると、カイルは咳払いした。


「……食う」


それだけ言って、一番大きな菓子を取る。


甘い匂いが部屋に広がる。


「……うまい」


ぽつりと漏れたその言葉に、アオイの胸が少し軽くなった。


そのとき。


扉の外で、誰かが足を止める気配がした。


「……ここ、騎士団の詰所よね?」


聞き覚えのある声。


聖女ミサキだった。


空気が一気に冷える。


「何の用だ」

カイルが低く言う。


「視察ですわ。

アオイさんの様子も、気になって」


その視線が、菓子を持つアオイに向けられる。


「……ずいぶん、大切にされていますのね」


「俺の管轄だ」


即答だった。


ミサキの口元が、かすかに歪む。


「聖女よりも?」


「比べる意味がない」


その言葉に、ノアとレオンが息を呑む。


アオイは、何も言えなかった。


ただ、胸がざわざわしていた。


ミサキは一歩近づく。


「アオイさん。

あなたの力、城で役に立ちますわ」


「……嫌です」


声が震えたが、はっきり言った。


「ここに、います」


沈黙。


「……そう」


ミサキは微笑み、踵を返す。


「では、また」


扉が閉まったあと、誰もすぐには動けなかった。


「……団長」

ノアが言う。

「完全に敵に回したぞ」


「構わん」


カイルはアオイを見る。


「怖かったか」


「……はい」


「なら、離れるな」


そう言って、アオイの肩に手を置く。


一瞬だけ。


けれど、その温度は、はっきりと残った。


甘い匂いの中で、

アオイは思う。


守られているのに、

誰かの“もの”になりつつある気がして――


それが、少しだけ怖かった。


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