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微笑みの向こう側

騎士団の訓練場は、朝の光に満ちていた。

剣がぶつかる乾いた音、鎧の擦れる低い響き。その中心で、アオイは端の木陰に立っていた。


「……やっぱり、ここにいると落ち着かないな」


そう呟くと、すぐ隣から低い声が返る。


「無理に慣れようとしなくていい」


カイルだった。いつの間にか、自然に隣に立っている。

その距離の近さに、アオイは一瞬だけ肩をすくめたが、不思議と逃げたいとは思わなかった。


「でも、迷惑じゃ……」

「なら、俺がここに立たない」


即答だった。

言葉の裏に迷いがなくて、アオイは言葉を失う。


最近、こういう場面が増えていた。

何かあれば、必ず誰かがそばにいる。

手を伸ばせば届く距離で、逃げ道を塞ぐように――守るために。


「団長、過保護すぎますよ」


レオンが剣を肩に担ぎながら歩み寄ってくる。

その表情は軽いが、視線は鋭く、常にアオイの周囲を確認していた。


「アオイ、昼は一緒に食堂行こう。今日はノアが張り切ってる」

「え、ノアが?」

「はい! アオイさんの好きそうな甘いパン、確保してます!」


少し離れた場所で、ノアが勢いよく手を振る。

その様子に、アオイは思わず小さく笑った。


――こんな風に笑える場所が、ここにある。


その事実が、同時に怖くもあった。

失ったら、きっと耐えられない。


「……どうして、みんな」


ぽつりと漏れた声に、今度はユリウスが答えた。


「理由が必要ですか?」

「え?」

「あなたが傷つけられるのを、見過ごせない。それだけです」


淡々とした口調だが、魔法使いの目は真剣だった。


その瞬間、アオイの胸の奥が、じんと熱くなる。

守られているだけの存在だと思っていた自分が、

いつの間にか「守られる理由」になっている。


――その時だった。


訓練場の外から、冷たい視線が突き刺さる。

振り向くと、そこに立っていたのは、聖女ミサキだった。


微笑んでいるのに、目は笑っていない。


「……見られてた」


カイルが一歩、前に出る。

無言で、アオイを背に庇うその背中は、迷いがなかった。


アオイは、その背中を見つめながら思う。


守られているだけじゃない。

――ここにいたいと、初めて強く願っている自分がいる。

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