聖女の隣で、
眩しいほどの光が消えたあと、
アオイは自分が床に座り込んでいることに気づいた。
冷たい石の感触が、じんわりと掌に伝わる。
「……え?」
状況が理解できないまま顔を上げると、
高い天井と、見知らぬ人たちの姿が視界に飛び込んできた。
豪華な服を着た大人たち。
鎧を身にまとった騎士。
そして、すぐ隣には――白い衣装の少女。
「聖女様……」
誰かがそう呼ぶと、
少女はびくりと肩を震わせ、困ったように微笑んだ。
「……あの、私……」
不安そうな声。
けれど、その声はすぐに歓声にかき消された。
「成功だ……!」
「ついに聖女が……!」
その輪の中心にいるのは、彼女だけ。
(……じゃあ、僕は)
アオイの喉が、きゅっと詰まる。
期待も、祝福も、
一切こちらには向けられていなかった。
やがて、一人の男が前に出た。
威厳のある佇まいで、場を一瞬にして静める。
「確認する」
冷静な声だった。
「この場に呼ばれたのは、聖女一名」
「……そちらの少年は?」
無数の視線が、アオイに集まる。
心臓が跳ねる。
身体が、無意識に縮こまった。
「魔力反応は微弱」
「……巻き添えですね」
淡々と告げられる言葉。
「召喚に混ざり込んだだけか」
「運が悪かったな」
――運が、悪い。
その言葉が、胸に残った。
「では、どうしますか」
「城に置いておくだけ無駄では?」
誰かのそんな声に、
アオイは唇を噛みしめる。
(ごめんなさい)
声には出せなかった。
でも、心の中では何度も謝っていた。
迷惑をかけてしまったこと。
期待に応えられなかったこと。
「……ひとまず、城内に留める」
「聖女様の邪魔にならないように」
それだけで、話は終わった。
⸻
与えられた部屋は、城の奥の奥。
人の気配がほとんどない場所だった。
窓は小さく、
昼でも薄暗い。
「……ここで、いいです」
案内してきた使用人にそう言うと、
相手はほっとしたような顔をした。
「余計なこと言わないのね」
「助かるわ」
扉は、静かに閉められた。
一人になると、
急に胸の奥が空っぽになる。
(戻りたい……)
でも、戻れない。
そう言われた言葉が、頭から離れなかった。
食事は決まった時間に運ばれてきたが、
量は少なく、冷めていることが多かった。
声をかけても、返事はない。
廊下ですれ違えば、
視線を逸らされるか、
小さく舌打ちされる。
「聖女じゃないくせに」
「なんでいるの?」
その言葉を聞くたび、
アオイは「ごめんなさい」と心の中で繰り返した。
――自分は、いらない存在。
そう思い込むのに、
時間はかからなかった。
夜、ベッドに横になっても眠れない。
知らない天井を見つめながら、
アオイは小さく息を吸った。
「……迷惑かけないようにしよう」
それだけが、今できることだった。
〜アオイ〜
•17歳・高校生
・ 身長:167cm
•体重:52kg
•お菓子作りが得意(特に焼き菓子)
•自己肯定感が低く、謝るのが癖
•優しくて我慢強い




