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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ダム

作者: シロクロ

テレビを見てると水関係の事故や事件をよく見る。時折……意思があるかのような感じで息苦しくなる


ゆっくりと目を瞑ると沈む感覚が起こり、ゆっくりと息苦しく、ゆっくりと落ちて、ゆっくりと深く沈む感覚がより一層伝わる


ゆっくりと目を開けると汗で身体中がまとわりつき、息も少し荒くなってしまう


共有感覚(シナスタジア)……


そう言われる現象がある。私もそれに近い感じがする。私が勝手に名付けた……そして、死者が私を見て何かを訴えかける


文字が濡れて、青く、そして深く、色が私に訴えかけてくる


私がどうにも出来ないのは分かる。けど、それでも、死者は私の前に現れて訴えかけて、時にはテレビを使って死者が自分の居場所、自分を見つけて欲しいと訴えてかけてくる


私はどうにも出来ない……そう伝えるがそれでも何度も何度もと


私は目を伏せて……その死者の訴えを受けてたまに動ける範囲で死者の訴えを叶えた


私の前……


私が水に落ちる時は常に死者が私の手を引っ張る。何時も……水死体の死者が多い


今日も……その死者によって。それも……様々死者が私の前へと私を導く


体が拒否をしても死者により訴えられ痛みが強くなる。物理ではなく、心の痛みを


私は死者を見て……伝えた


「行くよ」


そう。ゆっくりと目を瞑る。実際に行かなければならないこともあれば……こうして夢の中で叶える事もある


今回は死者の望む形……夢の中で叶える事にした。深く深く体が落ちて……何時ものように体に無数の手が纏わりつく


ゆっくりと目を開けると夢の中の水で息がしにくく、一人の死者が私の前に


ゆっくりとしゃがみ込むと死者は私の手を優しく包み込む


「……そう」


水死体の死者の多くは畏怖や怨み、恐怖、そして……暗い闇が多い


けど、この死者……女性は柔らかい笑みを浮かべていた。感情も優しく……悪く感じない。周囲の死者も……


やがて水の世界からゆっくりと息のある広い地上へと広がった。死者の記憶が私の中へと流れていく


看板が……水没地域によりダム建設予定地と書かれていた。死者を見ると悲しげな顔をして私の手を引っ張る


トンネルの前へと出ると古く……そして、ゆっくりと中へと。湿った感覚と懐かしのある苔が覆われた岩肌と古きトンネル


死者が案内するのは珍しくは無い……ただ、この死者は見つけて欲しいのではなく、死者が居て、本当に存在して知って欲しい……そんな感情が流れる


長かったトンネルを抜けると日差しの明るさが目に差し込み、手で覆って暫くすると村の家並みが並んでいて


子供が遊ぶ広場や、役場、学校等の必要最低限の建物と数十軒の家が並んでいた


「……」


瞬間に場面が変わって役場の前で村長みたいな人と市の役員が言い争うのが目に入る


その後ろには死者……私の横に居る女性が立っていた。声は聞こえないが……反対してるのは感覚で伝わる


女性を見ると深い後悔の感情が伝わってきたのと同時に場面が反転した


それは真っ暗闇の中で村長らしき人が何かを抱えて井戸へと投げ捨てるのを。女性が必死に訴え、何かを言ってるのが。女性の感情は暗く悲しみの感覚と手を握るのが少しだけ強く


「……」


場面が変わるとダムの建設が始まったのと、村が反対し残っている景色が。進むが活気が以前に比べて少し暗い


そして、チラシが目に入った


行方不明のチラシだった。目を見開いて女性を見ると深い後悔と止めなければいけなかった意思、複雑で暗い感情が流れていく


「これを教える……」


聞こうとしたのと同時に物凄い質量の水が流れてきて押し流されていく


家という家、建物全てを押し流して村は沈んでいく。避難したのだろうか……それすらも分からない


それ程に突然の出来事。でも、これなら見殺し……殺人になるのに話題にすらならない


それ所か、そんな話すら聞かない。女性を見ると少しだけ悲しげな笑みを浮かべ、私の手をゆっくりと


女性の後ろの先には村人の死者……幽霊が漂い、女性は私の指に少しだけの傷を入れて離れてしまう


その時に、更なる勢いと共に全て押し流されて、私は目を開けて飛び上がった


息が荒く、息苦しく、汗が服に着いて……どれ程長く同調していたのか……外は暗く、私は頭を抱えた


「そんな顔しないで欲しい……」


私はゆっくりと窓の外を見た


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


次の日になり、私は電車、バスに揺られてトンネルの前へと。古びていて、文字も旧式の文字で掠れて読めない


でも、あの夢の中で見たトンネルだった。中へと入ると少し涼しく、人の手が行き届いてない自然に帰ろうとしていた


中には苔むした車が放置されていて、中はもう完全に崩壊していた。それを横目にトンネルの外。その先は湖……ダムで出来た貯水された水が広がっていた


夢の中で見た世界まんまの状態。違うのは村ではなく水だけ。ゆっくりと行ける範囲まで歩いていく


当時のままなのか……それとも、管理まではしてないのか、打ち付けられた紙を見た。もうぐしゃぐしゃで文字すら見えない紙


ダムはこの先……と思ったけど、あの夢よりかは思いの外遠くの方で、ここは中間地点だった。だから、人の手が行き届いてない


手には花。鞄を見てから、水……近くのガードレールまで歩いて、花を置いた。そして鞄を降ろして、子供の為に玩具とお菓子、大人の人や女性にはご飯やお酒、食べ物を置いた


賞味期限は切れてないが、時間が経つと切れて、そして食べれなくなり消えてなくなる。もう食べないと決めたご飯だから関係は無かった


お供えをして手を合わせてゆっくりと目を瞑り黙祷した


その時に、手を合わせていた手に包み込む様な感触があり、ゆっくりと目を開けると


「そう……これの為に私を呼んだのね」


女性が少しだけ顔の晴れた笑みをしていた。弔って欲しい、知って欲しい、私だけでも


そんな感じの感情が私の中へと溢れた


女性は顔を後ろの方へと向けると水面には村人の住人が立っていた


ダム建設によって沈んだ村……何で死者が……


「そう……そうか……辛かったね……私はそっちに行けない……ごめんね」


一つの推測が浮かんでから私は彼女達にそう言うと少し寂しげだけど、満足したのかゆっくりと消えていく


気が付けば涙を流していた。やっぱり……私には重すぎる死者の思い


鞄からタオルを手にガードレールに縛ってから残りの物を差してから元きた道へと


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


テレビを見てると数十年越しの殺人のニュースが流れてきた。あのダムの場所が映し出され、時効となったが、過去の法律とかを合わせて……時効ではなく市に対しての遺族賠償金が行われていた


私が推測したものが偶然にも当たってしまって……少し複雑な気持ちになった


テレビでは、とあるネットユーザーがあのダムの殺人や死者に関しての調べていて、真相となるのか仮説を立てた上で調べていたらしい


ただ、そのネットユーザーはほんの軽い気持ちだったらしいが、大事になるとは思わなかったのか驚きの気持ちがあったらしい


あの死者にとっては未練が解消されたとは思う。けど……それは人間のただの業で消えた。そして、復讐とは似たモノで村を沈めた。そんな感じがする


今の私には関係は無い……関係出来ない話だから無視するしか無かったが……


ただ……


「何で私に取り憑くかな……」


あの女性は成仏した……そう思っていたのに、濡れた女性として私に取り憑き、私の死者……水死体の意志と思い……願いの手伝いとして残ってしまってる


これは私にとっては想定外で想像の範疇を超えてしまったから


ただ、これだけは分かる


私はこの先長くないと……彼女がそう私に教えてくれて、少しでも寂しくないように、そして守るように私の最後を見ると


私は苦い笑みを浮かべてしまう。長くない……分かっていたから……今更になって後悔が残ってしまう


彼女を見て少しでも長く生きないとそう思った


『元ネタは、とある某有名なダムとトンネル。そしてとあるアニメの影響もあります


これは実在とは関係ない創作の物語です』

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