3度目にご期待くださいませ
「この国の姫を我が妻として迎えよう」
突然何もない空間から現れた眩い光を放つ男がそう言った瞬間、ご指名を受けたこの国の姫こと私、ミリアージュは思ったのです。
(あ、今回は光の精霊バージョンですのね…)
ーーー
私が生まれたこの国にはかつて精霊たちが人と共存していたそうです。
けれど数百年前、最も精霊に愛されていたお姫様が魔王の花嫁に乞われたため、精霊たちが力を合わせて魔王を討伐。力を使い果たした精霊たちは長い眠りについて今に至ると言われております。
けれど幼い頃からその話を聞くたびに私の周りでは大爆笑がおきていました。
「かっこつけて闇の精霊バージョンで出て行ったら魔王に間違えられたんだぜ…!」
「お姫様に怖がられたショックで引きこもった王様をみんなで慰めに行ったのよね」
「100年以上うじうじしてたもんなー」
そんな裏話を教えてくれるのは私にしか見えていない、自称・精霊たち。
彼らは私が物心つく前から当たり前のように私のそばを飛び回って、好き勝手おしゃべりしていたり困ったときはほんの少し手を貸してくれる不思議な存在でした。自分にしか見えないのを良いことに、こっそり父様の秘密を探ったり兄様の青春を野次馬させたりしたのは内緒ですわ。
そんな彼らの話を総合すると、私はどうやらおとぎばなしのお姫様の生まれ変わりらしいです。
彼らの王様、精霊王はお姫様の魂を愛していたので精霊たちに愛し子としてお姫様を守らせて、自分は16歳の誕生日に求婚に現れたそうですわ。
ところが、クールな大人(笑)を演出しようと闇の精霊モードで行ったところ箱入りのお姫様に魔王と間違えられて大変怯えられたそうです。
そりゃ突然暗闇を背負った男が自分を攫いにやってきたら怖いですよね。
そしてお姫様に拒絶された精霊王はショックのあまり精霊界に引きこもり、心配した精霊たちが慰めに行った、と。
その結果人間界からは精霊たちが一時的に消え、百年後に精霊王が立ち直った頃には人間たちは妖精がいない生活に慣れており、肝心のお姫様ももう亡くなっていたそうです。
失恋したからって100年も引きこもる豆腐メンタルのくせに、生まれ変わりにまた精霊たちを遣わせてくる粘着さが気持ち悪いだなんて思ってませんわ。
幼いころから精霊たちに大人の裏話を聞かされた私は、愛し子として大切に育てられた前世のお姫様と違い少々図太く育ったようです。
そんな私の16歳の誕生日の祝宴で
私の魂を愛してくださっているというストーカー…ごほん!精霊王様が煌びやかに姿を現したのです。
前世の反省を活かして今度はキラキラ眩しい光の精霊バージョンで登場です。
「姫よ、ミリアージュよ、どうか精霊界に共に来ておくれ」
あら、てっきり強制かと思っておりましたが一応お願いという体裁なんですのね。
でしたら…
「お断りいたしますわ」
「なっ…!?」
「ミリアージュ?!」
精霊王の誘いを断るとは思っていなかったのか人間たちも精霊たちもざわざわしております。
「どうしてだよミリアージュ、精霊王が今日迎えに来ることは言ってあっただろう?!お前も身の回りの整理をしていたじゃないか!」
幼い頃から私のもとによく来てくれていた精霊たちが非難の目を向けてきます。
「だって私、もう心に決めた方がおりますもの」
「そんなはずはない!精霊たちに見張らせていたのだから!」
まぁやっぱりストーカー!最初の神々しさが薄れた精霊王が声を荒げます。
その言葉に精霊たちを見ると気まずいのかみんな目を逸らします。幼い頃から側にいてくれる秘密の友達のように思っていたので見張りと聞いて寂しくなりましたが、罪悪感を持ってくれてるなら彼らもきっと友情を感じてくれていたのでしょう。
それに裏切っていたのは私も一緒。
「精霊たちも私の夢の中には入って来られませんからね」
「夢…?ま、まさか」
「そのまさかですわ。約束の時間ですわよ魔王様」
「全く、呼ぶのが遅いぞミリアージュ」
私の影から突然現れた黒ずくめの男に周囲はもう展開についていけません。
「ミ、ミリアージュ、その男を魔王と呼んだか?」
「ええお父様、ご紹介が遅れましたがあなたの義理の息子になりますのよ」
そう、前世の私は精霊王(闇バージョン)を魔王と勘違いしたけどこの世界には本当に魔王もいるのです。
普段は魔界に引っ込んでいるので人間界には干渉しないが、どうやら今世の私の魂は精霊王だけじゃなく魔王にもお気に召されたらしく(前世と根っこは同じだが前世は純粋培養され過ぎてて惜しかったらしい)、私の夢の中に入ってきては口説いてきたのだ。
考えてみてほしい。精霊たちは遣わすけど全く姿も見せずいきなりプロポーズしてくるストーカーと、毎夜夢に会いに来てくれて熱烈に口説いて来るイケメン。どちらに惹かれるのがかということを。
「そなた魔族に人間界を売るつもりか?!」
「あら心外ですわ。魔王様が抑えているからこそ魔族は魔界から出ずに人間界に入って来ないのです。私1人が嫁いだとてそれは変わりません。むしろ魔界と人間界をつなぐ架け橋にもなれるというもの」
「ミリアージュ、どうして…」
魔王に後ろから抱きすくめられている状態の私を見て精霊王は呆然と呟きます。
「申し訳ありません。来世へのアドバイスとしてはぜひ精霊たちに小細工などさせず、最初からご自身でいらしてくださいませ」
まあ魔王と結ばれたら同じ寿命を貰えるらしいから来世がいつくるのかは知りませんけど。
「それではみなさま、ご機嫌よう。お父様、たまには里帰りするようにいたしますね。」
これ以上ストーカーに粘着されては堪らないので、私は言い逃げて魔王と影に消えて行った。
精霊王は今度は千年単位で引きこもることになるのですが、精霊たちは新たな恋に目を向けるアドバイスをお薦めしておきますわ。
勢いで書いたので我ながらすっ飛んだ展開です。




