「人さらい」
「くそたは父親を連れていったのじゃな」
「それが違うんです。話しを続けてよろしいですか」
「よかろう、続けなさい」
「そこで、くそたはあほーだからその話しを父親にしてしまったんです。
そうしたら、くそたの父親はおまえは本当あほーだなあと笑って、
そのオヤジは人さらいだって言うんです。
そんなうまい話しがないと言って、
くそたにもわかるように説明したんです。
それで、くそたはあほーだが素直な性格だから、
父親の言うとおりに納得して次の日行くのをやめたんです。
次の日、その変なオヤジが公園に行くと、
一人の少年がいました。
当然ですが、くそたはいません。
そこで、そのオヤジが、
くそたはどうした、
といきなり訊くと、
あほーのくそたですか、
そうだ、
と答えると、
くそたの近くに行くだけであほーが移りますから、
あいつが来たら逃げます
とその少年が答えたんです。
それで、
そのオヤジはそういう事情でくそたがいないのか
と勘違いして、
それじゃ、
このカミサンの像をくそたの机におまえの手でおいて置け、
いいな、もし、約束を破ったら殺すからな
と怖い顔をしたんです。
その変なオヤジが脅すものですから、
その少年は怖くなり、
そのオヤジから像をおそるおそる受け取って、
はい、
とだけ言って、走るように逃げていったんです」
「ふーん、よくわからん話しじゃな」
教授は首を傾げた。




