偏愛
塔で目の前が真っ白になったあと、また異世界転生したらしい。
目が覚めると、大学のような教室にいた。
椅子に座っていた私を見るやいなや、やっと起きたかというジト目で手に顎を乗せ見てくる者がいた。
「す、すみませ――」
「いいの。ずっとこの瞬間を待っていた」
「え!?」
魔王や古い木造家屋の人以外にもいたのか、日本語が話せる人?が。
近づくな否や、しっぽをこすりつけてきては教壇に戻っていく。
「――ッ!」
かわいい。可愛すぎる。
ただ、さすがに獣だからか、獣臭い。
「い、いやあ、私はキツネ娘が好きなんで――」
恥ずかしくて、ごまかす。
「私だけを見て」
蒼い瞳に吸い込まれそうになる。
「……はい」
手をひかれ、連れていかれる。
「ところで、あなたは誰なんですか?」
「私はシュレ、覚えていない?」
「……」
誰だ?そんな外国人みたいな人なんて……
あの猫なのか?
「近所に住んでいた、野良猫?」
「正解!」
そうだったのか。
前回、親切に魔法を教えてくれた理由に、合点がいった。
あれ?前回?
『
ほー、████、そういうのもあるのか。
いや、私は……、目の前の獣人にどうやら魔法について習っているようだった。
塔で目の前が真っ白になったあと、また異世界転生したらしい。
魔法を一通り見よう見まねで習った後、名残惜しそうな獣人をしり目に魔王の気配がする方角へ向かった。
』
――――
――
記憶を振り返っていると、そういえば――
「ねえ、どっちが良い?」
シュレはそう言うと、2つのハーネスを取り出してきた。
首程度の太さと明らかに使えないものを見せる。
当然、前者の首輪のハーネスを選ぶ。
シュレは、少しつまらなそうな顔をしたかと思うと、
これからの楽しみに取っておきます、と小声でつぶやいた。
香ばしい香りが鼻腔をくすぐる。体がふらつく。
シュレが体を支えてくれる。
「大丈夫?家に急ぎましょうか」
「はひ」
吐いた言葉は、ろれつがまわなくなっていた。
そう、これはシュレのことをより知るため、だkら。
END17.偏愛






