現代世界線
「帰って、来たのか?」
気が付くと横断歩道を渡り終えたのか、なんとも中途半端な位置に立っていた。
買い物帰りらしく、手にはレジ袋が握られていた。
帰るか。魔王を倒すまでのことを振り返りつつ、家路へ着いた。
今までの旅路が脳裏によぎる。
旅人にもかかわらず、皆にとても良くしてくれたことを思い返す。
勇者あるあるなのか、不法侵入という概念がないのか、言葉が伝わらないにも関わらず、
暖かく出迎えてくれたことを。
『あの、これって』
『Est-ce que ça va avec un équipement aussi médiocre ? Emportez-le avec vous, vous êtes un « héros », non ?』
『ご、ご、ご、ご、ごめんなさい!大切な壺割ってしまいました』
『ठीक है, ठीक है, ये पैसे ले लो।』
『異世界にも図書館あるんだなあ』
『Melfer nja harmie?』
そのような物思いにふけっていると。
「えっ、なんで?窓、い、家が……ない??」
自宅の前に着くと、あったはずの自宅は更地になっており、土地売り出し中の看板がたっていた。
家をずっと空けていたから取り壊されてしまったのだろうか?たった3か月弱で?
【適当な家に聞いてみる】
隣の家であれば、経緯を多少知っているかもしれない。
インターホンを鳴らして、確認してみよう。
「上がって上がって」と友好的に招き入れてくれた。
いいですと喉元まででかかったが、こちらには情報がない。お邪魔することにした。
元教師が迎えてくれた。
「隣の土地はずっと前から空き地ですね」
と教えてくれた。
「――ええ、長期出張帰りでして」
嘘だ。
「どちらにいらっしゃったんですか?」
無意味な会話だ。
「異世――志摩に」
そうやっていつも。
「志摩でしたか」
とりつくろって、擬態して。
「志摩に3年居りました、いや、しかし、西園さん……西園議員は本当立派で……」
話題をそらす。目をそらす。大量の飴が目に付く。
「いえいえとんでもありません」
退屈さからか眠くなってきてしまった。
そうして、雑談をしているうちに眠くなってきて、少しの間眠らせてもらった。