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さくらと理界

「トキヒコ殿、トキヒコ殿の望まれます住居、私にお任せ頂きたい。」

 おっザドエッタ、やってくれる?

「『造する舟の者』の持ちます知識と技術を用、進めます事と成りましょう。」

「ああ、ロダッズも手伝ってくれるんだ。ザドエッタ、お願いします。ただねぇ場所がね、決められていないんだ。私は皆さんに我が住処を建ててもらう場所を決めなくちゃね。」


 その後にロダッズとザドエッダとの話し合いの中に入れてもらったけど、ちょっとそのやり取りは分かり難かった(言葉がね)。

 だけどリーザが私の隣で話しの内容を補填してくれたし、リュバックも何やら手を貸してくれると。

 家の土台造りには、カニエンプラツァ(石切り工)達も呼んでくれるそうだ。屋内の装飾類(机にベットに本棚と窓等)に関しても、ズレヅノォグロマジチキシェ(木製の造作物、それこそ家具類を創る者)に声を掛けてくれるそうだ。以前世話になったストラーカが来たりして。

 まるで何時の日にかの『エルフ湯』を創った時のメンバーが集合してくれる感じだ。全然大きさや建物の規模も違うのに、有難い限りだ!

 あ~だけど、私は手伝って頂く皆さんに、お返しするモノを何も持ってはいないのだけど。



 今日はリーザと共に、リーザの住居へと戻る事にした。

 だけど私の新居となる『トキヒコハウス』の建設地は決まらず。

「別に多くを望んでいるつもりは無いんだけどなぁ」正直、自分が場所を見付けるなり探し出せていないだけなんだけど。

「ピンっと来ないし当てが無い。(脆弱な)想像力を働かせようと思っても、それ程多くの場所も知らないし、行動範囲が狭過ぎるのか、、、」『今お勧めの物件』とか『皆に人気の新開拓地』なんて案内はココには無いからなぁ。

 リーザは王宮の厨房へ、私達の今夜の食材の調達に向かった。

「まあ、焦る事は無いか。場所探しを始めて、まだ二日目だしな」

 はぁ~でもなぁ、このまま幾日過ごしても見つからないかもなぁ。はぁ~

『コンコン』

 あれ?リーザ早いな。ドアが開けられない程、何かを抱えて帰って来たのかな。

「はーい、今開けます」

 私は、妄想中のベットから飛び起きる。

「はい、はい、はいっと。ありゃ、さくら」

 さくらがリーザの住居にやって来た。


 そもそも、リーザの住居には訪問客など皆無であろう(エルフの王宮からの者ぐらい)。仮にエルフの誰かが訪れて来たとしても、ドアにノックなんかは行わない。(習慣が無い。)

 だから少し驚いた。

「どうした、さくら?」


「お父さんがちょっと困ってるみたいだから、手伝いに来た。助けてあげる。」

「助けるって、なんか大袈裟だなぁ~。でも何で?」


「お父さんの負のオーラが酷いのよ。エルフの里国を覆っちゃいそうなの。」

 負のオーラ?何それ。

「お父さんの負の感情は、影響力が大きいの。」

 なんで~、別にオレ普通じゃん。

 家の中、居間へとさくらと並んで進む。

 4脚ある椅子に、机を挟んで向かい合って座った。


「お父さんって、誰かと居る時はいいんだけど、ひとりになると直ぐに考え込む癖が有るの。前向きな考えばかりだったらいいのだけど。」

 考え込む、癖ぇ〜?

「そうなの。人間社会であれば問題は無い。だってお父さんが喜んでいても悲しんでいても、それを見た誰かに雰囲気は伝わったとしても、実際は他人事で済んじゃうから。」

 まあ確かに。喜んでいたり泣いてる誰かを見たとして、思う事は有っても、実際はどうしてそうなのかは本人に聞かないと分からない。

「ここはエルフの里国よ。エルフ達には伝わってしまうの。」

 えー、そんなの、、、オレの意識が伝わったとしても、そんなの向こうの勝手じゃん、、、いや待てオレ。


 そうだ、ココはエルフの里国だ。オレの都合を基準の中心に置いてはダメだ。肉体も頭脳も精神もオレとは比べ物に成らない超人達がオレに合わせてくれているんだ。

 彼らに対して寄り添う事も届かないオレは、オレの都合で居ちゃダメなんだ。

 だけど変に卑屈になったり、極端に謙虚な姿勢は必要無いだろうけど、相手を思いやる心を忘れてはダメだ。

 だけど、それが気付けられないのか。これは参った。

「お父さん、それがダメなの。」

「ええっ?」

「少し負い目を感じ過ぎね。」

 うーん、リーザにも話したけど、やっぱ会社に行って仕事して、得るべきモノを得なくっちゃなぁ、と。

「違うの。」

「ええっ?」再び。


「お父さんが今持つ“負い目”は、エルフ達に対してよ。」

「ええっ?」三度みたび


「エルフ達に変な迷惑は掛けたく無い。だけど誰かに頼らなくてはこの世界では生きては行けない。かと言って何もお礼したりお返しするモノも持ち合わしていない。」

「うっ、その通り」

 何で分かる?何か全てお見通しか。

「私はお父さんの娘よ。お父さんが考える事ぐらい分かるわぁ。それと、女王様は危惧されていたのね。だからお父さんに”対価など考えるな“なんて仰られたのかもね。」

 なんでさくらがオレと女王ユーカナーサリーとの会話の内容を知ってるんだ?

「今のはお父さんから私に伝わって来たのよ。」


「思い悩んだり、考え込むのは別段問題は無いわぁ。でも、」

「でも?」

「お父さんの場合は特別なの。この世界に於いてお父さんは特異な存在。だからこの世界がお父さんの存在を少し測っている嫌いがある、、、好きとか嫌いの嫌いじゃなくてよ、、、スルガトキヒコはこの世界に留めるべきであるのか、受け入れるべきであるのか。理界が対話を始めたの。」

 理界が対話ぁ〜?

「理界~て、それ良く理解出来てないんだけど」ダジャレ。


「理界はね、この世を成すモノ。それは多くの宇宙を内服し、それぞれの宇宙に内服されるモノで構成されるひとつの世界の規律であり法則。」

 多くの宇宙を含んだ世界?

「どうやら、私たちが暮らして来た地球の在る理界と、エルフの里国の在る理界とは別のモノみたいなの。」

 別の宇宙~?

「理界同士は決して交わる事が無く、それぞれの理界を形成している。なのにお父さんは理界を越えてこの場に居る。だから、お父さんは特異というか、異質な存在となるのよ。」

「でもさ、それだとリーザや女王ユーカナーサリー、さくらにしたって理界とかの規律だか法則からしたら、異常な存在じゃんか」

 そう、そもそもはリーザが私の世界に現れたから。いや、それを言うならエルフの王家の長男坊、ロウが先か。でもでも、違う理界に在る、地球の存在を知っていたのはエルフだ。

 理界に多くの宇宙が含まれているのなら、地球なんてちっぽけ過ぎる存在をどうやって知ったのだろう。


「それはねお父さん、理界はお父さんが想像している様な大きな風船の中に複数の宇宙が包まれているのとは違うの。」

「じゃあ、どんな形?」

「理界は形を持たないの。」

 はぁ~なんだソレっ!余計に分からん。

「そして何かの偶然か、それこそたまたまなのかなぁ~、地球とエルフの里国との存在としての位置が近くになった。だけどお互いに決して交わらず、目で見たりする事やその存在を観察や感じる事も出来ない。」

 う〜ん、そこまでと言うか、別の宇宙だか世界が在るのは分かった。


「なのにエルフはその存在を知った。それがエルフ達が持つ”魔力”にるモノなのか、それ以外の何かがあったのかは不明なんだけど。」

 エフルの里国の王、女王ユーカナーサリーやエルフの王家の長子であるザーララさん、そして母王ジールは、『鏡』を使って地球上で起こった事を観察して来たと言っていた。

 いつからなのか、誰からのかは知らないけど、エルフは理界を知りつつも、違う理界が在り、そこの中にあるという地球の存在を知っていた。もしかしたら、地球上でも誰かが他に存在する世界、他の理界の事を知っている者が居たのかも知れない。


 そして、交わる事の無い筈の理界同士を越え渡った者がいた。

 リーザだ。

 まあ、エルフ王家のロウが先かも知れないけど、エルフ達はさくらが言うには決して交わらないはずの、、、不可能な事を既にやってしまったんだ。


「(一部の)エルフは理界を知り、認識に至った。知る事は大事なの、こちら(エルフ)が知れば、あちら(理界)も認識に至る。相互に理解と成ったからこそ、理界を『越え・渡る』事が適った。」

 スルガさくらは『理界』を知る。

 そして異なる理界を『翔び』越える。


「でもさ、なんでさくらはそんな事を知っているの?」

「入って来るの。」

「入って来るって?」

 さくらは人間を超えている(元々人間とエルフとのハーフだけど。)、その上、人間よりも肉体も精神構造も上の生命体だと思っているエルフ達さえ越えている。

「それこそ世界に抱かれている感じ。包まれている、が近いのかしら。」


「まあ、理界だとか宇宙が複数有るのか知らんけど、そもそもオレは“魔力”を内には秘めないじゃん。だったら尚更、理界がどうのこうのとは縁遠いはずじゃんか」

 地球とエルフの里国が、それぞれ違う理界とかに存在していたとしても、オレは『越え』られないよ。


「そうなの、それが不思議なの。お父さんが異なる理界を渡って来た。そしてその場で弾き出される訳でも無く、一時的であってもその場に留まる。」

 うーん、そんなの20年前からなんだけどなぁ。

「お父さん、何者なの?」

「えっ、ちょっとお茶目なナイス・ガイ」

「はあぁ〜」


「でもそれって、さくらの影響じゃ無いの?」

 さくらは何者でも測れない”力“を持つ。

「私は関係無いと思う。だってお父さんがエルフの里国に『越え・渡った』時には、私はまだ生まれてないよ。」

 そうか、そうだった。

 では何が、さくらが気にする理界のなんたらが、私と関係だか影響が有るんだろう。


「さくら、それって何か結論とか要るの?」

「結論とかそう言うのは無いと思う。だけど、」

「じゃあ、まあいいじゃん。それよりも、オレの負のオーラがどうとか言ってたヤツを解決してよ。助けに来てくれたんだろ」

「でもお父さん!お父さんに関わる事象の重要度が!」

(「父は、、、異常だ。もしかしたらこの世界から弾き出されてしまうかも知れないのに、その時私に何が出来る、お父さんを追い掛け、捕まえる事は出来るのだろうか?なのに、、、なのにどうしてこうも、、、止めた。私だって答えは出せないし、辿り着けないかも知れない。だけど、、、ううん、その時に考える。何とかする!」)


「そうね。では今、お父さんの悩みは何なの?」

 悩み、なのかなぁ。

「場所が決まらない」

「何の?」

「オレのステキな『トキヒコハウス』を建てる場所だよ」


「場所探しを始めて、まだ2日目だけどさあ、何時もの3エルフは場所は何処でも良いとは言ってもらってるけど。今日、ザドエッタ、、、ああ、エルフの大工さんな、も来てくれて、建物については目処が立ったというか、この後、事が進むのが分かる。だから何だか焦りが出て来た。皆がオレの為に動き出してくれたのに、オレが答えられていない、場所を決められてない」


「漠然としたイメージを持っていても、それを当てはめる具体的な『どこそこ』って言う程、エルフの里国を知らない。選定場所を迷う以前の問題。どちらかというと、ちょっと困ってる。と言うか参ってる」


「『トキヒコハウス』何か言い方がダサいけど。」

 ほっとけっ!


「いいわ、お父さん想像してみて。」

 私はさくらにそう言われ、住処としたい場所のイメージを広げる。

 そこは静かな森の中。背の高い樹木に囲まれた少し奥まった場所で、地面には陽の光が届き、背の低い草木が溢れ、小動物達が飛び交う。すぐ近くには小さな小川が流れていて、温かく、穏やかな場所。他の里やエルフ達に迷惑が掛からない、程良い距離感で、、、。


「お父さん、タバコや缶コーヒーの自販機なんて無いわぁ。納屋に入れるバイクも無いし、歩いて行けるショッピングセンターもプラモデル屋さんもココには無いの。テレビもゲームも部屋の中には置けないよ。って、雑念が多過ぎ!」

 そ、そんなハズは、、、有った?

「まあ、いいわぁ。それらを排除して、、、」

 さくらが瞑想でもし始めているかの様だ。妄想だったりして。

「う〜ん」

 紅い目をしたさくらの瞳が現れる。

「どうしたさくら、オレの注文はなかなかに難しい場所か?」

 エルフ達の森が広しと言えど、オレの想像力は無限だからなぁ~

「逆よ」

 逆?何が?

「逆なのよ〜在りすぎるの。」

 エルフの里国は、その何処に行っても私が望む場所なのかも知れない。


「じゃあさ、さくらが今見た中で、エルフ達が余り立ち寄らずに、こことそれ程は遠く無い場所って条件を追加したら、どお?」


「場所を絞るまでもないわね。明日は私が案内するよ。」

「そっか、お願いします」娘と森の中をデートだよ。


「そうだっ。それと、この間エルフの里国の地図(ロールプレイングゲームの取説に出てくるような、マンガの位置図)を書いたんだけど、ザーララさんの北山の山岳城の場所が分からなかった。実際は、北山のどこら辺になるの?」

 何かが起こって、私だとしたら歩いて向うしか無いので、方向ぐらいは知っておかなくっちゃな。

「お父さん、ザーララさんはエルフの誰にも知られない様な『術』の中に居るわぁ。だからお父さんであっても誰であっても、その場所を特定する事は不可能ね。」

 はぁ~ん?

「だけどお父さんは特別なの、場所を特定する必要は無いの。お父さんが北の山岳地帯に入って、目を閉じ念じれば、目の前にザーララさんの山岳城は現れるの。」

 オレもいつの間にか魔法使いの一員に!?

「違うの。」

 そんな、あっさりと。

「お父さんに付いている、ザーララさんの”印“の効果ね。」

 ああ、ザーララさんに付けられた、印の効果ね。見えないけど。


 でも、以前に少し魔力を纏った(小さいのがぶら下がってたらしい)時に、魔力で念じたけど、上手くは行かなかった。

(億万長者には、成れなかった。)

 魔力を内に秘めない私は、魔力の理解に及ばないそうだから。だからなぁ、そんな風に言われても、なんか眉唾なんだよな。


「だけどちょっと面白そうだな。こうやって目をつぶって、、、」

 ザーララ!山岳城!か。

「あっ!」

 ゾワゾワゾワゾワゾワワワァ~ン、と来た!嫌な感覚〜!

「何だトキヒコ、呼んだか?」

 私の直ぐ隣の席、そこにはエルフ王家の長子ザーララが音も無く現れ座っている。


「ええ、いや、あー、呼んじゃい、ましたね」

 ザーララさん、来ちゃった。

「ですけど、さくらが近くに居たら、ザーララさんは“魔力”を伸ばせられないって、」言ってたよなあ。

「確かにな、さくらが魔力を広げ様刻、わたしの魔力は伸ばせぬ。」

 だよなぁ。

「だがな、今の刻、さくらは魔力を広げてはおらず、」

「そこはザーララさんのご指導の賜物です。」

 ザーララさんのさくらに対する『魔力講座』か。

「尚もわたしも学ばう。力の向きをさくらに向けねば、わたしの魔力も進め様事は可能である。」

 なんか見えない電波のやり取りの陣取り合戦みたいで、良く分からないのだけど。


「まあ良い。リーザリーが居らぬか。」

「ええ、リーザは今、あっ、、、痛、痛てててて!」瞬間的な強烈な頭痛ー!

 何て事だ。予想外!

「姉様、どうされた?」

 そう、エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーもリーザの住居にやって来て、さくらの隣の席に現れた。

「何、トキヒコに呼ばれたからな。ユーカナーサリーこそ、どうした。」

「リーザの住居(トキヒコ殿)にて、不穏な流れの魔力を感じ様。」

 ザーララ、ユーカナーサリー、エルフの王家の姉妹は顔を見合わせると、お互いニヤリとし牽制し合う。

 でも女王様、お姉さんの事を不穏だなんて。


 だけどリーザ、今王宮の厨房に行ってるんですが。

 続けて『ゾクッ』と来た。この何とも言え無い寒け!

「皆様方がお揃いで?」

 両手いっぱいに食材を抱えた、リーザも現れた。

 こうも次から次へと、神経の擦り減る様な感覚を受けるのはキツい!どうせ来るなら、もっと普通に現れてよ〜。


「リーザ、お帰り」だけど魔力を行使して戻って来ちゃった。

「はいトキヒコさん、ただ今戻りました。尚もザーララ、我が王の来訪を感じました故。」


 何でこうも集まっちゃったの?

 リーザが作ってくれる夕飯を待つばかりだったのに。

 私、お腹が減り出しちゃったんですけど。



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