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ハーフエルフの父~エルフの里国編~  作者: タマツ 左衛門之介久


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さくらが持つ力のおこり 

「はぁ~さくら、お前を産んで良かった。スゴク便利だ。オレの生き字引!」

 事実さくらは学業が優秀で、知らない英単語の意味を教えてもらったり、テレビを観ていて歴史の年代の前後や登場人物の背景、外国の都市の所在の位置とか、直に聞いちゃう。だけどその都度『自分で調べて』と言われつつも、教えてくれる。

 何時でも即答だし、本当に多くの事を知っている。

 化学変化や計算式も得意な様だし。

 模型の工作で、円錐のパーツが欲しかった時も、計算式から展開図を作って貰った事もある。


「何よソレ、失礼しちゃう。」

「それに私を産んだのは、お父さんじゃなくて、ママでしょ。」

 そりゃそうだ、男は逆立ちしても、妊娠〜出産は出来ない。

 だけどさくらは今や“魔力”を発揮する事となり、物理的な範疇も重宝している。




 その日トキヒコは、その形状が楕円の筒状である『トキヒコハウス』の屋根の上にいた。


 ゴロンと仰向けで、木々の枝々の先に広がる空を眺めていた。

「人間って、何で空を飛べないんだろう」


 そんな事を呟き横になるトキヒコの周囲には、多くの鳥類が集まり、その翼を休ませていた。


紫鳥フィオレット

 トキヒコがそう呼ぶのは、『モックニー・ピタック・フィオレトウィ』。

 良く知られている一般的なハトより少し大きな体躯を持ち、力強く羽ばたく。

 雄は濃く輝く紫色の羽を持ち、雌のソレは紫色から美しく淡い藤色のグラデーションが掛かっている。

「お前達は、空を飛べるもんなぁ」

 トキヒコは横になったままその手を伸ばし、モックニー・ピタック・フィオレトウィに触れる。


 この場はエルフの里国の王、女王ユーカナーサリーに依って『殺生を禁ずる』概念の結界に包まれている。

 それは野生に暮らす者達のいっときの休息場を作り出すに繋がり、時には多くの野生に暮らす者達が集まる。

 それ故に、モックニー・ピタック・フィオレトウィは逃げもせず、トキヒコにその体を撫ぜられている。



「オレも空を飛びたいよ」

 だけど鳥の様に、大きな翼を持ちたくはない。

 鳥たちは、その持つ翼を羽ばたかせて、大空へと向う。

 それは空を羽ばたく為の体の構造、強い筋肉、大きな翼を持っているから。


 人間の手は、多くの物を掴む為に出来ているが、鳥達はその腕を空へ羽ばたく羽根へと特化している。

「翼を羽ばたかせ、空を飛べたとしても、その両手で何かを掴み、誰かを抱きしめる事は出来ない」

 だからオレは、翼よりも腕がいい。

 それに、鳥達が空へ向うには、相当な運動量というか、重労働に見えちゃって。


 翼を広げ、滑空している姿はカッコいいけど、それも大きな翼を持つからこそ。

 鳥になるならば、広れげれば自分よりも大きな翼を持たなくてはならない。

 虫達も空を舞う。

 だけどやっぱり背に有る羽根を羽ばたかせて、それこそ目で追えない程の運動量でその羽根を働かせて。 


 人間が、空を飛べたなら、

 飛び降り何とかも無いだろうし、滑落事故からも免れる。

 死につながる落下の危険や恐怖から解放されるのに。

 人間は、空を飛べない。


「さくらは、空を翔ぶ」

 人間なのになぁ〜ズルいよなぁ〜。


「あがっ!痛ってぇ〜」頭がジーンと頭痛の衝撃!コレって、

「ああ、ユーカナーサリー」

 空を見上げていたトキヒコの視線は、エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーの姿と入れ替わる形で遮られた。

 女王ユーカナーサリーの突然のお越しだ。


「何トキヒコ、空を望もうか。」

「うっ、」重い、、、

「トキヒコ〜、婦人に対し重さにて表現され様な事は、失礼な行為であると聞き及ぶぞ。」


 エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーは、仰向けとなっていたトキヒコを跨ぐ形で現れ、そのまま腰を降ろすかの様にトキヒコに跨ぎ乗った。


「ユーカナーサリー、」

 女性に対して体重を伺うのは、確かに失礼かも知れませんけど、ユーカナーサリーはその身体が倍ぐらいの大きさになりましたから、重い!


「トキヒコ、人間成れは強欲で或るな。地に於いて勢力図を広げ、地上の覇者と成ったにも関わらず、其の先へと進む。

 其が空へと続こうものなら、如何と成ろう。」


「しかし既に空を行き、星を出、宙までずる者も居よう。

 人間の勢力図は、既に空へと続いているのではなかろうか。」

 でもそれって、気球とか飛行機とかロケットとか、何かに乗ってなんですけど。


「誰も彼もではないですけど、人間や人類としたら、確かに乗り物には乗りますが、空を飛んでいますし、宇宙へと飛び出した者もいます」

 乗り物や道具、機械とか、何かの力を借りて。


「トキヒコは、何やら道具の類に頼らず、自身が持つ能力のみにて空を望もうか。しかし、道具也、乗り物也、其は人間が造りし物であるは変わらず。」

 まぁそれが、人間の持つ能力であり“力”と言ってもいいのかも知れませんが。

「我らでは真似が出来ぬよ。」

 エルフ達なら、その気になればやれるでしょう。

 それも人類が消費した時間や費した資源などは及ばない程、短時間で極少量で。

「トキヒコは我らを買い被り過ぎな傾向が在る。」


「トキヒコ、『行い』と『望み』は別であるぞ。」

「例え行いし事が適おう共、望むべき者が居らぬなら、其は徒労と変わらず。」

 まあ、そうかも知れませんけど、エルフ達の持つポテンシャルが、何か勿体ない。


「我らは万能では無き、生在る他の者達と然程変わらぬ。」

 エルフ達は、文明や科学を発展する気を持たないから。

「トキヒコは、我らがその気を持たぬと申すが、何が正しく何が誤りであるのかは、何者にも測れぬ。」

 チャレンジ精神とかは、、、

「トキヒコ、少なくとも我らは見本を持つで在るからな。」

「見本ですか?」


「人間社会は良き見本と成ろう。しかし、良き事のみを選べし成れど、我らに当てはまるとも限らず。」

 人間、、、ユーカナーサリーは地球で暮らす、全人類に対しての観測の結果を言っているのだろう。

 エルフの里国で暮らせば、元の世界で有って当たり前のモノが無くても、気にせずに過ごしている、、、そう思うと、何か不思議。


「ユーカナーサリー、人間社会の良い所って何ですか?」

「発明、改良、競い、、、其は社会であり文化、暮らしの発展を目指しての事に依る。」


「して、誕生し発展し、その先に何を見よう。」

 人間が、人類が見る先は、未来。


 人類は来るべき未来を信じて、発展を目指す。発展するけど、

「左様トキヒコ、人間社会には“弊害”が多かろう。」

 そうなんです、軋轢、差別、公害、貧富の差、自然破壊、食糧難、戦争、、、挙げれば切りが無い、、、それは人間、人類が発展と共に得たモノ。


「トキヒコ、我らに期待するで無い。我らとは、人間との過程が違おう。」

 そう、人間とエルフとは違う。

 違っていい、同じだと思い、求めてしまう事は間違いなんだ。


「してさくらは、何を持とう。」

 ここで、さくら?

「さくらは人類の過程の枠と同等也と呼べ様か。」

 ユーカナーサリーは常にさくらに気を掛けて下さっている。

 それは、さくらが生まれる前から。


 でも、ユーカナーサリーもザーララさんと同じく、さくらの持つ“魔力”とは別の働き『未知なる力』についての解を持っていない、、、姉妹だからか?いや、コレは違うか。

 私からして今のさくらの立つ位置は、全力を出しても届かない一歩も二歩も、もっと先のトコロ。追いかけたとしても、背中すら見えないかも。



「さくらの持つ力、魔力では留まらず。」


「何ぞ先へと進もう。其は別成る次元と申すか、魔力とはその根本たる性質に差異と成る。」


 ザーララさんはさくらの持つ“力”を無限へと繋がる様な事を仰ってましたけど。

 エルフ達が持つ魔力とは違った、もっと大きな魔力?


「魔力など、さくらが秘めたる力の一部でしか無き、、、其は超常足るモノ。我らでは解らぬ。」


「トキヒコ、我は問おう。何故じゃ、何故にさくらは測れぬ力を持つに至る。」

 さくらが魔力なり、何かの力を持つのは、母王ジールの力がその血に依ってリーザに渡る事になった。

 リーザからさくらが生れたから、その血が持つ力(魔力)は遺伝された、、、と思うけど。

 

「我も我らも其が相当と思いしおった。」

「だが、其は想像足る範疇である。思っていただけじゃ、確証など無き。」

「だがさくら、さくらが秘めし力の起源に母様(母王ジール)は関与は無き、さくらの持つシルワァ・ヅィロドァ(力)に我らの秘めし魔力の性質とは異である。別成るみなもとに依る、加わりし因を持とう事。」

 えっ、加わったモノ?


「故にトキヒコに問おう。さくらの持つ力に影響を与え足るは、トキヒコの持つモノと成ろうぞ。」

 ええ〜、私が持つ“モノ”?貯金無し。


「いえ、私は特に何も無いですよ。単なる一般人ですし」

 私の両親もそれぞれの家系も、祈祷師や陰陽師が居たとか、それこそ超能力だとか不思議な力を現した者が居たなんかは、聞いた事が無い、無縁だ。


「『個』としてのトキヒコはどうじゃ?」

「私個人としてですか?う〜ん、単なる田舎育ちの小僧で、運動は好きだけど、それを勉強嫌いな理由にして、、、育って来た中で、特別な体験をしたとか、不思議なモノを見たりした事も無いしなぁ〜、、、親から受け継いだのは丈夫な体ぐらいですか、性格や能力なんかはどこまでが遺伝なのか良く分かってないし、、、」

 やっぱり、私なんかよりリーザが優秀だから、そっちの線では?

「リーザをさくらが持つ力の源とするならば、我が知ろう。」

 まあ、確かに。


「さくらが持つ秘めたる力の源はトキヒコぞ。」

 さくらの秘めたる何かしらの“力”は産まれた時に『紅赤の瞳』が表していた。さくらは生まれ持っていた。

 だから、遺伝の関係上、、、オレになるの?

 でも、さくらの持つ“力”の源がリーザから受け継がれた“魔力”に何かが加わったのであれば、オレ、、、の何だぁ?


「トキヒコ、さくらの持つ力の探求を行わねのは、何故じゃ?」

「さくらの持つ“未知なる力”と呼ばれるモノの探求ですか?」

 うーん、さくらがエルフ達が持つ“魔力”をリーザから伝わって、持っていると知っているから、それで充分かなぁ。今で十分便利なんですけど。


「人間とエルフが交わりし、産まれたる者は、誰しも同じくさくらの秘めたる力を持つと成ろうのか。

 想像の範疇は抜けれぬが、答えは否じゃ。我の意識がそう囁き、導く。」

 ユーカナーサリーが想像や予測の範疇外の中で、ある程度の答えを出した、、、エルフとしては異質な意識だ。

 さくらの持つモノ。オレからしたら『便利な力』だと思っているけど(ズルい、とも思ってる)、エルフ達が秘める“魔力”の延長線か、大きくなったモノとは違うのか?さくらの力はそれ程なのか?



「さくらの持つ“力”の因と成るはトキヒコじゃ。トキヒコの持つ“源流”は何じゃ。」

「私の源流ですか?何だか難しい問いですけど、そりゃあ、父と母とになるでしょうね」

 次男坊ですけど。


「其はトキヒコが身体を成し、命持つ存在と也し刻、先代依り受け継がれしモノ、遺伝の範疇じゃ。」

 もっと別の何か?


「記憶を辿れ。トキヒコが個を現せし、意識や感情の生まれし刻を。我らでは相手の記憶を辿ろう事など、適わぬ。」


 エルフは、相手の意識や感情を読み取る事は出来ても、記憶を辿る事は出来ないのか。

 でも記憶って、意識や思考と同じじゃないのかなぁ。


「トキヒコ、源流へと繋がろう記憶は異なろう。其は、個の奥底に潜む固有意識と繋がる。其を呼び起こすのは当人のみ。源流足る記憶の置き場に他の者が外からの影響を及ぼそう事など不可能であるな。」

 何だか記憶って、私がエルフ達と付き合う時に開発した『意識を深い所に置く』と似ているのかも。

 でも、強い魔力を持つ者には、チョンバレだった。ユーカナーサリーしかり、ザーララさんしかり、母王ジール。

 だから、源流に繋がる記憶は、もっと別の場所に納められている、、、いやいやいや、源流に繋がる記憶って、何だぁ?

 そもそもオレがさくらが持つとされる『未知なる力』の源流なんて持っているのか?


 何か、ちょっと理解出来ない。

 源流なんて聞かれても、さっぱりだ。

 そんなの皆んな持っているのかぁ?

「トキヒコ、源流成れは皆が持つぞ。」

 そうなんですか?

「では何故“スルガトキヒコ”としての固有也は存在し、別成る者と差異を持とう。親より受け継がれしと申せど、其の親とも多くの差異を持ち、違おう存在では無いか?」

 う〜ん、確かに両親と比べたら肉体的には似ている部分はあったとしても、性格や考え方まで似ているかと言えば、全てじゃ無い、別の考えは多く有る。同じ親から産まれたはずの兄弟とも、肉体にしろ考え方だって、似ても似使わない、全くの別物と言ってもいい。


「左様トキヒコ、自身以外は別成る存在、故に個としての存在である。」

 いわゆる個性だとかが、それぞれの者が持つ『源流』よって形成されているのなら、何がオレ“スルガトキヒコ”は、何を以て自己を構成したんだ?

 それは何かの経験によって、、、それが自分の記憶として、残っているのか、、、。


 オレの起源を記憶を辿って、その始まりって、、、小さい頃の記憶かぁ。

 実際思えば、何歳ぐらいの記憶が一番古くて、オレが持つ記憶のスタート地点なんだろう。

 さすがに、母のお腹の中に居た時だったり、オギャーと産まれ出た時の記憶なんて有る分け無い。


 人間の記憶は、3歳の頃からとの説が大半を占めると言われる。

 それは人の「一番古い記憶」を遡ったという研究の結果があり、それによると、人が持つとされる古い記憶は平均して2歳半位だという。

 多くの人は2〜3歳より以前の記憶を思い出せない。それは『幼児期健忘』と呼ばれる。


 人間の記憶は4歳頃から発生する『エピソード記憶』に占められる事となり、「いつ」「どこで」「なにを」したかが脳内で発達するからであり、それ以前の記憶は、脳の成長による多くの発達の先に『残りにくいモノ』となってしまうからである。


「う〜ん」

 アレコレと思い出してみる。

 朽ちた木を割って、カミキリ虫を見付けた時、

 煎餅持ったまま転んで、泣いた時、

 ひとりでヒーロー物のテレビを観ていた時、

 バスからひとりで降りるとワガママ言って、(案の定)転げ落ちた時、

 いや、あれ?どれが、どっちが先だ、

 自分の幼い頃を写真で見たとか、誰かに聞かされて感じたりして、知った事を自分の記憶と擦り合わしているのか、それらを脳内で編集して記憶として作り挙げているのか?

 古い記憶を呼び起こす事が難しい。


 ヒトの記憶とは歪みやすく、間違いが付いて回る。


 自分が当時体験して、持った記憶の一番古いのって何だ?

 上手く思い出せない、、、。


 ヒトが“個”として形成されるに至り、その影響となったとか言う“源流”なんかがあるのか?

 それは記憶の一部に仕舞われているって、、、


 トキヒコが自分の中にある、古い記憶を辿る。

 しかし、途切れ途切れ、部分として思い出される記憶の順番が定まらない。

「あー、どれが、何が一番前の、オレが持つ記憶なんだ?」


 トキヒコは繰り返し古いと思われる記憶を呼び起こす。

 だが、自身の幼き頃を思い起こされる記憶などは、たかが知れている。

「オレは、何を見た、何をしていた、何を考えていた、、、何処にいた、、、あっ、」 

 トキヒコの意識にボワッとした情景が浮かび上がる。


「裏山だ、、、」

 オレが持つ、記憶の一番古いトコ、、、

 この記憶は、家族や誰かと過ごした時のモノでは無い。

 ましてや写真なんて無いし、誰かに話した事も無い。

 オレだけが持つ秘密とも言える、、、自分一人で過ごした時の記憶だ。

 それはいつもの様に、裏山へと飛び出して行った記憶だ。


 今持つ自分の記憶の一番古いモノと決めつけるのは怪しいけど、何かに呼び起こされるかの様に思い出された、、、それは、あの日の裏山での一人遊びだ。

 何が有る、何が見付かる?ちょっとした探検心と冒険心を抱えて飛び出していた裏山に、さくらに繋がる『オレの源流』と呼べる、それこそオレのルーツが或るのだろうか、、、。



「トキヒコ、何やらが見えたか。」

「ええ、子供の頃に遊びとして向かった裏山が、何故だかまるで、呼び起こされた様に思い出しました」

 だけどそれがユーカナーサリーがおっしゃられる『オレの源流』に繋がるモノである確証は有りませんけど。



「トキヒコは、何事にも強くならばと思っちょる。」

「はい、それは思ってます。心も体も強くなければ生きては行けない。大切に思う人を守れない、、、かと言い、その為の努力も鍛錬もしてませんけど」思ってるだけ。


「気概じゃな。気概成れば、するしないとは別じゃ。

 じゃが、“思う”“思わない”には大きな差異が生じようぞ。

 トキヒコは、それで良き。」


「だがトキヒコ、その気概を何時得たと申す。気概成れは即座に表すべき感情とも異なろう。積み重ねた先に持つ、思考成れ。」

「う〜ん、やっぱ家族を持った時ですかね」

 自分がエルフ(リーザ)より短命てあると気付いた時。

「トキヒコの持とう信念や意志、自負心は何処から得たのじゃろうな。」




「してなトキヒコ、もう一つ在る。」

「はい」何だろう?


「『空』を望み『飛翔』を想いしトキヒコは、何やら逃避の気を持つ。」

『逃避』〜、何から?


「空への想いは広がりとの志向へと向かおう、良き事じゃ。」

 では何故、逃避?

「広き空を望むは、意識の広がりと未来への希望を持とう。」

 ほら、空を望むはいい事づくめ。

「じゃが同時に空へと舞い進むは、逃れに繋がろう事。」

 逃げる、オレが好きじゃない行為。だけどユーカナーサリーがそう言うのであれば、、、でも何から。


「トキヒコが持つ迷いは『スミャーツゥ』。我ら(エルフ)よりも早きに『死』を迎えし事。であるなら、故に強くなければと自身を責め様な。」

 うっ、正解。エルフよりリーザより人間は短命であると知った瞬間から。それはエルフ達と添うという資格以前の問題として。


「自分を責める、ですか?」

「左様。トキヒコは言として現さぬが、自身が迎えよう死を自身の悔いとして既に抱え持つ。其は常にじゃな。」

「ええ、、、」常に、、、

 この世界にいれば、自分が持つ想いすらも見透かされてしまう。


「故に我が居よう。トキヒコには我らが添おう事。」

 言葉を交わさなくとも伝わる。

 手を伸ばせば、そこに居る。

 この世界では、同時に誰かに隠し事をする事が愚かであると思わさせられる。

 ああ、ユーカナーサリー、、、私のエルフ。


 トキヒコがユーカナーサリーへと手を伸ばせば、モックニー・ピタック・フィオレトウィは、音も立てずに静かに飛び立った。





「スミャーツゥ(死)に恐れを持つは何者も変わらぬ、我らも変わらぬ。しかし、生を謳歌すべき刻にて死を常に感じ様事は、生き様と呼べると成るか?」

 オレは、逃げられない事から、逃げようとしているのか。


「トキヒコ、らしく無き事。トキヒコ成れば何事にも『足掻き』を示せ!尚もトキヒコ流で申せば『つまらない』。違うか?」

 ユーカナーサリー、もう、見透かされているのでは無く、もうひとりのオレ自身の代弁者だよ。




「トキヒコ、行くが良い。自身を知るは、自身を再び定める為の杭と成ろうぞ。」

 オレの起源となるのか、初期の記憶として持つ場所へ。

「さすれば、トキヒコが抱え様スミャーツゥ(死)に対する向かう気持ちも変わろう事。」


「我は望む、トキヒコが生を謳歌しうる刻を。」





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