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来客者 風の民クーリャ シゼコラダを求めて〜記憶の石

 エルフの里国にてチョコレートを再現するにあたって、、その原料となるカカオの代替えとなり相当となる物『シゼコラダ』が、トファノキブーミ(嵐の国)に有るなんて。


 ん、待てよ、クーリャの言う事を鵜呑みにして大丈夫か?

 『嘘』と『イタズラ』は違うけど、『騙す』事はイタズラに近いのかも。

「お父さん、考え過ぎよ。」

『嘘』はエルフには通用しない。それにこの世界で『嘘』を持っているのって、オレだけかも、、、そう思うと恥ずかしい。


「何だトキヒコ、何を想う?」

 少し深い所で思っても、『私のエルフ』達には私が持った迷いや心配事は、“感情の揺らぎ“として伝わってしまう、、、隠し事ではなくともバレてしまう、変に気遣いさせてしまう。

 だから、確認しておいた方が私も皆も、安心出来るな。


「クーリャ、そもそもシゼコラダがどんなモノなのか知ってるのか?クーリャの里(嵐の国)に有ると言う、その実は合ってるのか?」

 変に疑う気は無いけど、私が少し抱えた心配事が解消出来るのなら。

「何だよードギビゴ、あたいが嘘付いているって疑うのかー!」

「違う違う、誰だって勘違いとか、思い違いって有るじゃんか」

「有るかもなー。」

 チョロいなクーリャ。

「だからさクーリャ、確認したい。『シゼコラダの実』をリーザに教えてよ」

「いいよー」


 クーリャがリーザへと向い、リーザが『開く』事で、クーリャの持つ記憶がリーザに伝わる。エルフの日常的な『術』のひとつだ。

 それを受け、リーザの記憶する『シゼコラダの実』の知識とクーリャの思いが一致する。

「ええクーリャ、確かにシゼコラダの実と成りましょう事。」

「ほらなードギビゴ、エヘン。」

「流石!」リーザ。


「ですがトキヒコさん、やはり今成る私では、我らの里にてシゼコラダが生息とする地は定められません。」

 それはリーザが実際に採取した事が無いから。

「そうすると、やっぱりトファノキブーミに行くしかないのかぁ」それをクーリャに頼る事は癪だけど。


 嵐の国に、こちらでチョコレートを再現する為の材料の一方が有る。

 それがクーリャのチョコレート好きな理由だったりして?それとも、これも何かの縁か?


「だけどさクーリャ、チョコレートを作る(再現する)一方の材料が自分の里(嵐の国)に有るのに、その事を自慢しないなぁ」

 もっと騒いで自慢しそうなのに。

「ドギビゴ〜、実の所、あたいは疑っている。」

「何を?」

「『シゼコラダ』なんて誰も食べないよー。それがチヨコレイトになるだなんて、あたいは信じられないのさー。」

 へぇ~。

「うーん、クーリャ、シゼコラダの実って不味いのか?」

「知らないよー。」

「はぁ?」何でだよ。


「だから誰も食べないって言ったよなドギビゴ〜。ちゃんと話しを聞いているのか?」

 あー、腹立つ!


「ではドギビゴ、すぐに行こう!あたいの里(トファノキブーミ)に案内するよー。」

「いやクーリャ、直にって。案内って言われてもオレは行った事有るし。それに行くのは構わないけど、オレも出掛ける支度とか準備が、」

「あははははー行くぞー!」

 クーリャはそう言うなり私の右手首を掴むと、背中に光の羽根を出し、走り出すかの様に飛び出した!

「いや待て!」馬鹿力〜!

 


 クーリャが飛び出すかの様な動きを取った瞬間、目の前の景色が消えた。

 『トキヒコハウス』の部屋の中から一瞬にして、周囲に物質的なモノの無い、薄明るく温かい空間を走り出したかの様に!


「わあっ!待て待て待てーっ!クーリャに引っ張られる!」

 右の手首をクーリャの小さな手で掴まれたまま(なんなの、この馬鹿力?)、まるで谷底にでも落下している様な勢いだ!

 でもこの感覚、、、これってまるで『ドローガ ドロゼワゥ』樹木の流れの中を進んで行くかのようだ。


「トキヒコ、風成る流れ。其に乗ろう事。」

 クーリャに掴まれている右手首の反対、私の左手はザーララさんが握っている。

 私がこの流れの中で逸れぬ様に、ザーララが護ってくれている。

 さくらも後に続いている。


 風が持つ流れ、、、だけど実際に空気の動きだったり、風の持つ勢いを体で受けるのとも違う。見たり感じたりせず、だけどそこに有る、、、風を物理的に感じる事とは違う流れ。


「プルーゼプリィーウ、、、この世のモノ、万物は流れを持ち、流れの中に在ろう事。其に我らは、乗っておる。」

 この間、ザーララさんは言っていた。

「刻、空間、生命、、、それらが持つ流れに乗る乗らん、使う使わずはまた別成る事。だが、知らねば成らぬ。万物が流れを持つ事を知らねば成らぬ。我等は流れの中にて営んでおる事には変わらず。」

 プルーゼプリィーウ、万物が持つ流れ、、、ただそこにあって、逆らう事もあがらう事も適わず、、、。

 うーん、分からん。流れ、見えないし。


 でも、クーリャは風の持つ流れに乗っている。そして私とザーララさん、さくらはそれに続く、、、クーリャ、風の民だから風の流れか?


 だけど樹木の持つ流れとは違う!

「あははははー」

 クーリャの笑い声だけが響く中、何だか速い!

 クーリャに引っ張られているからなのか、風の持つ流れが速いからなのか?!とにかく目が回りそうだよっ!




 風の持つ流れ、、、その流れが止まる。


「ここは、、、」

 顔を上げ、そして目に入って来た先の景色は、一瞬、上下の判断が付かない様な、何とも言えない風景が広がり、、、強い風が流れては止まる。そして直に別の風が起こる。繰り返し繰り返し、激しい風の行き来に晒される。そう、見た事が有る。

 来た事が有る、風の民の里(嵐の国)だ。


「おかえり〜あたい。ようこそードギビゴ〜」

 風の里(嵐の国)に来ちゃったのか。


 嵐の国へと到着した。

 振り返ると、見覚えの有る建物の前、何かのドームみたいな物が上に載った、何処かの寺院が思い浮かべられる建物。

 ココは、この国のジオラマ・ビルダー(創造者)であるババア、、、シミと会った場所。


「クーリャ、オレここに来た事が有るぞ」

「何でだドギビゴー、何でだー!」

「ええっ?クーリャと来たじゃん、、、もしかしてクーリャ、憶えて無い?!」


 以前私はクーリャと(何故だか)融合された形でこの地に着いた。

 融合といっても、クーリャの中に取り込まれちゃった感じだったけど。

 でも自分の意識はしっかりとあり、クーリャの意識もそこにあった。だけど視界に入る景色は、クーリャの目を通して見ていたのだった。

 そしてその時のクーリャは、、、酔っ払って眠っていた。


 出会ったふたりの風の民(クーリャのお姉さん達)に追われて、、、寝ているクーリャの体を私が動かして、、、逃げた。

 

 そしてこの場所に辿り着いた(連れて来られた)。 

 この、なんとも言えない、何処かの寺院のような、ドーム状の屋根が載った、この場所に。


「ここに来ちゃっていいのかなぁ」

「どうしたトキヒコ、臆するか?」


「いえザーララさん、この場所はババァン・ズーロシミミが居るでしょうから、クーリャが見つかると、」

 何か罰でも受けるのか?『暫く国に戻るは無い』と言われてるから。

「違うぞードギビゴー!父なる存在の名前を間違えるなー!違うぞー!違ーう!」

 クーリャ、、、何処にいても、やっぱうるさい!

「いや(大体)合ってるてしよ(さくらにもオレが持つ記憶から、バッチリとしたフルネームが伝わったみたいだから。それは、オレが正しい記憶を持っているって事で、ちゃんと言えてないだけ。)」


「クーリャ、ここはハバ、、、父なる存在の家なのか?」

「違うよー。」

「じゃあさ、何?」

「知らないよー。」

 はぁ?


「それよりもクーリャ、ババ、、、父なる存在に見つかったらどうなる?」

 罰とか有るのか?『死の刻』へと向かう事になったりして、、、クーリャの心配をしてるんだけど、クーリャが嵐の国に戻る事になったのはチョコレート作りの為とは言え、オレの都合、切っ掛けだし。

 もしかして、同罪だからオレも『死の刻』送りになったりして?!

 オレは徳なんて積んで無いから一発アウトだよ!


「あたいは、平気さー。ほいっとな。」

 そう言うとクーリャは姿を消し、どうやらさくらにしがみ付いた様だ。

「どうだドギビゴー、分からずだろー、エヘン。」

 確かに消えたクーリャを私では追えない、何処に居るのか判らない。でも、いくら姿を消したからって、父なる存在には通用しないだろう。直にバレるんじゃないの?


「クーリャ、“記憶の石“って、今もここに有るのか」

「有るよー。」

 さくら側から、クーリャの声が届く。


「トキヒコ、折角の期だ、中には入らずか?」

「まぁ、せっかくココまで来たのですから、二人に『記憶の石』を見せたいなぁとは思いますけど」私の物ではありませんが。

 この建物の奥に並んでいた記憶の石。それは壮観だった。

 『記憶の石』、それは多くの何らかが記録されている宝、、、詳しい事は知りません、、、だそうだ。

 そしてココが、ハバァズローンシミの家では無いのなら、

「まあ、誰かと会ったら挨拶すればいいか。団体の観光客みたいなモノだろ」クーリャも一緒だしな。




「こんにちは〜失礼しまーす」

 誰も居ないのか?

 建物に入る(土足で)。

 なんだかこの間来た時と違って感じる、、、違和感か?

 そりゃあ、前回来たの何時だ?もうニ十年くらいも前の事だしなぁ。

 だけど、この違和感、、、そっか、前来た時はクーリャの目線だった。

 視線が違えば(今の顔の位置と膝の高さとの差)、こうも景色は違うのか。

 あの時は、周りを見る事も無かったしなぁ。


「あれ?クーリャ、アレは何?」

 この間は気付かなかった。って、周囲を見回してる余裕なんて無かったしなぁ。

 頭上には、大きな玉の様な装飾品かなぁ?が有る。

 何か気になる。


「鐘なのさー。」

 そんな風には見えないけどなぁ。

「鐘?じゃあさ、鳴るの?」

「鳴らないさー。」

「何で?何ソレ。じゃあ何で有るの?」

 時間を知らせるとか、災害時の警報発報用とか?

「そんなの知らないよー。」

「何だよクーリャ、地元だろ」案内はどこ行った?役立たずな案内人。

 そうは言っても、私だってお寺とかに行って、そこに在る物をアレコレと説明出来ない。




 奥へと進めば、直に突き当りとされる部屋に行き着く、、、こんなに狭かったっけ?

 そしてその奥には、祭壇の様な造り物の前に石が並ぶ。

 リンゴ位の大きさで卵型の石、記憶の石が1、2、3、、、10個が並ぶ。でも、

「わたしがルストーロ(鏡)を通し見た記憶の石。だがこれはエレメンツであるな、ヅロドローエネラギアだな。」

 エレメンツ?ズロローエララ?

 ザーララさんが一歩前に進むと、記憶の石をのぞき込む。

 以前にクーリャが持っていた記憶の石を見て、手にして透かし見た事はあるけど(特に何も見えなかった)、今ここに並ぶのは、あの時と何か違って見える。

 手で触れるのが怖く感じてしまう程、何かが中でうごめき渦巻いている。炎の様な、溶岩の様な、うごめく何かに稲妻が走っているかの様に。


「トキヒコ、ここに並ぶは、この地(嵐の国)を構成するに司るエレメンツ。まあ異なる要素の集合、元素の集積と呼べよう。」

「何ですか、『元素の集積』って?」


「記憶の石と呼ぶが、もっと別なるモノであるか。ヅロドローエネラギアが揃い並ぶ事により相互作用を興し、この世界を構すると成り、留める杭と成るか。」

 エレメンツがとかズロロンエラギロ(ヅロドローエネラギア)とかかも知れませんが、

「以前クーリャが持っていたのは『地図の石』でした。」

 クーリャはその石の中から『嵐の国』の立体図みたいなのを取り出し、見せてもらった事があった。

「ユーカナーサリーは、記憶の石には色々と種類が有るとか」


 確か、、、『記憶の石』とは一種の記憶装置、記録媒体であり、多くの情報をこの石に移し記録する事が可能だと。

 その記録は図形や歴史や物語に留まらず、場所の風景や暮らしの姿等の記録であり記憶だとか、、、。

 だけど『記憶の石』、今見るザーララさんだと、単なる記録用の媒体とは違うのか。

「ああ、確かにな。個々に診るならばそう成ろう。」


「だがな、わたしは認識を改めなければ成らずだな。記憶の石、集合し構成されるので在らば、その持つ本質を現そうか。」

 ここにある石が持つ、本質ってぇ〜?

「シルワァ・ヅィロドァ、、、“力“だトキヒコ。ヅロドローエネラギアが並び集まれば、相互に作用を興す事により、大きな流れとも云え様『源』を構成し形造るか。」

 それって、ババァンズロローンミシシが嵐の国(トファノキブーミ)を創った材料?

 良く分かんないけど。


「所詮ルストーロで観る程度ではな、知る入口程度。認識に至ら成らねば、やはり何事も経験を上回る事など無きか。」

 何か、ザーララさんが感心しているみたいだけど、難しい事なのか、訳の分からない事を言い出した。




「うわっ、」

 風が吹く、強い風が突然に!(室内なんだけど。)

 そして、目が開けられない程の輝き!

「出た!」

 ババァ・ドーンと・ズロースの染みが、突然に、やっぱりマンガチックに現れた。

「お父さん、間違ってるわ。」


「スルガトキヒコ。」

 ありゃ、憶えてくれていましたか。

「こんにちは、ハバァ、、、」さくらっ!

「ハヴァバンドゥーンズローシミィさん、こんにちは、初めまして。」

 あーさくら、ナイスフォロー、、、何だけど、神様に『さん付け』ってどうなんだろう?


「えぇ~っと、お邪魔してます」勝手に入ってます。

「ちょっと『記憶の石』を見てました」

 ん、ザーララさん?


「トキヒコ、この者は『エークゥ・トファノキ・ヴィラーサット』。」

 えっ、誰?ヴィラーサットって、クーリャの名前の一部?

「ああ、呼び名とすれば『風持ち其は嵐移り行く者』と成るか。」

「移り行く者ぉ〜?で嵐!」


「エルフの里国の者か。だがその持つ力が測れぬな。」

「何やら奇異を持ち伺いし事と成ったか、これも何やら“縁“と申そうか。」

「確かに“縁“となろう。」(スルガトキヒコを介する縁となろう。)

 ザーララさん、お知り合いでした?


「エークゥ・トファノキ・ヴィラーサット、名を移したな。」

 名前を移す〜?

「其によりこの地を定めるに至ったか。」


「尚も多くの同房足る者達を産み出し、名が持つ力を使いし、この地を創るに至った。」


風童かぜわらしに名を持たそう事は、定める地を拡げるが為。だが、限定しているな、この囲いもひとつの結界相当となろうか。」

 囲み〜そんなの在りました?見えません。


「トキヒコも近き事を行っておろうぞ。」

 えっオレが?何だっけ?

「トキヒコの住処と成ろう『トキヒコハウス』。名を持たし、その地に対し自身を定めた。」

 あっ、そうなるの?


「解るか、」

「ああ、解る。」

 解るってザーララさん、何が?


「さくら、お二人は何の話しをしだしたの?」

「トファノキブーミ、この土地の成り立ちについて。」

 ジオラマビルダーのババァンが造ったこの土地について?

「お父さんに分かり易く、う〜ん、、、この地を構成せし、その要素について。」

 ババァンシミーが作ったという、この広大なジオラマの材料とか素材の事か?

 ザーララさんは『囲い』とか言っていたから、ジャンル的にはシャドーボックス・ジオラマだったりして。


「先に見たが、記憶の石。いや別成る物とするか。」

 ザーララさんは、エレメンツがズロロンエラエラとか仰ってましたけど?

「嵐の国とする、この地を構成せしヅロドローエネラギアだな。」

「如何にも。」


「だがな、光が弱く“力“の衰退が診られる。何故か。」

 えぇー、あれだけギラギラと、何かが中で燃えて渦巻いてるみたいなのに?



「流石に、此れ程に魔力を有する者は察するか。其の者の持つ魔力の前では繕えぬな。」


「ヅロドローエネラギアの欠落が進む。其は刻を持つ我らの世において避けれぬ事。コニエックは何時しか来る。」

 コニエック?何だソレ?何が来る?

「お父さん、『コニエック』は終わる事、、、」

 終わる?嵐の国が無くなるって言ってるの?


 コニエック、、、終わり。嵐の国が無くなっちゃう、何で?

 『記憶の石』が持つ力が弱まって来たから、、、たしかババァンズルシィミは『記憶の石』がこの場所『トファノキブーミ』を定めるモノだと言っていた、、、気がする。

 でも、オレの知るモノが無くなってしまう事は、何か嫌だ。


「そ、そうだ、記憶の石を作り足せば、ババァンズドン、新しい記憶の石を作ったらどうなんですか?」

 そう、以前11個目の記憶の石は有った(クーリャを追いかけた2人のねーさん風の民と一緒消えちゃったけど)。

 だから新しい記憶の石を作れば、新しく“力”を足す事が出来るんじゃないのか?


「スルガトキヒコよ、、、其は適わぬ。」

「何でー?!」だって11個目が有ったじゃんか!


「私は既に、試し申した。」

 11個目は作った?なのに何で?


「トキヒコ、“器”だ。」

 器だって?

「エレメンツであるヅロドローエネラギア成れを容易く創りし事など適わぬ。ましてや個か持とうであろう“器”にも限りが有る。」


「彼の者、エークゥ・トファノキ・ヴィラーサットが命を削りし新たなエレメンツであるヅロドローエネラギアを生み出したとせよ、今在るジェツシェチ(10)成るヅロドローエネラギアは、動かせまい。」

「ババァン、、、そうなの?」


「じゃあ、じゃあさ、さくらかザーララさんが記憶の石を作って、渡したら、、、」

 記憶の石を作る力をババァンが使わなければ、


「トキヒコ、わたしであれさくらがヅロドローエネラギア『記憶の石』を創る事は容易かろう。」

「じゃあ、」

「だが、ヅロドローエネラギアは力であり源。わたし達にて創られし『記憶の石』は、内服されようその持つ性質が異なろう。其は、エークゥ・トファノキ・ヴィラーサットとは異とする“源”である。互いが同調される事は無き。」

 “魔力”は、持つ者によって性質も色も違う。全く同調する様な魔力は殆ど無いと、、、聞いた事がある。


「トキヒコ、わたし達で創られる『記憶の石』は、エークゥ・トファノキ・ヴィラーサットからすれば所詮『物』でしか無き。」

 記憶の石の光の衰退、そして来るだろうコンニャク。

 それは、嵐の国が無くなるかも知れない、、、オレは知ってしまった。知ったなら、何か出来ないのか?!

 これは、ババァン自身しか、解決出来ないのか?

「お父さん、間違ってる。」



「いずれこの地はコニエックをひとつ迎えし、だが、其を継承する存在が在れば良い。」

 継承?誰が?

「コニエック、、、終期、それは終わりの刻。だが、其を迎えし前に、改な流れを興し新たな世界へ向うならば、継承されよう。」

 終わっちゃう前に継承って、、、ババァのシミの後継者が居るって事なの?どんな人?


「我らの営みに、無限や永遠など無い。だが、あがらおう。それが故に我らは続けるが為に、語り継ぎ伝え行く。」

「其は我らも変わらずだがな。」

 無限や永遠って、、、無い。


「だが其の者、スルガさくら。彼の者は無限へと繋がる可能性を持つ。」

 いやいやババァンシミミ、何か話しの方向が分からないままに、突拍子も無く家の娘を持ち出さないでよ。

「人間の持つ可能性、其を高めれば、それは何時の刻か実現へと移る。スルガさくらは其を持とう。」


「何故私が?」

 さくらは少し困惑した。

「其は創造。」

 創造が何で無限?

 トキヒコは端から分からない。


「人間が持とう創造は、無限の可能性を秘める。」

「思考、意志、希望、、人間の持つ想像力は無限とも言えぬか?」

 う〜ん、私の空想や想像(妄想)は、無限だったりして?

「可能性は何者が持てるモノでは無い。だが人間は其を持とう。」

 何で?

「人間の存在、スルガトキヒコより伝わり得た物。」

 オレ?何で?オレの事も訳の分からない話しの中に組み込まないでぇ〜。

「エルフの里国の者も持たず、私も場を移そう共、可能性を得るには至らず。」

 可能性って、皆んな普通に考えて、持っているモノじゃないのぉ〜そんなに凄い事か?


「仮に人間が可能性を持っていたとしても、それが必ず実現したり、希望に届くとは限りませんけど」

 可能性なんて、希望的観測の単なる言い換え。世の中そんなに甘くは無い。

「スルガトキヒコ、可能性を持つ意識とは稀なる事。この世の全ての者が持てる意識とは成らず。」

 はぁ。


「ではザーララさんは、ご自身の中で『可能性』を考えたり、想像したり連想したり、持たないのですか?」

「無き。」

 そんな即答!

「トキヒコ、わたしたちが持つ想像は乏しい。故に“可能性“を持つには至らぬのだ。」

 ん〜、良く分からん。


「我らの意識は眼前の事、今の現実に向かいし事に多くを割かれよう事。」

『可能性』って、普通に考え持つモノじゃないのかなぁ。

「トキヒコは良く申す、『普通』だ『あたりまえ』だと。」

「ええ、まぁ、」

「こうも申すではないか、『場が変わろう、個が変わろう、成らば『普通』も変わろう』と。」

 あー、オレ言ってそう。

「可能性は我らの意識の先と成ろう。尚も其の先には、正と負との互いを含む事柄である。」

 もしかして、可能性の先には成功も失敗も含まれるから、先の予測が着かない事を当てはめる思考になるから、エルフは持たない?

「比較すべし意識が無ければその先に或ろう可能性には届かず。」

 エルフは比較した結果から、善・悪や可・否を外に向けて優越を付けない。


「トキヒコ、『普通』もだ。我らが魔力を持とう事は普通の事。違うか?」

 まあそうですが、私が“魔力“を()()()()()は、普通の事。だけどそこに、私が『魔力を持つ可能性』を秘めない。ちぇっ。

「故に我らの持つ“普通“と、トキヒコ思考せし“普通“は異なろう。」

 何か屁理屈みたいですけど。

「異とするが、それで良くてはないか?トキヒコ、可能性を持ち、其に向かおう事は『当たり前』で無ければ『普通』でも無き。」

 う〜ん、まあそうかなぁ。そもそも私の『普通』が当てはまらない世界に居るんですけど、自分の持つ常識が通用しない所に居る事は、忘れがちだけど。

 だけど、こちらの世界で私だけ“普通“に魔力を持てない事には、納得行かないけど。




「可能性、、、其れ等の意識が創造へと向えば、其は無限の可能性を秘めたるモノ。可能性を高めれば、先へと進もう。」



「無限が実現するかも?だけど無限って、或るのか?ババ、、、なにを以って無限と表されるんです?」

「無限、其は何者にも解らぬやも知れぬ。だが、その解に辿り着こう可能性を持つ者も成ろう。」

 それがさくらだとして、

「さくらが無限だとかを知るのか、得たとしたら、どうなるんです?」


「創造。新たなこの世を創造する機に繋がろうか。」(当人が望めば、で在るが。)

 さくらもジオラマ・ビルダーになる日が来るかも知れない、、、可能性。

「さくら、プラモの事はオレに聞け。だけどジオラマのレイアウトは、自分で決めるんだ」

 アドバイスはするよ。だけどコレばっかりはセンスだからなぁ。

 はっ、これは継承。

 オレが死ぬ前に、改たな者(さくら)が新たに興す(プラモを作る)。ババァンが言っていた事と変わらず。

「お父さん、、、」




「やはり刻は迫ろう、コニエックは避けられぬ。」

 ババァン、、、嵐の国が終わりを迎えると、どうなる?

「迫り来るその刻。だが、残されし刻も有る。」


「スルガトキヒコ、私は今より鐘を鳴らそう。」

「はぁ、」

 ババァン・シーミ、何言ってんの?

 『鐘』ってあれか、さっき見た大っきな玉みたいなのが、ぶら下がっていたやつ。

 だけどクーリャが鳴らない鐘だと言ってたじゃん。聞いてなかったの?

 そんで、鳴らないって聞いていた鐘、それが鳴ると、、、どーなんの?


 ババアドスーンシミミにそう言われ、振り返れば、何だか分からない玉の様な物が、、、

 風も無く、誰も触れる事無く、大きく右へ左へ、前へ後ろへと揺れ出した。

 すると、音が聞こえた。

「ん?これが鐘の音?何か聞いた事がない、、、」

 鳴らないと聞かされた、鐘が鳴った音なのか?




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